運命なんて信じません

縁 遊

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13. 絶賛落ち込み中

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 只今絶賛落ち込み中です。

 まさか自分がダメンズ好きだったなんて…。

 友人の織糸の方が先に気がついていたなんて知りませんでした。

 落ち込みながら自宅に着きました…が、扉の前に誰か居ます。

 暗くてよく見えません。

 え?誰…。

 家を間違えているとか?

 携帯のライトをつけて照らしました。

「誰ですか?」

「…俺。」

 その声は聞き覚えがあるものでした。

 …元カレです。

 一体何の用事?!

「何か御用ですか?」

 私は笑顔を張り付けて敬語で対応してやります。

「…あの…メール。」

 メール?

「彼女が君に会いたいって…。」

 ああ!!思い出した!!!

 あの「彼女がお姉さんに会いたいと言っているから姉のふりをして会ってくれないか?」っていうふざけたメールですね。

 忘れてましたよ!

 そんなことをわざわざ言いにきたの?

「私には関係が無いことですのでご自分で正直に彼女にお話になれば良いんじゃないですか?姉じゃなくて元カノだったってね。」

 いや~、まさかこんなことを言いにくるとは思っていなかったわ~。

 本当に私って男を見る目が無かったのね。

「…困る。」

 はあ?貴方が困るだけで私は一切困りません!

「すいません、そこは邪魔なので帰って頂けますか?部屋に入りたいんですよね。」

 私が鍵を出してドアに手を伸ばすと元カレの手が私の手の甲に触れてきます。

「…中で落ち着いて話そう。」

「はあ?!」

 私は元カレの手を払いのけて睨みました。

 いけない、いけない。思わず声が出てしまった。

「部屋に入れるわけにはいきません。帰ってください。」

「前はいれてくれていたじゃないか。」

 それは彼氏だったからでしょ!考えなくてもわかるでしょうが!!

「今は彼氏じゃないし、浮気をするような信じられない男性を家の中に入れるつもりはありません。帰らないと警察を呼びますよ。」

「そんな…。じゃあ、近くのファミレスで話を聞いてくれないか?」

 隣の部屋の玄関の電気が着きました。

 うるさくて気になっている?

 これ以上ここで話し合うのは近所迷惑か…。仕方がない。

「わかりました。話を聞くだけですからね。」

 歩いて数分の所にファミレスがあり、昔からよく利用していましたが別れてからも一緒に行くことになるなんて考えてもいませんでした。

 元カレは無意識なのかいつもよく座っていた席に着きました。

 人から見れば以前と変わらないデートみたいに見えるのかな…。

「…で、話って何よ。明日も仕事だし、忙しいんだけど?」

「いや…彼女がどうしても君に会ってきちんと挨拶をしたいって聞かなくて…。困っているから助けてほしいんだ。葵はいつも俺が困っていたら助けてくれていただろう?なぁ、お願いだよ。」

 こいつ…。

 そう言えば殺し文句のようにいつも私に言っていましたね。

 「葵…助けて。」って言いながらいつも抱きついてきましたね。その度に私は彼女として頼られていると思って助けていました。

 今ならわかりますよ…。

 この男が間違いなくクズだってね。

 今までどうして気がつかなかった?

 いや~、恋のフィルター恐るべし!

 そんなフィルターはもう要らないわ!!

「私はもう彼女でもないし、ましてや何でも屋でもないです。だから貴方を助ける義務はどこにもありません。」

「そんな…。」

 元カレは方を落として項垂れています。

「挨拶をしたいってことは、いずれ家族にも会うってことでしょ?そうすればどのみちバレるじゃない。早いか遅いかの違いだけなんだから、早く言った方が良いんじゃない。」

 私もお人好しだとは思いますが長い年数付き合っていた人ですからね、アドバイスだけはしてあげますよ。

「…そうなんだけど。」

 何だか煮え切らないな。そう言えば…結婚の話をした時もこんな感じだったことを思い出しました。



「挙式をするなら洋式と和式のどっちが良い?」

「…どっちでも良い。葵が決めてくれたら良いよ。」

「え、良いの?じゃあ、両方とかでも良い?」

「…良いんじゃない。」

 あの時の私は"私の意見を優先させてくれなんて優しい!"と思っていましたが、今思えば決めるのを面倒くさかっただけなんだなと実感しました。

 こいつ…本当にクズじゃん。ダメンズじゃん。



「はぁ~。私は貴方とは全くの他人です。助けてほしいなら自分の家族にでも頼めば良いんじゃないですか。」

「え?あっ、そうか…その手があったか。」

「へ?」

 元カレは本当に家族にでも頼むつもりみたいだ?!

 私…何でこんな人を好きだったの~!!!



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