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76. ハイリのその後 〈ハイリ視点〉
しおりを挟む気がついたら俺は牢屋の中にいた。
「おい、お前達!俺が誰だか知っているのか?王子様だぞ!こんな所に入れただで済むと思うなよ!ここから、出たらお前達全員を死刑にしてやるからな」
誰も俺の声に反応しない…。
ひそひそと話し声が聞こえる。
「あんなのが本当に王子なのか?自分で王子様…って、すげえな…。でも、噂だと品行方正な王子って聞いてだけど…やっぱり、噂はあてにならないな」
「「「ハハハハハッ…」」」
どうやら、守衛達が俺の話をしているらしい…。
笑われるなんて屈辱だ。
どうして、こんな事になってしまったんだ。
途中までは良い感じだったじゃないか。
アイツを叩きのめしたら、サファイアを捕まえて聖獣達を従えて国々を制服するという俺の野望が…あと少しで叶うと思っていたのに…。
神様だって俺なら出来るって言っていたのに、何故だ!?
そう言えば…神様はどこにいったんだ?
こんな時に助けに来てくれないのか?
「神様!神様助けに来てくださいよ」
大声で叫んでみたが…。
………。
俺の声だけが虚しく響いている。
何だよ…何で来てくれないんだよ。
結局、俺の味方は誰もいないのか…。
昔からそうだった。
2番目に産まれたというだけで兄と周りの扱いが違うのが気にいらなかった。
俺を1番に可愛がってくれる人なんていなかった。
だから、俺は…俺が1番なんだと皆に教えたかった…。
だが、父ですら俺の事を味方してくれなかった。
お前は考えが足りない…。
兄を見習え…。
王族として失格だ!
何なんだ!皆…俺は自分らしく生きたい、それを認めてほしいだけだ。
昔は努力してみたこともあったが、上手くいかなかった…。
結局は兄には勝てなかった。
努力なんてするだけ無駄だ…と父に言ったら、だから、お前は駄目なんだ…と言われた。
父はこうも言った。
兄はひたすら努力をし、成果をあげてきたのだ…なぜ、お前は続ける事が出来ないのだ…。
そういわれても、出来ないのだから仕方ないだろ…。
兄弟だから、出来て当然と思う方がおかしいのだ。
それから、俺は身内には真面目な顔を見せて、他では自分らしく生きることにした。
楽しかった…。
自分が自分らしく生きれて、そして、神様が俺の事を理解してくれて…。
俺は…そんな、自分らしく生きることが出来る国が欲しかったんだ。
その為には多少の犠牲はつきものだし、仕方ないだろ。
森が燃えようと、国民が亡くなろうと…。
俺の理想が叶えば皆が俺の凄さが理解できる…。
だが…。
もう、終わりなんだな…。
ハハハハハハハハハッーー!!!
何だか全てがおかしく思える。
俺はこんな風になるために生きてきたのか…。
俺は…俺は…おれは…。
「おい、出ろ時間だ…」
牢屋の戸が開けられる…。
俺はどうすれば良かったんだ…。
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