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50. 僕の弟 ② 〈アデル視点〉
しおりを挟む許せないな…。
フツフツと怒りがわいてくる…。
アイツ…弟にまで手を出してきたのか…。
僕はハイリの顔を思い出しながら拳を握りしめていた。
「…お兄様聞いてますか?」
「あっ、すまないね…その男が何て言ってきたんだ?」
「それが、僕は全然その人を知らないんだけど、僕の事をすごい褒めてきて…気持ち悪かったんだけど…その後にお兄様の話しをされて…お兄様は僕達…弟の事が嫌いなんだよ。だって、王様になるには邪魔でしかないからねって…」
「アイツそんな事をいったのか!僕はそんな事は思ったことないよ。嘘だからね」
「それに…」
「まだ何か言っていたのかい?」
オルハが無言で頷いた。
「僕に…いっその事、君が王様になれば良い。そうすれば君の思うように何でもできるよ。嫌いな兄だって排除できるよ…って言ってきたんだ。僕はお兄様の事は好きなのに…」
アイツ…本当にクズだな。
絶対にハイリの兄に報告してあげるからね。
でも、やられたらやり返すの精神で、じわじわと周りから攻めてあげようかな…。
僕の身内に手を出した事をたっぷりと後悔させてあげないとね。
「その人の言うことは聞かない方が良いよ。クズだからその人…」
「え…知ってる人ですか?」
「知ってるよ。関わると良い事は一つもない様な相手だから、無視したら良いよ。何かされそうなら僕に言いにおいで」
ホッとした顔だね。
「それに、王様にはオルハがなれば良いと思っているから、邪魔なんて考えた事もないしね」
せっかくだから、王位について話しておいたほうが良いかな。
「そんな…僕はそんな器ではありません。お兄様がなるべきです」
おやおや…。そんな風に思っていたのか…。
「オルハは成績も優秀だし、魔法の腕も確かだし、何より人の気持ちがわかる優しい子だから、国民から好かれる良い王様になれると思うよ」
「いえ、お兄様に比べたら僕なんて…まだまだです。優しいのでなくて、優柔不断なだけなんです…」
どうしてそこまで、自信を無くしているのかな?
本当にすごい能力があるのに。
「僕は気まぐれだからね…王様には向かないと思うよ…」
「そんな…」
水掛け論になりそうだから、そろそろ止めようかな。
「ごめんね、変な話しをして。お茶が冷めてしまったね。新しいのをいれるね」
「はい…」
オルハは父親に似たのかな…。
あの母から産まれたとは思えないよ。
一番下の弟はヤンチャで困ると聞いたけど、2人は上手くやっているのかな?
「そういえば、オズは元気にしている?」
一番下の弟がオズだ。
「はい。元気すぎて、父が困っている様です。僕も注意したのですが…全然聞いてくれなくて…」
それは絶対に母親似だな。
「母は何て言ってる?」
「母は元気があって良いではないか…と言ってます」
やっぱりね。
「そうだ…さっきの男はオズには接触してなかったの?」
「はい。僕も気になったので、オズに一応聞いてみたのですが、そんな人は知らない…と言われました」
そうか…。
狙いはオルハだけなんだね…。
「オルハ、この魔道具を必ず身につけて過ごしてくれるかい?」
僕は、最近開発した、魔道具のネックレスを渡した。
「身の危険を感じたらそれを地面に叩きつけて割れば良いよ。守ってくれるから…」
「そんなすごい物を貰っても良いんですか?」
「可愛い弟を守るんだから良いんだよ」
「ありがとうございます」
やっと、笑顔になったな…。
しかし…ハイリは一体何を考えているんだ…。
…そうだ、良い事を思いついたよ。
「オルハ…ちょっと協力してほしい事があるんだけど…良いかな?…」
ハイリ…楽しみにしてて…。
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