運命なんて信じません

縁 遊

文字の大きさ
上 下
31 / 42

31. デートまだ継続中です

しおりを挟む


「美味しかった~。でも、本当に良いんですか?奢ってもらってしまっ…。いえ、奢ってくれてありがとう。」

 占一さんが小さい声で「敬語…」と呟いたので慌てて言い直した…けどアウトかな?

 でも本当に美味しかった。

 お刺身、天婦羅、あっさり味の煮物…思い出しただけでもよだれがでそうです。

 しかもお店をでる頃には支払い済み…占一さんって絶対に女性に慣れていますよね?

 疑いだすとキリがないか…。

「はい。」

 言葉と共に出されたのは占一さんの左手。私が首をかしげていると、右手を繋がれました。

 あ~、手を繋ごうってことだったんだ。…って、ほら絶対に慣れてる!

「他に行きたい所はある?」

「可愛い傘が見つかったので満足です。他には別に…ない…かな…。」

 また、敬語チェックは続いています。話しづらい…。

「じゃあ、僕が行きたい所があるんだけど、そこに行っても良いかな?」

「は…うん。」

 「はい」って言っちゃうとこだよ。危ない。

 あれ?でも、お店の中だけ敬語禁止って話だったのにな。

 まあ、良いか。

 それにしても占一さんの行きたい所ってどこなんだろう?

 しばらく歩いて着いた所は…。

「水族館だったんですね。」

「嫌い?」

「いえ、動物は好きです。」

 中学生の時に遠足で行ってから来ていませんけどね。

「僕はペンギンが大好きなんだ。」

「ペンギン、可愛いですよね。」

 ヨチヨチと歩く姿とかはショーとかになっている所もありましたよね?

「うん、見た目も可愛いんだけどね…。ペンギンってツガイになると相手と死別になるくらいじゃないと別れないんだよ。子育ても協力して交代でするしね。僕の理想なんだよね。」

 私も何かで見たことあります。あれは…雄同士でカップルになったペンギンが育児放棄された子供を2匹で育てている…みたいなのを見て、ペンギン世界でもBLがあるんだと思ったので覚えています。その時のナレーションで確かに生きているのに別れるのは滅多にないと言っていたような気がします。

 でもそれって…すごい相手を見極める能力をペンギンが持っているってことなんでしょうか?

 だって、ツガイになってから相手が嫌いになることがないってことですよね?

 それってすごい能力だと思いませんか。

「ねえ…また変なことを考えてない?」

「へ?」

 また顔が百面相になっていたみたい。占一さんの顔が間近までせまっている。…近くで見ても毛穴見えない。私より綺麗な肌ですね。

 手が伸びてきたと思ったら鼻をつままれました。

「デート中に何を考え事をしていたのかな?」

 え~と、これはお仕置きですか?

 すぐに手を離してくれたので鼻を触る。赤くなってないよね。

「何って…ペンギンのことですよ。」

「何で少し間があったのかな?」

 それは…ペンギン世界のBLについての話だったからなんですけど…。

「ペンギンってツガイを見分ける凄い能力を持っているんだな~って思っていただけです。」

 これは本当だからね。

「凄い能力?」

「はい。だってツガイになったら別れることはほとんど無いんですよね?じゃあ、自分にとって合う相手はこのペンギンだって見分けられるんだろうな~と思ったんですけど…違うのかな?」

「そうか…そういう考え方もあるよね。でも、もしかしたら単にお互いが我慢しているだけかもしれないよ。」

 あれ?意外に夢のない答えを出してきましたね。ペンギンのツガイの純愛に憧れているんだと思っていたんですけど…違う?

「…まあ、本当のことはペンギン達にしかわからないけどね。」

 そう言われてしまえば終わりです。私は笑顔でなにも言わずに頷きました。

「さあ、じゃあその話題のペンギンを見に行こう!」

「…うん。」

 2人で手を繋ぎ水族館の中を見て回る。

 フワフワしたような変な気持ちです。海月を見て2人でボーとしてみたり、イルカのショーを見て子供みたいに騒いだり…楽しい時間はあっという間に過ぎていました。

「楽しかったね。」

 私達は、水族館を出た所のベンチでひと休み中です。

「うん。あっ、そうだ…これ。」

 実は水族館を出る前におトイレに行くと言ってお土産やさんで買い物をしてきたんです。

「傘のお返し…にはならないかもしれないけどペンギンのキーホルダーです。もらってください。」

 何にしようか迷ったけど、ぬいぐるみよりはキーホルダーの方が男性には良いかなと思って選びました。喜んでくれるかな?

 占一さんの表情は驚きから笑顔に変わっています。

「ありがとう。お礼なんてしなくても良いのに…。」

「私の気持ちがスッキリしないので。」

 私も笑顔でお返しです。

「本当に…まじめと言うか律儀と言うか…。」

 あれ?もしかして呆れられてますか。私は失敗したのでしょうか…。

 そう言えば織糸にも注意されたな。葵は貢ぎ癖があるから駄目なんだ!って。

 え…これは違うよね。セーフだよね?

 アレコレと考えていたら不意に身体が暖かさに包まれました。

 何…?

 暖かの正体は、占一さんの体温でした。占一さんが私を抱きしめてくれています。

「葵ちゃん…。」

 あれ…これはもしかして…良い雰囲気というやつですか?











 


しおりを挟む

処理中です...