男装少女は復讐を誓う

縁 遊

文字の大きさ
5 / 86

5. 初めての口づけは薬草の味

しおりを挟む


「どうする…大人を呼んでくるか?」

秀峯はどうしたら良いか迷っているみたいだ。

「取りあえず…傷を確かめよう。このままにしておくと命の危険があるかもしれない」

私の父親の様に…。

「そ、そうか…そうだな…」

秀峯は男の子の血のついた服を脱がせた。

「お腹の所…刺されてるな。止血しないと…。秀峯、この傷を服の上から押さえててくれる」

「分かった」

私は父の事があってから、医学について独学だが学んでいる。今ではかなり薬草などにも詳しくなって村の人からも頼られることもあるくらいだ。

たしかこの辺りに止血に良い薬草があったはずなんだけど…。

川から少し離れた森の中に薬草があることは分かっていた。前から薬草を探しながら歩いていたのだ。

急いで薬草を採取して秀峯達の所へ戻った。

川の水で綺麗に洗い、綺麗に洗った石で薬草をすり潰した。

魚が釣れた時様に持ってきていたバケツに水を入れて、拾ってきた木の枝で火をおこして湯を沸かした。

自分の着ていた服を少し破き、湯に浸してから固くしぼった。それで傷口付近を綺麗にふいた。

「身体が熱い…熱があるのか」

「やっぱり誰か呼んでくる」

秀峯が立ち上がり村の方へ走っていった。

私は川の中の冷えた石を拾い、男の子の脇の下や首筋にあてた。

そうすれば熱が下がりやすいと聞いたことがあったからだ。

しかし、まだ苦しそうにしていて熱も下がらない。

誰かが来る前に死んでしまったら…。

そう思うと怖くなり、急いで解熱効果のある薬草を探した。

幸いにもすぐに見つかったので、すり潰し男の子に飲ませようとしたが…飲み込まずに口から出てきてしまう。

「嫌だ…僕を殺さないで…おかあさま…」

男の子が苦しそうにしながらも言葉をはいた。

この子はお母様に殺されそうになったの?

そんな事って…。

私は熱にうなされ苦しんでいる、この男の子を救いたかったから、男の子の手を握り「大丈夫よ。安心して」と優しく話しかけた。

顔に張り付いた髪の毛を優しく撫で、上から覆い被さる様に抱きしめて男の子の耳元で「苦しまないで、必ず助けるから安心してこのお薬を飲んで…」と話しかけたが、やはり口元に薬を入れようとしても飲んでくれない。

もう、あれしかないのね…。

昔にお医者様がしているのを1度だけ見たことがある方法…これはしたくなかったのだけど。

人の命には変えられないわね。

私は解熱効果のある薬草を口に含み、そのまま男の子の鼻をつまみ口を開けさせ…口づけをした。薬草を男の子の口にいれ鼻をつまんでいた手を離して口を閉じさせるために顎を下から上に押しあげる。

私の口の中にも薬草の苦い味が広がる。

初めての口づけは薬草の味か…。

男の子も薬を飲み込んでくれた様子だ。

「おーい、星蘭!大丈夫かー!」

ホッとしたところで村の大人を連れて秀峯が帰って来た。

助かれば良いのだけど…。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

思い出のチョコレートエッグ

ライヒェル
恋愛
失恋傷心旅行に出た花音は、思い出の地、オランダでの出会いをきっかけに、ワーキングホリデー制度を利用し、ドイツの首都、ベルリンに1年限定で住むことを決意する。 慣れない海外生活に戸惑い、異国ならではの苦労もするが、やがて、日々の生活がリズムに乗り始めたころ、とてつもなく魅力的な男性と出会う。 秘密の多い彼との恋愛、彼を取り巻く複雑な人間関係、初めて経験するセレブの世界。 主人公、花音の人生パズルが、紆余曲折を経て、ついに最後のピースがぴったりはまり完成するまでを追う、胸キュン&溺愛系ラブストーリーです。 * ドイツ在住の作者がお届けする、ヨーロッパを舞台にした、喜怒哀楽満載のラブストーリー。 * 外国での生活や、外国人との恋愛の様子をリアルに感じて、主人公の日々を間近に見ているような気分になれる内容となっています。 * 実在する場所と人物を一部モデルにした、リアリティ感の溢れる長編小説です。

イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

楠ノ木雫
恋愛
 蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……

処理中です...