男装令嬢の願い

縁 遊

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33. 記憶が…

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診察が終わった…。

大変な事を忘れていた。

私は…クリフ様と男女の関係になっていた。

…何でこんな大事な事を忘れていたのだろうか。

たった一度の事だけど。

私にとってはとても大切な事なのに…。

思い出せて良かった。

だけど…なぜだろうか…まだ、何かを忘れているような気がする…。

これより大事なこと…。

「レオ様…大丈夫ですか?」

マリー…。

「ええ、少しボーとしているけどね」

「もう、帰れそうですか」

スッキリしたような…していないような…不思議な感じがする。

でも、この事だけにかまっていられない。

問題は山積みなのだ。

「マリー帰りにお買い物をしたいんだけど良いかな?」

「はい。私も御一緒させていただきます。じゃあ、出ましょうか…。ウルラ、帰るわね。ありがとう」

「はいはい。まだ、頭がボーとしていると思うので気をつけて帰ってくださいね」

「ありがとうございました」

出てすぐに街中にある服屋を訪れた。

「いらっしゃいませ。どのような服をお探しですか?」

店員が寄ってきた。

「双子の妹に贈り物をしたい。流行りの服をみたいのだが…」

店員は私の姿を上から下まで見た後、頭を下げた。

「畏まりました。お客様の双子の妹様なら美人でしょうから、お顔に負けない様なお色でさがしますね」

「頼む…」

店員は服を探しに行った。

実はあれから、マリーにクリフ様がレオナを探している…という話をした。

話し合った結果、お茶会やパーティーで沢山の人達に出くわすのは危険だろう…という事になった。

しかし、クリフ様の気持ちも考慮し…街中で一般人としてお会いするくらいなら…とお伝えした。

…そう…結局は会うことになったのだ。

その為に、女性用の服を買いに来た。

屋敷では隠しておかないと、お母様に捨てられる…。

だから、マリーに持っていてもらうことにした。

「お客様…このような服はいかがでしょうか?」

店員が持ってきたのは鮮やかなパープルのワンピース。

「こ、これは…ちょっと…派手すぎないか…」

「そんな事はございません。今年の流行りの色ですし、はっきりした色でないとお顔に負けます」

そんなに、私の顔は派手なのか?

どうしよう、あまり好きな色ではないな…。

「そうですね…レオナ様のお好きな色ではありませんわね」

マリーが助けてくれた。

「では、こちらはどうですか?」

次に見せたのは、クリフ様の瞳の色と同じ鮮やかなブルーのワンピースに銀糸で刺繍がしてある服だった。

「あの方の瞳の色…」

つい、口から出た言葉をマリーは聞き逃さなかった。

「そうですね。これが良いかもしれません。これをもらいますわ」

即決だね…マリー。

「ありがとうございます」

買った服をマリーに預かってもらった。

「レオ様…この服を着て、クリフ様と会うのは良いですけど…会ってからどうするおつもりですか?」

私は答える事ができなかった。

「辛くなりませんか…クリフ様と結ばれる事はないのに…」

そうね…その通りだと思う。

だけど…。

「お断りするにしても、お手紙よりも会ってお話をした方が良いかと思ったの…私は大丈夫よ。辛いのなんて慣れているわ…」

クリフ様と約束しているのは1週間後…。

クリフ様に…きっちりとお断りできるかな…。
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