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82. みんなとのお別れ
しおりを挟む私って本当に恵まれていたんだなと感じる。
記憶を無くして困っていた所を長老さんに助けてもらって、アデル様にお世話になって、ザジさんに癒してもらって…。
大変な目にあったけどそれも良かったなと思うようになった。
「サファイアできる本当に帰るの?何ならここで花嫁修業すれば良いんじゃない?ねっ、そうしようよ!」
アデル様…しつこいです。
「お父様に無事な姿を見せないといけませんから帰ります。1年後には帰ってきますし、手紙もかきますから…」
「坊っちゃま…あまりにしつこいと嫌われますよ。嫌われても良いのですか?」
侍女のイルラさんがヤレヤレという感じで言っている。
「イルラさんにもお世話になりました。執事のバルダさんもありがとうございました」
「俺は?!」
「リルさんに何かお世話になりました?」
今日はリルさんもお見送りに来てくれている。
「…世話してない」
しゅんとさせてしまった。
「冗談ですよ。リルさんもありがとうございました。お元気で」
リルさんの隣でイルラさんとバルダさんが号泣している。
「サファイアは屋敷のみんなに気に入られていたからね…気持ちはわかるけど、僕より泣かないでよ…」
アデル様が2人を慰めている。
この光景もしばらく見ることが出来ないと思うとさみしい…。
「みなさん本当にありがとうございました。でも、1年後には帰ってきます。それまでのお別れです。次に会えるのを楽しみにしていますね」
「サファイア…」
アデル様が私を抱きしめた…。
どうやら、涙がでてしまっていたみたいだ…。
「泣かないで…余計に帰したくなくなってしまうよ…」
「アデル様…」
「あまりくっつくかないで頂きたいです!」
黙っていたクルシュナ兄様が大きな声を出して私達に近寄ってきた。
「お兄様…」
「…シスコン」
アデル様がボソッと言った。
「アデル様…何かおっしゃいましたか?」
お兄様がアデル様の方を睨んでいる…。
「お義兄様何も言っていませんよ」
作り笑顔がまるわかりですよ…。
「まだ、嫁入り前ですので、抱きつくのは止めて頂けますか?」
「お言葉ですが…お義兄様…婚約しているなら良いと思いますが…」
2人の間に火花が見えるようです。
「まあまあ、お2人とも…落ち着いて下さい」
「「サファイアはどう思う…」」
こういう時は気が合うのですね…。
「私は…わかりません。それより、もう出発しないと夜までに到着しませんよ」
「そうか…そうだな…よし!帰ろう」
お兄様は急いで馬車に乗り込んだ。
「では…みなさん…さようなら。ありがとうございました」
みんなの方を向いて挨拶をして馬車に乗り込んだ。
お兄様の合図で馬車が出発する。
「サファイア!待っているからね!」
アデル様の声が聞こえる。
アデル様…私も次に合える日を楽しみにしています。
それまで…お別れです…。
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