30 / 88
30. 調査 〈クルシュナ視点〉
しおりを挟む俺は今、妹のいる屋敷に来ている。
それは、妹に会うためでもあるが、屋敷の主人がどんな人なのかを見極めるためだ。
妹の結婚相手として、相応しいかどうかを…。
今まで、色々な独身貴族のいる屋敷を調査したが、愛人がいるだの、毎日飲んだくれているだの、領民達に嫌われているだの…ろくな奴がいなかった。
最後に辿り着いたのがこのお屋敷だ。
身分が高い方なので、どうするか迷ったが…妹もお世話になっているし、この際、調査しようと思う。
庭にある森の方から入り様子を伺う。
ちょうど、サファイアが大型犬と一緒に、庭で日向ぼっこをしているようだ。
寝姿も可愛いな妹よ。
大型犬がこちらに気がついたようだ。
「ウゥーーー」
『ザジさんどうしたんですか?』
妹も起きてしまった。
寝ぼけた顔も可愛いな妹よ。
『見たことない犬が庭に入って来ているのよ』
『見たことない犬?』
サファイアがこちらを見た。
『あっ…クルシュナ…さん』
まだ、兄さんとは呼んでくれないのだな…。
『サファイアちゃんの知り合い?』
『はい。私の…』
どう説明しようか迷っているな。
そうだよな、犬が兄だとは言えないよな…。
『驚かせてすまなかった。サファイアの友人のクルシュナです』
二人の近くに行き大型犬に挨拶した。
『私はザジよ。よろしくね』
『それにしても、どうしてここに来たんですか?』
サファイアが驚いている。
『近くまで来たから、どうしてるかなと思って見に来たんだ』
本当のことはまだ秘密だ。
『何だか貴方達…種類は違う犬と猫けど毛色とか雰囲気が似てて良い感じね』
ザジという大型犬がサファイアに小声で言っている。
まぁ、兄妹だからな。
『ザジさんが考えているような仲じゃないですよ』
妹は顔を赤くして否定している。
そういう顔も可愛いな。
話していると、俺が待っていた屋敷の主人が現れた。
「そんな所で何を楽しそうにしているのかな?」
顔は笑っているように見えて口元はひくついている。
分かりやすくいうと威嚇のオーラが出ている。
「見慣れない犬だね。…前にサファイアを屋敷まで送って来た犬か」
よく覚えているな。たった一度少しだけ見ただけなのに…。
「サファイアとはどういう関係なのかな?友達?まさか…サファイアが好きとか…」
好きは好きだが、恋愛の好きではないな。
家族の好きだ。
『ご主人様はサファイアちゃんが可愛くて仕方ないのよ。…たぶん、貴方に嫉妬してるんだわ…困ったご主人様ね…』
ザジが呟いている。
猫の妹を可愛がっている?
犬の俺に嫉妬するくらい?
こいつ…。
変態なのか!?
可愛がるのは良いが、人が動物に見せる嫉妬の範囲を越えてないか?
動物愛が強い異常者なのか?
やっぱり変態か!
今もサファイアを抱き上げたまま俺を睨んで威嚇をしている。
俺は見ているぞ…。
サファイアが前足で男の顔が近づき過ぎないように止めているのを…。
サファイアが嫌がっていることをするなんて…。
確かに、そういう時のサファイアは可愛い反応をするのでいつまでも見ていられるが……。
…それをして良いのは俺だけだ!
やはり、この屋敷の主人も、サファイアの結婚相手ではないな。
俺は何も言わず屋敷から立ち去ることにした。
はぁ~。
可愛い妹の結婚相手を探すのがこんなに大変なことだったなんて…。
あの屋敷の主人は俺と似た匂いがするから大丈夫かと思ったが…変態だったな。
あっ、俺は変態ではないぞ!
ただ、妹が可愛すぎるだけだ!
あの屋敷の主人とは違うぞ!
…たぶん。
10
お気に入りに追加
165
あなたにおすすめの小説
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる