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44. 嘘
しおりを挟む最近、前に井戸で絡まれて困った曨範様にやたらと話しかけられるようになりました。
正直言って…鬱陶しいです。
「曨範様…申し訳ありませんが道を塞がないでいただけますか」
今日は曹操様の部屋に行こうとしたら廊下で通せんぼをされています。子供みたいな事をして…まったく何を考えているのかしら。
「私は只この道に立っているだけだよ。避けて通れば良いだけだよ」
だからさっきから左右に動いて隙間を通ろうとしているのに移動した方に曨範様が来るから通れないんですよ!
「じゃあ、暇だから僕の質問に答えてくれる?」
なぜ貴方の質問に答えないといけないのでしょうか?
それに暇って何?
私は暇ではありません!
曨範様に言いたいけど…言ってしまうときっと罰が待っているし、ここから追い出されて両親の情報を得られなくなるかもしれない。
そう思うと何も言えません。
「…忙しいです」
「え?僕が暇だと言っているんだよ。分かるよね」
脅しじゃないですか!
「……」
「じゃあ、質問するね。出身地は?」
出身地か…これって両親と住んでいた町を言うのかそれとも茉央と長く住んでいた村を言うのが良いのか…。
もしかして私を調べるつもりならどちらもアウトだよね。
身元がハッキリさせられてしまうとここに居られなくなるかもしれないし、何て答えれば詮索されないのか考えろ私。
「…分かりません」
曨範様が鼻で笑った。
「何?誤魔化そうとしているのかい」
本当はそうなんですけど…。
「違います、私は昔の記憶がないのです」
曨範様の顔つきが険しいものに変わりました。
「記憶が無いだって?」
「はい。私は今は姉と呼んでいる女性に拾われた身なのです。ですのでどこで産まれたかとか誰の子供なのかも分かりません。質問にお答えできず申し訳ありません」
私は深々と頭を下げた。
曨範様は顎に手を置いて少し考えた後、私に近づいてきた。
「嘘じゃないだろうね」
脅すかの様に睨みを効かせて私に顔を近づける。
震えそうになるのを堪えて曨範様の目をじっと見た。
「嘘ではありません」
曨範様は私の瞳の動きを見ているみたいだ。
「…瞳の揺らぎがないから本当かもな。仕方ない…」
そんな事で嘘とかを判別できたんだ?!
良かった…バレなくて。
「じゃあ、お前は曹操と昔からの知り合いというわけでは無いのだな」
本当は知り合いですが…それも言えません。
「曹操様とはこちらに来てから初めてお会いしました」
「そんな風には見えないんだけどな。僕の勘は外れないと思うんだけど…」
曨範様の勘鋭いです!
本当は大当たりですよ。言えませんけど。
あ~、緊張して手汗がでてきました。
早く終わって下さい。
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