運命なんて信じません

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17. 占い信じ始めてる?!

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 この部屋に漂う空気に色がついて見えるような気がします。色はピンクですよ。

 理由は、鑑定に来た娘さんの表情が社長に惚れたことをしめしているからでしょう。

 とろんとした目にピンク色にそまる頬…。社長を見つめる熱い視線…。

 わかりやすすぎます…。

 いや~、本当に惚れやすい人なんですね。

 でも、一目惚れってリスク高くないですか?!

 だって外見が好みなだけでしょ?

 醸し出す雰囲気が良い人そうとか、仕事ができそうとかはこちら側の妄想でしたかありませんよね。この外見の人はこうあってほしい!みたいな…。

 恋愛だけなら見た目だけタイプの人と付き合っても良いとは思いますが…将来を考えるとなるとね~。

 だって世の中の離婚理由の性格の不一致というのが必ずベスト3くらいに入っていますよね。そこから考えるなら大事なのは性格でしょ?

 それに顔だけで言えば、イケメンも年齢を重ねれば普通の人…っていうのが多くないですか?

 そりゃあ~中には素敵に歳を重ねている方もいらっしゃいますけど…少ないですよね。

 あっ、幼馴染みの織糸をディスっている訳ではないですよ!

 織糸はお見合いでの一目惚れなんで少し違うかなと思うのです。

 お見合いは相手の家柄とか職業、収入など色々な情報がわかった上で会っていますからね。

 街ですれ違って一目惚れとか、カフェで見かけて一目惚れ…とかとは違いリスクが少ないと思っているんです。

 まあ、あくまでも個人の意見です。

 でも、私の中では一目惚れできる人は恋愛体質でパワーがある人だと認識しているんですよね。盲目的で一つのことにエネルギーを注げるみたいな?

 私にはないな~。

「あの…因みに占一先生と私の相性はどうなんでしょうか?」

 おっと!暫く黙って社長の話を聞いていた娘さんが積極的にアプローチをかけてきました~!

 凄い…仕事が速いですね。

「僕と…ですか?」

 社長は相変わらずのイケメンスマイルを崩しません。…ある意味考えが読めません。

「ええ、ただの興味です。占一先生みたいなタイプの方なら上手くいくのかしら?と思ったんです。」

 フェロモンが漂ってきてますよ。脚をゆっくりと組み替えながら口元を緩やかに上げて微笑んでいます。…ここに最初に入ってきた時とは別人に見えます。

「そうですね…。僕と結婚して名字が変わると総画数が34になり大凶になりますよ。波乱の人生になり、身内や自分自身も病気になったり会社が倒産したりと災難が続きますから僕はお勧めできません。」

 社長…イケメンスマイルを崩さずに恐ろしいワードをさらりと口にしましたね。

 娘さんが驚いて固まっているじゃないですか!

「ま、まあ!そんなことないんじゃありません?!名前はそうでも生年月日で見ていただけば良いかも知れませんわ!」

 お母様は納得できないみたいですね。

「う~ん、それが生年月日でみても結果はあまり変わらないんですよね…。それに僕の結婚相手はもう決まっていますので。」

 うわぁ~、淡々とした口調で親子の夢を切ってますね。

「「………。」」

 さすがに2人とも黙ってしまいました。

 さっきまで漂っていたピンクの空気はすっかり色を変えて寒色になりましたね。

 いや~、人の心を折るイケメンスマイルの恐ろしさを目の当たりにしましたよ。社長ってメンタルが鋼鉄かダイヤモンドなんですか?!

 でもそれだけ言い寄られて断ってきたということなのかな?

「…じゃあ、どんな人なら良いの?」

 復活した娘さんがボソッと呟くように聞いてきました。

「そうですね…、懐が大きな包容力のある男性ですね。舞華さんは精神的な繋がりを大事にしたい人なのでそこを理解してくれる人なら上手くいくと思います。今年の…秋に出逢いはあると思いますから安心してください。」

 へぇ~、出逢う時期なんか具体的にわかるんですね。

「それ本当?!」

 座っていた椅子から立ち上がり興奮した様子で娘さんが社長に聞いています。

「はい。だからお相手探しは焦らなくても大丈夫ですよ。」

「そうなんだ…。」

 娘さんは占いの結果を聞いて満足できたみたいですが、お母様の方はまだ納得ができていないみたいな雰囲気を醸し出しています。

「家の娘との相性はわかりましたが…そちらの…葉山さん?でしたかしら、その人とは相性がそんなによろしいの?」

 きましたよ、やっぱり納得できてないじゃん。

「プライベートな事なのですが…。北嶋様は昔から来ていただいている常連様なのでお話しさせてもらいますね。僕と彼女の相性はお互いを助け合う事ができる運勢なのです。2人の間に激しい感情は生まれませんが一緒にいることで穏やかな人生を過ごす事ができるんですよ。僕にとっては運命の人なんです。」

「「…運命の人。」」

 親子揃って私の方を凝視しています。

 言いたいことはわかります…。イケメン社長に私の様な平凡な女性が運命の人って言われても信じられませんよね。

 だけど…以前に聞いていなかった情報がありましたね。お互いを助け合う事ができて穏やかな人生を過ごす事ができる…え?最高じゃないですか。
 

 結局…親子は大人しく帰られましたが私の中にはモヤモヤが…。


 私…占いを信じ始めているところがあるんだよ~!?




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