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29. 恋愛のお医者様知りませんか?
しおりを挟む「うわぁ~、綺麗~。」
お目当ての傘屋の店内には色とりどりで柄も大きさも違う傘がたくさん飾られていた。
「傘ってこんなに種類があるんだね。」
占一さんも珍しいのか店内をキョロキョロと見回している。
「そうですよね。」
子供用の小さい傘から、大人用でも女性用の小さめの傘や男性用の凄く大きな傘まであります。
柄も動物の柄、花柄、チェック、ストライプ…ありすぎて迷うな…。
「折りたたみの傘だったよね?」
「はい。鞄にしまえる小さめで軽量な物にしようかなと思っているんです。」
前のはわりと大きくて重たかったんだよね。
「折りたたみは…向こうにあるみたいだよ。」
店内の天井にわかりやすいように案内板が取り付けられているので、占一さんが見つけてくれました。
「ありがとうございます。」
案内板には女性用の折りたたみ傘と書いてあります。
軽量…あっ、コーナーがある。
「うわぁ、種類が結構ある…。」
「気になるのがあれば広げて見ても良いみたいだよ。」
占一さんが店内のポップを指差して教えてくれました。
無地も良いけど柄物も可愛いな~。
「あ!これ、白玉先輩に似てません?!」
手にとったのはストライプ柄に白猫の柄が描いてある傘です。
「本当だね。広げてみたら?」
「はい。」
カバーから取り出し広げてみたら。
「可愛い~!どうですか?」
私は傘をさしてくるくると回って見せた。
「…うん、可愛いね。」
占一さんが少し甘い顔をしてるような気がするのは気のせいかな?
「これにします。」
「え?決めるの早いね。他は見なくても良いの?」
「はい。これが良いです。」
私って昔から物に関しては迷いが無いんだよね。人に対しての判断力は迷いがおおすぎるんだけどね。
「女性の買い物って時間がかかると思っていたけど…葵ちゃんはやすぎかも。」
…ん?何か胸の辺りがモヤモヤします。
「そうですか?だって白玉先輩の柄ですよ。可愛いじゃないですか。」
「ねぇ、葵ちゃん…思ってたんだけど敬語やめない?普通に話そうよ。」
顔が…私の耳元に顔を近づけて話しているので温度というか…占一さんが話す度に吐息が耳にかかるのがわかります。
背中がゾワゾワしてる…。
「傘、貰うね。」
耳に意識がいっているうちに手に持っていた傘を占一さんに取られました。
「あ…。」
「これ今日のデートの記念に僕に買わせて。」
傘を手にした占一さんはスタスタとレジに行ってしまいました。
残された私は…興奮しています。
ちょ…ちょっとかっこ良すぎません~?!
確かに忘れてましたけど、占一さんは私より年下です。けど…会社の社長だから敬語を使っていたわけで…。でも今日はデートだから普通に話す?…いや!無理だわ~!それに何?!あのスマートはプレゼントの仕方。
キュン死しそうじゃないですか~!!!
これは夢?夢なの?!
自分の頬をつねってみましたが…。
「痛い…。」
現実じゃん…。嘘…。
あの人が私の彼氏…。
もう一度、現実を確認しようと占一さんが行ったレジに目をやると店員のお姉さんに熱い視線を送られていた。
どこにいてもイケメンは注目されるよね。
「プレゼントでお願いします。」
「わかりました。しばらくお待ちください。」
熱い視線を送っていた他の店員さんがこそこそと話してあるのが聞こえてきます。
「やっぱり彼女にプレゼントなんじゃない?」
「え?でもリボンの色は水色を選んでいたから猫好きの友達かもよ。」
たぶんですが、私の今日着ているワンピースの色と同じ色だから水色を選んだと思います…とは教えてあげられない。
考え事をしていたら占一さんが戻ってきました。
「これは帰りまで僕が持ってるね。」
「え…そんな。軽量だし自分で持ち…。」
いきなり占一さんの指で私の唇に触れられた。
「敬語は無しだよ。それに遠慮もね。」
…フリーズしました。
いや、これ…身体に悪くないですか?
心拍数が異常に上がってますし、心臓がキュンとしすぎて…倒れそうなんですけど。
待って…デートってこんな感じだった?
私…人生初デートでもないよね?
元カレとデートしたよね?
その時は?
…私の行きたいところに行って御飯食べて帰ってたわ。こんな甘い空気なんて感じた事が無かったかも。
あれ?もしかして…もしかしてだけどこれって私のマジ恋ってやつですか?
今までは恋愛に憧れていただけなの?
だから元カレに振られてもそんなに落ち込まずに怒りが込み上げていたの?
え…これが本当の恋?アラサーで?
それともイケメン免疫がないだけ?
あ~!!!わからない!!!
この胸のキュンキュンとする高鳴りは何~?!
誰か~、恋愛のお医者様を知りませんか??!!!
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