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42. ご主人様の秘密 〈アデル視点〉
しおりを挟む「あら、珍しい人がいるのね」
母上が嫌みで言っているのがわかる。
僕はほとんど実家に帰らないからだ。
「今日はどうしたの?何かあった時しか帰って来ない、あなたが来たという事はきっと、余程の事があったのよね?」
酷い言われようだが、その通りなので何も言えない。
「今日はお願いがあって参りました」
「あら、珍しいわね。お願いなんて、何かしら?」
母上は意地が悪い所がある。いつもは、忙しくしていて、ほとんど家に居ない人が、待っていたという事は僕の身の周りでおきたことを知っているはずだ。
「ご存知だと思いますが、私の領地の一部が何者かによって荒らされまして、おまけに可愛がっていた犬を瀕死の状態にされ…そして…私の可愛い子を連れ去られました」
「それで?」
「犯人の目星はついていますが…一国の王子なのでお力添えを頂けないかと思いまして…」
母上が僕の顔をじっと見ている。
「貴方、私が知らない間に婚約者ができたそうじゃない?今日はその報告に来たのかと思っていたわ」
やっぱり、色々と知ってるじゃないか…。
しかも、屋敷の中に密告者がいるな…。
誰だ…?
「貴方が今、考えている事を当てましょうか?誰が私に報告したのかと思っているでしょう」
母上…どうしてわかるのですか…。
「でも、その考えは間違いね。だって貴方の屋敷の奉公人は全て私の味方だもの」
はあぁーー?!
いや、確かに母上の代から使えていた者もいるが、新しく雇った使用人もすべて…?
「だって、アデルちゃんてば、私を避けているでしょ、だから貴方の事を良く知るために正しい人員配置をしたのよ。母親の愛よ、愛」
違う気がするのだが…。
この人に何を言っても勝てないだろうし、反論は時間の無駄だな。
「わかりました。その問題はまた今度。今日はその婚約者がさらわれたのでお力を貸して頂きたいのです」
「あら?誘拐されたのは猫ちゃんだと聞いていたのだけど、違ったかしら?」
サファイアの本当の姿の話までは報告されていなかったのか…。
そうだな、説明しにくいか…。
「その猫が、私の婚約者です」
母上が不思議そうな顔をしている。
「アデルちゃんは女嫌いだと思っていたけど…動物愛が深すぎる変態さんだったなんて…。私の教育が悪かったのね…」
息子をどういう風に思っているんだ!
僕は変態ではありませんよ。
「説明不足ですいません。猫の姿は仮の姿で、実は猫ではなく人間なのです」
「ややこしいわね…。人間だけど姿は猫?もう少し詳しく説明しなさい」
僕は母上にサファイアのを説明した。
「なるほどね…。いいわ、私の隠密を貸したげる。表だって戦うと戦争になるからね…。できるだけ穏便にね」
そう言うと母上はベルを鳴らした。
良かった…これで何とかなりそうだ。
サファイアを助け出せる…。
「お呼びでしょうか、女王様」
気がつくと、メイド服の隠密がやってきていた。
「今日から、アデルを手伝ってあげて。人数は貴方に任せるから」
「わかりました」
そう言うと隠密は消えていった。
ん?気がついたかな…。
そう…僕の母上はカルダナル国の女王様。
私はその息子。
第1王子のアデル=カルダナルだ。
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