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10. 敵の姿見
しおりを挟む「お母様はそんなに高貴な家の方だったの?」
茉央があまりにも真剣な顔で命にかかわるみたいにいうので気になってしまった。
「そうですね、皇帝のいらっしゃる都では有名なお家でした。お嬢様はその家の一人娘だったのでご家族の皆様はお嬢様を可愛がっていらっしゃいましたが…奥様が突然亡くなられてからお嬢様の環境がすっかり変わってしまったのです」
お母様には姉妹はいなかったのね。
それに、私からするとおばあ様も亡くなられていたなんて…。
でも、お祖父様は生きていらっしゃるのかな。
「お祖父様は生きていらっしゃるのよね?」
「ええ、お元気です。今は新しい奥様を迎えられてお子様もお生まれになりました」
あら?お母様には異母姉妹がいるということね。
「お嬢様は新しいお母様と上手くいかずにだんだんと孤立するようになりました。そして、新しい奥様に2人目の子供がお生まれになったことで更に状況は酷くなりました…」
「どうして子供が生まれると上手くいかなくなるの?」
別にどこの家でも新しいお母さんが来て子供を生んで…珍しいことではないと思うのだけど。どうしてお母様の家では状況が変わるの。
「お嬢様の家では男の子が家を継ぐ事が決められていましたが、女の子しか生まれなかった時は長女が継ぐことになっていたのです。新しい奥様が最初にお生みになったのは女児でしたが2番目は男児だったのです」
…ということはお母様は家を継がなくてよくなったということよね。
「お母様は自由になれて良かったじゃない」
茉央は顔を横にふりました。
「いいえ、男児が生まれた時はもう既に次の跡取りはお嬢様だと発表した後だったのでございます」
「それって、訂正できないの。男の子が生まれたから取り消すよと言えば終わりじゃないの?」
「そんなに簡単な話ではないのです。お嬢様の本当のお母様は身分の高い人でしたが、次に来られた奥様は身分も高い人ではありませんでしたし、何よりお嬢様が優れた人でしたので周りがそのままにしておこうと言ったのです」
「でも…お母様はお父様と結婚されてるわ…なぜ?」
お母様が当主になったのならお父様は婿養子に入らないといけないはずよね?
「それは、新しいお母様がご自分の子供を次の当主にしたいと思ってお嬢様を亡きものにしようとしたからですわ…」
「え…お母様は殺されかけたの!」
「一命は取り戻しましたが、あのまま家にいればまたいつ刺客がやってきて殺されるか分からない状態でしたので家を出たのでございます。そして出会ったのが私の兄…星蘭様のお父様です」
私は驚くしかなかった。いつも明るく朗らかなお母様にはそんな秘密があったなんて…。実家の話をしないはずよね、自分を殺そうとしている家族がいるなんて話せないわ。
「でも…待って…じゃあお父様が殺されたのは…」
「恐らくですがお嬢様の実家の…いえ新しいお母様の命令だと私は思っております…」
そんな…。
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