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53. 誤算
しおりを挟む「結婚式の日取りが決まった」
お父様が私を執務室に呼び出して言った。
「え?相手はまだ幼い子供ですよ?」
「貴族ではよくある事だ…」
「しかし…私が女性である事を隠したまま結婚するのですか…」
「それは、一生の秘密にしておけ」
「そんな事ができると思いますか?幼い子供も大人になりますよ。その時は隠せないと思いますが…」
「愛人でもあてがえば良いだろう。貴族ではおかしくない」
結婚前から何て事をいうんだろう。
「では、世継ぎはどうするのですか?女性同士の結婚では子供は出来ませんが…」
「それは、お前が産むんだ。お前も愛人を作って必ず血の繋がりがある世継ぎを産め」
私は言葉を失った。
愛人を作れ?
世継ぎを産め?
カモフラージュで結婚させて、その影で愛人を作って子供を産め…なんて勝手な事を言うんだ!
私は貴方達の人形ではないし、結婚相手の少女の人生も貴方達のものではない。
それに…今までレオンとして、男として生きろと言っていたのに急に女に戻って子供を産めなんて…信じられない。
もういい加減に両親と縁を切る時がきたのだろうか…。
顔合わせの時はこんなすぐに結婚させるとは思っていなかった。
このままいけば…きっと、愛人も連れてくるかもしれない。
お母様のお気に入りの中から選んでくるのかもしれない。
最悪の事態を考えていた方が良さそうだ。
私の両親を甘く見てはいけないのだ。
まずは、結婚を中止させないと…。
こうなったら…。
「…実は今まで黙っていましたが、付き合っている人がいます。だから、結婚はできません…」
お父様は私をチラッと見てニヤリと笑った様に見えた。
「相手がいるなら好都合だ。そいつとの子供を作れば良いだろう。世継ぎにしてやるから、安心して彼女と結婚すれば良い」
そうきますか…何を言っても勝てる気がしない…。
「彼は地位がある人なので愛人にはなれません」
「相手は誰だと言うのだ?」
「…それは、言えません」
「ハッ…話しにならんな。もう、話すだけ無駄だから出ていけ」
お父様が手で追い払うようにしている。
こうなると、絶対に会話にならない…。
私は執務室から出た。
結局…結婚式を中止にはできなかった。
どうしたら良いのだろうか…。
こんなところで諦めるわけにはいかない。
私のリオンをこんな家に入れたくはないし、だからと言って愛してもいない人との子供を作る気にもなれない…。
レオンが生きていてくれれば、こんな事にはならなかったのに…。
そう言えばレオンにも好きな相手がいたよね…。
レオンも生きていれば彼女と結婚する事も出来たかもしれない。
生きている私が愚痴を言ってはダメね。
何とか策を考えないと…。
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