運命なんて信じません

縁 遊

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34. 穴があったら入りたい

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「…で、恥ずかしくなって慌てて帰宅したのね。…って葵…何してるの?」

 織糸の言う通りです。穴があったら入りたいっていう言葉はこんな時に使うのね。


 デートから帰ってきてから速攻、織糸にメールしました。電話だとダーリンとの時間を邪魔すると言って怒られるので…。

 でも珍しくすぐに織糸から返信が来て、今日の相談会が決定しました。

 今は織糸が予約してくれたホテルの一室で流行りのアフタヌーンティーをしながらの相談会中なんです。

「でも…良い傾向かもね。」

 良い傾向?

「不思議そうな顔をして…。分かってないようね…。やっと普通の恋愛ができそうだなと思ったのよ。」

 あ、これは前にもあがった議題ですね。

 普通の恋愛って何?って悩んだやつだ。

「葵はダメンズばっかり好きになっていたから、相手から大切にされる嬉しさとかドキドキを感じてこなかったでしょ、だけど占一さんはちゃんと葵を大事にしてくれてドキドキをくれてるんだよね。」

 はい。もらいすぎぐらいドキドキくれてます。私は頷きながら織糸の話を聞いています。織糸の話しはいつも勉強になるんです!

 あ、メモいるかな?

「でも、今までもドキドキはあったよ。」

 元カレの時もドキドキしたと思うんだけど…。

「それって…プレゼントを喜んでくれるかな?とか、自分で作ったご飯を美味しいって言ってくれるかな?とかのドキドキじゃなくて?」

「…あ~、それだね。」

「葵の貢ぎ癖…恐るべしだわ。本当に占一さんが好きになってくれて良かった。私は葵の友人代表としてお礼を言いたいくらいよ。」

 貢ぎ癖って…。普通は好きな人にあれが欲しいとか言われたら買ってあげたいと思わないのかな?誕生日とかじゃなくても喜んでくれる顔を見ると私も嬉しくなれるのにな。

「葵…また普通じゃないの?って考えてるでしょ。」

「織糸…すごいね。私の考えていることがよく分かるよね。」

 あれ?そういえば占一さんにも私は分かりやすいって言われたんだった。え?!そんなになのかな。

「前から思っていたけど、葵の普通は世間一般からだいぶんズレていると思った方が良いよ。」

 織糸が身体を前屈みにして私に近寄り凝視しています。

「え?!そんなに…?」

「そんなにだよ!」

 ショックです。いや、今までも何度か言われたかもしれないけど…今日は響くな~。

「占一さんにたくさんハグしてもらってキスしてもらって、身体も心も愛される喜びを教えてもらっておいで。そのうちに鼻血も出なくなるんじゃない?」

 織糸は言い終わると、美味しいって言いながら紅茶を飲んでいます。

 せっかく目の前には美味しそうなアフタヌーンティーセットがあるのに食べる気がしなくなってきました。

 他人事だと思ってない?鼻血だよ?こんな大人が鼻血って…。

 でも免疫をつけるしか方法はないのかな…。

 占一さんとハグ…キス…。

「葵…また出てるよ。重症だね…これは…。」

「え!嘘!」

 また鼻血出しました。想像だけで鼻血…。

 私は欲求不満なのでしょうか。

 あ~、穴があったら入りたい。
 
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