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28. 幸せを呼ぶコウモリ様?!
しおりを挟むタ、タイミングが悪すぎないかな。
思い出したけど…。
今夜はヴァン様がやって来る日だったよ~!
いや、ヴァン様が来るのは夜だし…それまでは母さん達も諦めて寝てくれるよね?
…と思っていたけど。
「貴方!今日は一晩中小屋を見張るわよ!!」
母さん、何でそんなに張り切ってるの~!
「そうだな…。」
父さんは母さんの暴走を止めようよ!
ど、どうしよう…。大変なことになりそうな予感しかない。
とりあえずはここから両親を離すしかない。
僕は大きく深呼吸をして、メンタルを整えた。
「ただいま~。あれー?何してるの?」
棒読みで、ぎこちないけど…仕方ないよね。
「あら、お帰りなさい。気がつかなくてごめんなさいね。ちょっと忙しくて…」
「お帰り…」
父さん、ホッとしてない?
僕が母さんの暴走を止めることができるとか思ってない?
無理だからね!
「驚かないで聞いてね。何と、コウモリが我が家にやって来るのよ!」
これって…驚いた方が良いんだよね。
「…え!そ、そうなの…。うわぁーすごい」
我ながら大根役者すぎだ。
「驚くわよね~。だってあの幸せを呼び込むコウモリ様かもしれないのよ~」
ん?
母さんが僕の下手くそな演技に何も言わないのも驚きだけど、母さんの言ったことの方が気になるよ。
「幸せを呼ぶコウモリ様?」
「あっ、フルドは知らなかったか?一族の話の中に、額に花模様のアザがあるコウモリは我が一族に幸運を呼び込む吉兆のコウモリ様と言われているんだ」
父さん、そんな話し一度もしてくれたことなかったよね。
それで母さんがこんなに興奮していたのか…なるほどね。
「それでその幸せを呼ぶコウモリ様をどうするつもりなの?」
まさかペットにするつもりじゃないよね?
ヴァン様にペットなんて言ったら怒って大変なことになりそうだよ。
「どうって…。コウモリ様に家にいてもらうのよ」
それって…ペットだよね?
「ペットってこと?」
「違うわよ。ここにも住めるようにしておくだけよ。コウモリ様の好きな様に過ごしてもらいたいから」
ヴァン様の放し飼い…?
「一族では丁重に扱うようにと言い伝えられているんだ。だからペットにはできないよ」
父さんが僕の頭をポンポンと撫でながら話してくれた。…けど、捉え方の問題だよ。
ヴァン様がそれでどう思うか…。
「とりあえず夕食を食べましょうか。これからが体力勝負よ!」
気合いの入った母さんを先頭に父さんと僕が続いて家の中に入った。
夕食なんて食べている場合じゃないよ。
ヴァン様…今日は早めに来ないかな。
今なら大丈夫なんだけど…。
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