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85. 未来を信じて
しおりを挟む「星蘭…なんて綺麗なんだ。」
曹操が今の私の姿を見て最初に言った言葉がこれだ。
「曹操様!お式が始まるまで花嫁の姿は見てはいけませんと言ったはずですが、お忘れですか?!」
茉央が大声をあげて怒っている。
「だって我慢ができないよ。それに式場で初めて見たら倒れるかもしれないからね。」
「またそんな事を言って…。もう!」
茉央は私の髪を整えながらまだ怒っている。
今日は私達の結婚式だ。
曹操も私も赤い婚礼衣装を身に纏っている。頭には重い金の飾りをつけていて動かしにくい。
いつもより念入りに施された化粧にはまだ慣れない。これを人に見られるのかと思うと恥ずかしい。男装していた時は素っぴんだったのにな。あれは楽で良かったわ。
「あら、花婿さんが来てしまっているのね。」
「お母様…。」
部屋に新たに来たのは元気になったお母様だ。
「ほら、花婿さんはこれからずっと一緒にいられるのだから向こうで大人しく待っていてくださいな。」
と言いながら曹操の背中を押して部屋から追い出した。さすが、お母様。
「星蘭…本当に綺麗よ。幸せになりなさいね。」
「お母様…。」
私達は抱きしめあった。
「ほら、泣いてはいけませんよ。」
茉央が私の涙を拭く。
「お母様、そして茉央…今までありがとうございました。お二人がいなかったら私はここまで生きる事はできませんでした。これからはお二人にも幸せになって欲しいと思っています。」
「「星蘭…。」」
お母様も茉央を泣いている。
「貴女には苦労をさせてしまったわね…。」
今度はお母様と茉央が手を取り合っている。
「いいえ…。私はお嬢様と家族になれて幸せでした。苦労なんて…。」
「いいえ、夫の分も貴女にはお礼を言わないとね。…夫にも見せてあげたかったわね星蘭の花嫁姿。」
「お兄様は天国で見てますよ。凄い過保護でしたので曹操様を睨んでいるかもしれませんけど。」
それを聞いた私とお母様、そして茉央も笑ってしまった。
三人で笑いあえる事がこんなに幸せに感じるなんて…。
「お母様、茉央…私は国民が安心して暮らせる国にしたいと思います。家族と笑いあえる幸せを国民にも知ってほしい。それが当たり前になるように…頑張ります。」
「「星蘭…。」」
私は今日の結婚と同時に皇帝の跡継ぎとして発表されることになっている。
きっと今までの経験を生かすこともできるだろう。
「お時間になりました。」
外から呼び出す声が聞こえてきた。
「お母様、茉央、これからの私を見ていて下さいね。曹操と共に幸せな国を作っていきます。」
そして部屋の扉は開かれた。
私は曹操の元に向かう。一歩一歩踏みしめながら…。
そして曹操と見つめあい手を取り合う。
これまでの苦労が頭をよぎっていく。それは全て今日という日をむかえる為だったのかもしれない。
ありがとうこれまで出会った人達。これからは皆さんの為に力を尽くします。
そして私と曹操は明るい光の方へと共に歩きだす。
明るい未来を信じて…。
これにて本編は終了です。
これまで読んで下さった皆様ありがとうございました。
お気に入り登録、栞をしてくださった皆様に感謝です。
本当にありがとうございました。
結婚後の二人を番外編として少し書いから全て完結としたいと思います。
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