上 下
76 / 88

76. ハイリのその後 〈ハイリ視点〉

しおりを挟む


気がついたら俺は牢屋の中にいた。

「おい、お前達!俺が誰だか知っているのか?王子様だぞ!こんな所に入れただで済むと思うなよ!ここから、出たらお前達全員を死刑にしてやるからな」

誰も俺の声に反応しない…。

ひそひそと話し声が聞こえる。

「あんなのが本当に王子なのか?自分で王子様…って、すげえな…。でも、噂だと品行方正な王子って聞いてだけど…やっぱり、噂はあてにならないな」

   「「「ハハハハハッ…」」」

どうやら、守衛達が俺の話をしているらしい…。

笑われるなんて屈辱だ。

どうして、こんな事になってしまったんだ。

途中までは良い感じだったじゃないか。

アイツを叩きのめしたら、サファイアを捕まえて聖獣達を従えて国々を制服するという俺の野望が…あと少しで叶うと思っていたのに…。

神様だって俺なら出来るって言っていたのに、何故だ!?

そう言えば…神様はどこにいったんだ?

こんな時に助けに来てくれないのか?

「神様!神様助けに来てくださいよ」

大声で叫んでみたが…。

 ………。

俺の声だけが虚しく響いている。

何だよ…何で来てくれないんだよ。

結局、俺の味方は誰もいないのか…。

昔からそうだった。

2番目に産まれたというだけで兄と周りの扱いが違うのが気にいらなかった。

俺を1番に可愛がってくれる人なんていなかった。

だから、俺は…俺が1番なんだと皆に教えたかった…。

だが、父ですら俺の事を味方してくれなかった。

お前は考えが足りない…。

兄を見習え…。

王族として失格だ!

何なんだ!皆…俺は自分らしく生きたい、それを認めてほしいだけだ。

昔は努力してみたこともあったが、上手くいかなかった…。

結局は兄には勝てなかった。

努力なんてするだけ無駄だ…と父に言ったら、だから、お前は駄目なんだ…と言われた。

父はこうも言った。
兄はひたすら努力をし、成果をあげてきたのだ…なぜ、お前は続ける事が出来ないのだ…。

そういわれても、出来ないのだから仕方ないだろ…。

兄弟だから、出来て当然と思う方がおかしいのだ。

それから、俺は身内には真面目な顔を見せて、他では自分らしく生きることにした。

楽しかった…。

自分が自分らしく生きれて、そして、神様が俺の事を理解してくれて…。

俺は…そんな、自分らしく生きることが出来る国が欲しかったんだ。

その為には多少の犠牲はつきものだし、仕方ないだろ。

森が燃えようと、国民が亡くなろうと…。

俺の理想が叶えば皆が俺の凄さが理解できる…。

だが…。

もう、終わりなんだな…。

  ハハハハハハハハハッーー!!!

何だか全てがおかしく思える。

俺はこんな風になるために生きてきたのか…。

俺は…俺は…おれは…。


「おい、出ろ時間だ…」

牢屋の戸が開けられる…。

俺はどうすれば良かったんだ…。




 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

竜が守護せし黄昏の園の木に咲く花は

譚音アルン
ファンタジー
小さな頃から荒野の夢を見ていた少女、風祭真奈。 ある時、その夢の中で不思議な白い花を見つけて触れると、異世界へとトリップしてしまう。 飛ばされた先は見渡す限りの不毛の大地。 途方に暮れていた所、飛竜に乗った赤髪蒼眼の青年魔術師ゼーウェンと出会って助けられる。 真奈は様々な困難と経験を通じて、生きる力とその意味を学んでいきながら地球へと戻る道を探し求めてゆく。 ※割と真面目な王道ファンタジー。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

お姫様抱っこされた冒険者(改訂版)

 (笑)
ファンタジー
異世界へ転生した海野真魚は歩けないからだになっていた。 異世界で知り合った仲間の草壁護やお雪とパーティーを組んで冒険者となる。

転生しても侍 〜この父に任せておけ、そう呟いたカシロウは〜

ハマハマ
ファンタジー
 ファンタジー×お侍×父と子の物語。   戦国時代を生きた侍、山尾甲士郎《ヤマオ・カシロウ》は生まれ変わった。  そして転生先において、不思議な力に目覚めた幼い我が子。 「この父に任せておけ」  そう呟いたカシロウは、父の責務を果たすべくその愛刀と、さらに自らにも目覚めた不思議な力とともに二度目の生を斬り開いてゆく。 ※表紙絵はみやこのじょう様に頂きました!

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

処理中です...