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3. 猫の長老さん
しおりを挟むあれから一番近くの町にやってきたんだけど、まだ町の入り口にいる。
なぜかというと、前世の知識を思い出したから。
たしか、猫って縄張り意識が強い生き物だったよね。
私、喧嘩なんてできないし、逃げるにしても足も遅いし…って考えていたらお腹が減りすぎて動けなくなりました。
もし、このまま亡くなって、今度は人間に転生できたら
"モフモフ転生したと思ったらすぐに死亡しました"
っていうタイトルで本でも出そうかな~。
モフモフ好きには売れるかな?
『あ~、お腹すいた~』
我慢できなくなって、私が叫んだら、後ろから声がした。
『見かけん顔じゃな?』
『誰?』
振り返ると、毛の色も瞳の色も茶色の年配の猫がいた。
『私はこの町で、皆から長老と呼ばれている者だよ。お嬢さんはこの町に来るのは初めてかい?』
猫になるのも初めてだし。
異世界に来たのも初めてだと言いたいところだが…
『はい。何処に行けば良いかがわからなくて…。それに恥ずかしいのですが、お腹がすいてしまって動けないんです』
『そうなのかい。それは大変だ。お客様は大事にしないとな。私の後についてきなさい。ご飯をわけてあげよう』
良いんですか~。
いけない…毛が逆立って身震いしちゃった。
驚きすぎだね。
おじいさんは良い猫そうだし、ここは好意に甘えさせてもらおう。
『ありがとうございます』
やった~。やっと、ご飯を食べられそうだよ。
おじいさんって、野良猫ではないよね?
毛艶が良いから飼い猫だと思うんだけど…。
綺麗なリボンも首にしているし。
でも、野良猫だったらどうしよう…残飯のおすそ分け…だとしたら、お腹をくださないか心配だし、そもそも私、食べることができるかな?臭いとかあると無理だよ。
『どうしたんじゃ?早くついてきなさい』
『すいません。すぐに行きます』
考え事をしてたら駄目だね。
とりあえず、残っている体力を振り絞りって、おじいさんについていきます。
『え!?ここですか?』
思っていた何倍も大きくてお城みたいなお屋敷に連れて来られた。おじいさん、何者?
『心配いらん。ついておいで』
おじいさんは慣れた感じで柵を通り抜けて敷地内に入って行った。
「ナァ~」
おじいさんが少し甘えたような声で鳴き始めた。
しばらくすると、人が出て来た。
「長老。帰ってきたのか?心配していたんだぞ」
「ニャ!!」
私は驚いて思わず声を出してしまった。
だって目の前にすっごいイケメンが現れたから。前世でもこんなイケメン見たことないです。
「アレ?長老、お友達を連れてきたのかい?」
キャー!私に近づいてくるよ。
抱き上げられちゃったよ。
イケメンの顔、近すぎだよ…。
猫って鼻血でるのかな?やばそうなんだけど…。
そろそろ失神していいかな?
「君は珍しい猫ちゃんだね。こんな毛色の長毛の猫ちゃんなんて見たことないよ」
もう駄目かも…。
「何だか、ぐったりしてる?大丈夫かい?」
私の鼻を触ってきた。
「大丈夫そうだね。」
そう言いながら頬擦りしてきたよ~。
その時だ、イケメンが私の前足下(人でいう脇)に手を入れて身体を左右に広げた。
「ニャ~!!!!!!!!!!!」
『ヤメテ~!!!!!!!!!!』
「女の子だね」
イケメンに乙女の裸を…恥ずかしい所を…見られた…。
…生きていけない。
ガクッ…。
私は失神した。
「あれ?猫ちゃんどうしたの?あれ?大丈夫?…」
イケメンの焦る声を聞きながら…。
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