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93. 賢人の憂鬱〈島岡視点〉

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どうしよう…嫌われたのかな。

やっと思いが叶ってプロポーズもできたのに菫ちゃんが体調を崩したことで気まづい雰囲気になってしまった。メールも電話もしているけど何故かそっけない感じがするんだ。

それに全然会ってくれない…。

何か失敗したのかな。

いや…プロポーズした時も嫌そうではなかったし、それに…キスも拒否されなかった。

あの時の菫ちゃん可愛かったな。

慣れていないからか、息ができなくなってたどたどしい感じがして…顔を真っ赤にしながら何とか僕にこたえようとしているのが分かって…。

あれで夢中になりすぎたのが悪かったのかな。

でもあれは止められないでしょ。

「はぁ~…」

「何溜め息なんかついてるんですか?もしかして藤堂と上手くいってないとか?それなら俺に言って下さいよ。アプローチしないといけないのでね」

「そうはさせないよ橘くん。それに藤堂さんとは上手くいっているからね。出番は来ないよ」

会社の後輩の橘くんは菫ちゃんを狙っている。今のこの微妙な関係を知られたくはないよね。

だけど橘くんって変に勘が鋭いんだよ。会社の営業でも良く気がつくし先を読むのが上手いって評価されているんだよね。気づかれないようにしないと…。

「…で、その藤堂はいつ出社できそうなんですか?」

それね、僕も知りたい。本人に聞いても分からないとしか返信がこないんだよ。

「まだ体調が優れないみたいで、いつになるかは分からないみたいだよ」

「そうなんですか…」

残念そうだね。

「何かあった?」

「藤堂の作成する資料が一番分かりやすいんですよね。自分で真似してやってみてもいまいちなんですよ…」

「あー、藤堂さんの資料作成能力は評価されているからね」

「本人に言ってといて下さいよ。早く戻って来ないと困るって」

うん。そうだよね。

「僕もそう思うよ。藤堂さんに伝えておくよ」

そろそろ会えないと僕も限界が近いよ。早く顔を見せて欲しい。仕事中にもこうやって考えてしまっていること事態が宜しくないよね。

まさかこの歳でこんなに誰かを好きになるなんて。それも今まで周りにいなかった様なタイプの女性。

正直言って学生時代から知らない女性に告白されたり、プレゼントを贈られたりしてきて少し女性不信になっていた所もあったんだよね。

この人は違うかもしれないと思って付き合った女性も実は僕の家の財産が目当てだったりしたしね。

気がつけばこの歳…。

両親には跡継ぎの話をされて、見合いも無理やりセッティングされ…。

でも、あの時の見合いの話を受けていたらもっと早く菫ちゃんと結婚できていたのかな。

不思議な縁だよ。

菫ちゃん…早く会いたい。

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