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19. 変なお客様
しおりを挟む昼御飯の恥ずかしい時間も終わり…また仕事の時間だ。
私は表に立たない約束で雇われているので裏方の仕事を行う。
今からは部屋の掃除をする。昨日使用された部屋のベッドメイキングと床掃除、拭き掃除だ。
昼からは青晶と部屋を分担してやっている。
良かった…今は一緒に居たくない気持ちが大きい。本当の兄妹なら別に普通の事かもしれないけど、違うから!分かっていてする青晶が今までとは別人に見えてしまう。まあ、女装しているんだけどね。
問題は夜だよ!
だって同じ部屋、同じベッドで寝るんだよ!
兄妹って事になっているから…。
春華さんが一緒の方が寂しくないだろうからって気を効かせてくれたみたいなんだけど…春華さん恨みます。
村にいる時は同じベッドに寝ることなんて何とも思わなかったけど、何でこんなにドキドキするんだろう?
青晶は友達なのに…。
最近の青晶は手を繋いで寝ようとする。
寝にくいから止めようと言ったら悲しそうな顔をするので結局いつも手を繋ぐことになる。
そして朝には青晶の腕の中で目が覚めて驚く…この繰り返し。青晶は寝ぼけててごねんね…って言うけど怪しいよね。
春華さんに言って部屋を分けてもらうか、寝相が悪いからとでも言ってベッドを2つにしてもらうかした方が熟睡できるかも。
まあ、青晶と一緒だと温かくて良いんだけど…。
「星蘭、部屋の掃除は終わりそうかい?」
春華さんが部屋にやって来た。
「はい。後はゴミを片付けたら終わりです。お客様ですか?」
「そうなんだよ、まだ早いからと言ったんだけど、ややこしいお客みたいでさ…はぁ~」
春華さんが大きな溜め息をついている。そんなに変なお客様なんだ。
「じゃあ、呼んで来るよ…。部屋から出ときなよ」
「はい!」
私は急いでゴミを片付けて部屋から出ると、ちょうど春華さんがお客様を連れてやってきた。
30歳代くらいの爽やかそうな男の人…身なりも良さそうな感じなんだけど…春華さんは何を嫌がっていたんだろうか。
あまり顔を見られない様に立ち去ろうとすると、いきなり男性に腕を掴まれた。
「待って!」
私は抱えていたシーツを床に落としてしまった。
「何か御用ですか?」
男の人は私の顔をじっと見ている。
茉央が居たら怒られただろうな。顔をあまり人前に曝すなと言われていたからね。誰が私達を探しているのかは知らないが茉央はいつも人の目を気にしていたから。村は例外だったみたいだけど。
「君のご両親は?」
何をいきなり聞いてくるんだ?
「…亡くなりましたけど」
「兄弟はいる?」
この場合は青晶と兄妹としておいた方が良いのかな…。
「妹がいますが…それが何か?」
「いや…私の知り合いに凄くよく似ていたから驚いてしまってね。急に腕を掴んで申し訳なかった、すまん」
男の人は私に謝った。
珍しい…身分が高そうな人なのに私に謝るなんて。
この人は一体何者なんだろうか?
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