男装令嬢の願い

縁 遊

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31. 思い出したい

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どうしよう…。

クリフ様…期待した目をしていた。

今さら、あの女性は来ることが出来ません…と言いづらい状況になってしまった。


「レオ様…顔色が優れませんが大丈夫ですか?」

侍女のマリーが心配してくれている。

「大丈夫よ…ありがとう」

「レオ様、1度診察に行かれませんか?帰って来られてからまだ、調子が万全では無いように見えます」

そうかしら…。

でも、マリーが言うならそうかもしれないわね…。

「そうね、マリーが言うならそうかも知れないわね。どこか良いところを知っている?」

「はい。知り合いに女医がいますので、そこなら…レオ様の秘密も守ってくれます」

「そう…では次の休みに行く事にするわ。予約しておいてくれる?」

「かしこまりました」

そう言うと、マリーは部屋から出ていった。

早速、予約しに行ったのかな?

さすが、マリーね。

診察してもらって、記憶も戻らないかしら…。

ここ1年の記憶が曖昧って…意外と不便なのよね。

仕事はお休みを頂いていたから支障はないんだけど、プライベートがね…。

クリフ様の事で何かあったんだとは思う…。

何となくだけど。

両親が私を女性と結婚させようとしているのもマリーから詳しく聞いた。

だけど、まだ…何か…とても大切な何か…忘れてはいけない何かがあるような気がする。

何なんだろうか…。

胸にポッカリと穴が空いている様な感じがするのだ。

「…痛い」

それを思い出そうとすると決まって頭が痛くなる。

何か思い出すといけない事でもあるのだろうか?

1年前と変わった事…。

何だろう。

クリフ様の事を意識している自分に気がついたくらいかな…。

帰国してからクリフ様に会うたびに、ドキドキとしている自分がいて驚いた。

最初は心臓でも悪くなったのかと心配になったけど、だんだんと違う事に気がついた。

クリフ様が近くに来るとドキドキするけど、その他の人だと全然大丈夫だったから…。

なぜ…いつから…そうなったのか。

確かに、素敵だとは思っていたけど…自分は男として生きるのだから、恋愛とかは全て諦めて仕事に集中しないといけない…と思っていたはずなんだけど…。

これも、無くした記憶の中にヒントがあるんだろうな…。

やっぱり、診察にいったら全てを話して記憶を取り戻す方法を聞いてみよう。

うん…それしかないよね。

少しでも記憶が戻る可能性があるなら何でもやってみないと。

この胸に空いた穴の正体が何なのか…思い出したい。

クリフ様の事もマリーに相談してみようかな。

マリーなら何か良いアドバイスをくれるかもしれないし。

早くマリー帰ってこないかな…。

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