神様!モフモフに囲まれることを希望しましたが自分がモフモフになるなんて聞いてません

縁 遊

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15. 満月の夜 ①

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「まだ、地下水は戻ってこないのか?」
 不意に、リーンが訪ねてきて驚く。
「…ええ。何処かにヒビが入って、流れ出ているとしか、思えないわ」
 数年前から、魔女の森の地下水か減ってきている。
 雨が降っても一定以上に水位が上がらない。
 その為、生活用水が激減し、地下に貯水槽を作り、森の外で『水球』を作り出し、持ってきては水を補充している。
 とはいえ、限界があるのだ。
 リーンの『天水球』は水を圧縮させているので、大量の水が入っている為、これが有れば当分、魔女達の生活を守ることが出来る。
「…嫌な感じだな」
「そうなの」
 原因がハッキリとしないから、手の施しようがない。
「だったら、『天水球』をもう少し、置いていく『物質保管庫』」
 リーンが手をかざし、ドーナツ状の魔法陣が現れ、中心の引き出しから、『天水球』を二つ取りだし、手渡され、リーンは背を向けて王子の元に向かった。
 じっとこっちを見ていた王子は、リーンに気が有るのか、親しげに話す私を睨んで、不機嫌そうに、顔を歪めている。
 そんなつもりが無くても、これは面白い…。
 リーンは気付いているのか?
 もし、心を奪われそうになっている王子が、魔女に捕まったらリーンはどうする?
 ソフィアは楽しくなってきて、笑みを浮かべた。 
「どうした?用事は済んだから、帰ろう」
「ああ」
 リーンは王子を促して、ソフィアに背を向け、城の扉に向かった。
「リーン。気付けて帰りなさい。宴が始まるわよ」
 そして、魔女に捕まるのよ…。
「ありがとう。ソフィア」
 何も知らない二人は城の扉を出て行った。


 ソフィアは隣にたたずむ巨大な鏡に触れ、魔女の森を監視する『目』を動かし、映像を写し出した。
 『目』は森だけでなく、魔女の暮らす街全体を見ることが出来き、侵入者を見つけるためにも使われるモノだ。
 リーンと魔女との攻防が映し出され、二人は空中を移動して出入口に向かっている。
 彼女達三人なら、リーンを捕らえられるかもしれない。
 でも、この魔力は『海の魔法石』…?
 王子は封じられたものが解除されていないので、魔法が使えないはず…なのに、使えると言うことは…フールシアに会ったのか?
 だったら、彼女達だけでは、逃げられてしまうかも知れない…。
 ソフィアは立ち上がった。
 王子の足に下からつたが伸びてきて、捕まって、体制が崩れ、落ちそうな王子をリーンが捕まえて、つたを引き離そうとしている。
「もう少しなのに!」
 リーンが『空のやいば』、かまいたちで、つたを切り落とした。
 その瞬間、ソフィアは『瞬足移動』を使い、リーンの背後に移動し、ポンとリーンの背中を押した。
 それに気付いたリーンは振り返り、目を見張る。
 このままだと、逃げられてしまうの。
 逃げられてしまうと、私の楽しみが一つ減ってしまうのよ。
 ソフィアは微笑んだ。
 リーンと同じように、長い時間を生きるソフィアにとって、リーンの喜怒哀楽が、楽しみの一つになっている。
 まだ、誰も見たことの無い、リーンが見てみたい。
 これが、ソフィアが見た、リーンが変化するキッカケのスイッチだった。

 そのまま、バランスを崩した二人は、地上で待ち構える魔女の元に落ちていった。


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