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36. 兄の回想 〈クルシュナ視点〉
しおりを挟む「クルシュナ!早く結界をはるのよ!」
「わかってる!ホーはハリーを早く起こせ!」
まさか、こんなに早く奴に居場所がバレるなんて思っていなかった。
「ライ!そっちは片付きそうか」
「ああ。こっちはもう片付きそうだ」
刺客が次々と散っていく。
「それより、サファイアは大丈夫なのか?」
ライが刺客を蹴散らしながら聞いてきた。
「たぶんな。守ってくれる人がいるから大丈夫だと思う。それに、俺が今サファイアに近づくと居場所がバレるだろ…」
本当は今すぐにでも側に行って無事を確かめたい所だが、サファイアの身を危険にさらすことになるよな…。
満月の夜、俺は人間の姿になってすぐにサファイアのいる屋敷に行った。
屋敷の主人と話をする為と、人間の姿のサファイアに会いに…。
サファイアは俺との再開を喜んでくれた。
泣き顔まで可愛いかった…。
屋敷の主人のアデル=カルダナル様は妹のことを本当に可愛いがってくださっているみたいだった。
何故わかったかって?
部屋の中に沢山のドレスとアクセサリー、それと妹が好きそうなお菓子が山ほどあったからだ。
前に犬の姿で偵察にきたが、あの時にはすでに妹が実は人間だと知っていたのだろうか?
そんなことを考えていたら、カルダナル様から俺達兄妹に何があったのかを聞かれた。
俺は妹を守ってくれることを条件に話を始めた。
「私達は隣国からやって来たのはご存知ですか?」
「それは、サファイアから聞きました」
やはり、前回の満月の時に人間だとわかったんだな…。
「私は隣国の辺境伯なんですが…」
「辺境伯が、なぜこの国にやって来たのですか?」
カルダナル様は不思議そうな顔をして聞いてきた。
「実は…妹に求婚してきた人がいまして…」
ここまで言うと、カルダナル様は身を乗り出し聞いてきた。
「サファイアに求婚!?受けたのですか?」
慌てている様子だ…。
「いえ、悪い噂がある人でしたので、すぐに断りましたが…」
「断ったのか…良かった…」
ホッとしている。
「ですが、諦めてくれず、妹のストーカーのようになりまして…」
「なんて奴だ!どこの誰だそいつは!」
少し、言うのをためらうが、隠しても仕方ないしな…。
「実は…反対側の隣国の第2王子様なんですよ…」
王族だから、あまり強く言えないんだ。
「え?…王子ってあの、ハイリか?…あいつはダメだな。外面は良いが性格がねじ曲がってるって、あいつの兄が言ってたぞ」
アイツの兄と繋がりがあるのか…。
「わかって頂けて良かったです。妹はそのハイリ様に誘拐され監禁されたので、そこから助け出して見つかりにくいように魔法をかけ、そして反対側のこの国まで来たのです…」
俺が話をしてる間中、カルダナル様は手をグッと握りしめて怒りを我慢しているように見えた。
「…ハイリ…許さないぞ…僕の可愛いサファイアを誘拐して監禁…許せない…生きてるのが辛いくらい苦しめてやる…フフフッ…」
独り言のように何かをブツブツと呟いている。
「そして、どこか他の国で妹に婚約者を作ればもうあの人も手をだせないだろうと思っているのですが…」
婚約者と言葉を出した瞬間にカルダナル様の目が光った。
「僕がサファイアの婚約者になります。ならせて下さい、お兄さん」
お兄さん……。誰がだ!と言いたいが身分が違うのでグッと堪えた。
「いや、お兄さんだなんて…畏れ多いです。サファイアの気持ちもありますしね」
サファイアの方を見ると、顔を真っ赤にしてうつむいている。
可愛いな。
「サファイアは僕の事が嫌いかな?」
直球ですねカルダナル様…。
「…いえ、嫌いではないです」
違う!そこで、嫌ですと言うんだ!サファイア!
「では、婚約してから僕の事を知っていけば良いよ。そうしよう。ね!」
サファイアの手を握って説得してる…。
やっぱり、この時に手を……。
「…い!クルシュナ!」
「…おい!クルシュナ!何を考えている!今はボーとするな!」
ライの声で我にかえった。
「…すまん、ちょっと思い出していた」
今は刺客と戦うのに忙しいので、続きはまた今度…。
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