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38. 謎
しおりを挟むなぜ…こうなったの?
「ほら、星…ここまだ汚れてるよ。しっかり掃除をしないとね」
「…はい。申し訳ありません海(かい)様」
今どこにいるか…実は曹操の部屋にいます。
一回きりで終わりだと思っていたのに、どうやら違っていたみたいです。
曹操に…いえ、曹操様にもうお会いすることもないと思っていたのに…。
正体がばれない様に毎回緊張しながら掃除をしています。
曹操様のお世話をしている海様は物凄く細かい人で毎回小言を言われるし…疲れます。
「お前…今、心の中で僕の事を悪く言っただろう」
な、なぜ分かるの?!
「そんな!滅相もないです…」
「お前はすぐに顔に出るから分かりやすいんだ」
それはよく言われます。
「まあまあ…それくらいで勘弁してやってくれ」
曹操様が庇ってくれる。
「曹操様は星に甘すぎます!女に甘い顔をしてはいけません!あの方に誤解されますよ」
でた!二言目には必ず出てくる「あの方に誤解される!」海様の口癖なのです。
あの方とはおそらく皇女を指すと思われますが…。
まだお姿を見かけたこともありません。
一体どんな方なのか…。
「星…今日は海の機嫌が悪いんだ。掃除はもう良いからこれを持って帰っていいよ」
曹操様から手渡されたのはいつもの綺麗な飴玉。
「いつもありがとうございます…。では、今日は失礼します」
私は曹操様の顔を見つめることはしたことがない。
近づいた時は、いつも顔を見られない様に下を向いて話をする。
本当は曹操様の笑顔を間近で見たい。
でも…近くで見てしまうと我慢が出来なくなりそうで怖い。
私はもらった飴玉を服のポケットにしまい部屋から出ていこうとした。
「あ!こら!星!逃げるな!帰るな!」
後ろから海様の怒鳴り声が聞こえる…が聞こえないふりをして早足で部屋から出た。
ドン!
角を曲がった所で誰かにぶつかってしまった。
「申し訳…」
「お前は誰だ!?」
謝ろうとした言葉を遮られた。
チラッと顔を上げてぶつかった相手を見た。
艶やかな黒髪に大きな瞳をした綺麗な男の人だった。
「申し訳ありません。掃除に来ております、星と申します」
「は?女がここに掃除をしにきているのか?」
何だろうこの人…着ているお召し物は高そうな感じだけど…高い身分の人なのかな?
「どうした、星!」
騒ぎを聞きつけて曹操様と海様がやって来てくれました。
「これは、勇翔(ゆうしょう)様…何かありましたか」
海様が頭を下げて話をしている…と言うことは身分の高い人ということね。
「この女が掃除に来ているというのは本当なのか?」
「…はい。曹操様のお姉さまがよこして下さったのです」
「蘭宝様からか…。フン、気を付けろよ!」
勇翔と言われる人は怒りながら去って行った。
「大丈夫か?」
曹操様が優しく声をかけてくれる。
「はい。ご心配をおかけして申し訳ありません」
「いや…。ただ、ここは男が集まって住んでいる所なので気を付けるように…」
男が集まって住んでいる?ってどういうことですか…。
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