運命なんて信じません

縁 遊

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5. ドッキリですよね?

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 織糸(おりい)に紹介されて、面接に来たと思ったらどうやら変な所に来てしまったみたいです。

 今、私はさっき初めて会ったイケメンにプロポーズされるという人生で初めての体験をしています。

 いや、今日は会社の面接に来たはずなんだけど…。

「え…と、今日はお見合いではなくて、面接でしたよね?」

 ここは大人として対応をしなければと思い、騒ぐ心臓を押さえながら事実確認をしています。

「うん、そうですね。間違いないです。」

 イケメンの態度は変化なし。

「あの~、聞き違いでなければ結婚しないかと言われた気が…。」

「間違いじゃなくて、そう言いました。白玉も聞いていたよね~。」

「ナァ~。」

 いや~、白玉賢すぎ!ってそれどころじゃない!!


 私はイケメンにどう対応すれば正解なのか…。

「あっ…、固まった。コーヒーでも飲む?待ってて。」

 イケメンは固まっている私を置いて消えていった。

 ど、どういうこと!?

 イケメンがいない間に考えをまとめないといけない。

 エイプリルフールはもう過ぎたし、冗談じゃないよね?!

 でも初対面の人間にプロポーズなんてありえない!!

 もしかして昔に会った事が会ったことがあるとか…?

 いや、記憶にないわ!!!

 あんなイケメンなら覚えているはず!

 じゃあ、何!何なのよ!!

 はっ!!!

 これって…あれなの…?!

 テレビの素人を驚かすドッキリ番組?!

 あのイケメンが俳優さんと言われたら納得いくわ。というかそれが一番納得できる!!!

 私が嬉しがって「はい!喜んで!!」と返事をしようものなら、どこかからドッキリでした~ってテレビの人が出てくるんだわ!!!

 そんなの全国民に笑われる~!!!

 そんな罠にはまるか~!

 私は改めて周りにカメラがないかを探してみた。

「やっぱりプロはカメラを隠すのも上手なのかな。見つからない。」

「何が見つからないの?」

 いつの間にかイケメンがコーヒーを持って帰って来ていた。

「い、いえ…。」

 イケメンは私の前にコーヒーを置くとまた前のソファーに座って私を見つめている。

 男性にしかもイケメンにあまり免疫のない私としては見つめられるのに慣れていないから止めて欲しいのですが…。

「それでどうかな…結婚してくれる?」

 はい、来た~!!テレビ的な時間の問題で急かしているんですよね。でもここで頷く訳にはいかない。

 頷いたら最後!私は笑い者になる!!

「あの~、私達は今日初めてお会いしたんですよね?」

「うん。そうだね。」

「普通、初めて会う人間にプロポーズはしないと思うんですけど…なんで私なんですか?」

 テレビ的には視聴者の皆さんがイライラするだろうけど、私はこういうのが気になるんですよ。

 そもそもドッキリを仕掛けるなら私じゃなくて別の人で良かったでしょ。

「今日の僕の占いにね"今日は運命の人と出逢う"って出ていたんだ。そしたらさっき君の占いをしていて気がついたんだよ。君が僕の運命の人だ!って。」

 いや…そんなイケメンスマイルを私に向けられても困ります。

 占いで運命とでた?フッ…もう少し、ましな騙しかたはなかったんですか?!

「いや、限界ですね。騙すにしては嘘くさ過ぎませんか?そろそろドッキリの種明かしをしに来ていただいても良いかと…。」

 私は耐えきれず思っていた事を口にした。

「え…ドッキリ…ってなんの事?」

 まだ惚(とぼ)けるのか?視聴者は飽きてきますよ。

「いや、長く引っ張るものじゃないですよね。これ、ドッキリですよね?そうじゃなければこんな私に、運命の人って…あなたみたいなイケメンが言うなんてありえないです!」

 イケメンは流石にバレたのでどうしようと思ったのか黙ってしまった。

 黙られても困るんですが…。

「あっ…そうか。君はこれがドッキリだと思ったんだね。そうか…。」

 なんだ?まだイケメンは認めないつもりなのか?!

「そもそも私はあなたの名前もまだ知らないのにプロポーズなんて…ドッキリ以外に考えられません!」

 私はやや怒り気味に話した。

 早く出てこいテレビの仕掛人!

「あれ、まだ名前も言ってなかった?ごめん!僕は占一 凌(せんいち りょう)です。この占いの会社の社長です。葉山さんを騙すつもりは全然ありません。これドッキリとかではないです。」

 え?この人、会社の社長さんなんだ…。若い…よね。いや、そこが問題じゃない!

「まだ信じられないかな?本当にドッキリじゃなくて占いの結果なんだ。葉山さんも僕と結婚することで運気が良くなるし…。今…大変な時期だよね?僕なら葉山さんを助けてあげられるんだけど…どうかな?」

 本当にドッキリじゃない?


「いやいや、申し訳ありませんが私は初めて会った人とすぐに"結婚します"ってお答えすることはできません!」

ドッキリじゃないなら尚更怖い話だわ!

「え~、気持ちは変わらない?」

 イケメンが少し落ち込んでいる?気のせいだよね。

「私はここの会社に面接に来ただけです。」

 私はここに面接をしに来ただけで、お見合いでも占いをして欲しくて来たわけでもない。

「そっか…。そうだ!面接!!面接は合格です!!!明日から働いてもらいたいと思います。」

 いきなり面接の合格を言われました。が…どうなんだこの会社?

「凄い困っていたので助かります。いつも大勢が面接に来てくれるけど結局は僕に色仕掛けで迫ってきたりするんだよね…。お客さんとケンカしたり…。葉山さんなら僕の事が好みじゃないみたいみたいだし、その点は大丈夫そうだね。」

 人がいないのはイケメンの奪い合いの結果なの?女性のイケメンを巡る戦い…想像しただけで恐ろしい。

「お給料はこれくらいで、休みは週休二日です。他の事はここに書いてあるので読んでおいて下さい。」

 イケメンは書類を何処からか出してきて説明をしてくれた。

 お給料が前のとこより良い!!

 …仕方ない。社長は変だし、占いは好きにはなれないけど、お金はいるし無職は困る!

「よろしくお願いします。」

「はい、こちらこそ。…ゆっくり僕を知ってくださいね。未来のお嫁さん…。」

 イケメンはニコニコとしながら何かぶつぶつと言っていたが最後の方はよく聞こえなかった。

 だって書類のボーナスとか待遇が気になって集中して読んでましたから~!!


 でもこれで無職から脱出だ~!!!





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