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30. 断れない…
しおりを挟むお姉様からの手紙が届いた…。
…手紙を読むのが怖い。
女性が誰なのか、わかってしまうとクリフ様にお伝えしないといけない。
…勇気を出して、手紙を読んだ。
驚きだ…。
女性は私…。
その日はウィッグをつけて外出していたらしい。
その時、クリフ様に会ったんだ…。
クリフ様…偶然にしてはできすぎね。
しかも、クリフ様には、女性には相手がいると紹介したと書いてあった。
複雑な気持ちだ…。
もちろん、クリフ様が私の事を気にしてくださった事は嬉しい…けど、レオナとは知らないのだから別の女性に惹かれているとも言える…。
あ~…自分でもこの感情をどう処理して良いのかわからない…。
…考えを整理しないと。
まずは、クリフ様が探していた女性は私だった。
クリフ様にそれをどう言うか…これが問題。
まさか、私です…何て言えないし。
もうひとつ問題なのは相手がいると知っていて何故私に聞いたのか…。
そこまで、惹かれているというこですよね…。
手紙にお姉様は…もし、どうしても聞きたいと言われたら「婚約者がいる女性を不幸にするおつもりですか?」と言えば良い…と書いてあった。
そんな事を言えるはずがない…。
しかも、私に婚約者はいないし…。
はあ~。
「レオン!やっと会えたわ」
不意に声をかけられた。
「姫様…」
クリフ様部屋に入る直前に姫様に呼び止められた。
「お久しぶりですね、姫様」
「そうよ!レオンってば私に何も言わずに休暇なんて…酷いわ」
姫様が拗ねているようだ。
「申し訳ございません。急いでいたものですから…」
「お兄様から聞いたわ…体調が悪かったのでしょう?もう大丈夫なの…」
「ご心配ありがとうございます。もう、大丈夫です」
そうか、私は体調不良で休暇をもらったんだ…。
「良かったわ…。レオンの顔を見られてホッとしたわ」
ガチャッ…。
クリフ様の部屋の扉が開いた。
「人の部屋の前で何をしているのかな?」
笑顔でクリフ様があらわれた。
「お兄様ってば、妬いてるのね…私とレオンが仲が良いから」
「ああ、そうだね。エルナはレオンが大好きだからね。兄としては悔しいよ」
クリフ様がおどけてみせる。
「では、お兄様…お部屋でお茶を頂けますか?」
姫様もおどけてみせる。
「かしこまりました、エルナ姫様の為に美味しいお茶を御用意させて頂きます」
「「「プッハハハ…」」」
3人で顔を見合わせて笑った。
結局…本当にクリフ様の部屋でお茶を頂くことになりました。
クリフ様とエルナ姫と私の3人で…。
穏やかな時間を過ごしていたのだが…。
「…そう言えば噂を聞きました。レオンが婚約するって…本当ですの?」
空気が変わりましたね…。
そんな噂が流れているとは知らなかった…。
エルナ姫は誰から聞いたのでしょうか?
「そんな相手はいませんよ。…ただ、両親からは早く婚約者を決めるように言われていますね…」
「レオンもなのか…」
クリフ様が呟いた…。
「あら、お兄様は来月のお休みの日に婚約者を決めるパーティーを開かれるのでしょう?」
…婚約者。
「……ああ。王妃様のお決めになった事だ。なあ、レオン…この前の女性は来てくれないだろうか」
え?!どうしよう…。どう答える…。
「…私にはわかりません。本人に聞いてみないと…」
クリフ様の顔が明るくなった。
「では、聞いてくれないかな。頼む!」
…断れない。
「わかりました…。聞いてみるだけですよ。期待しないで下さい」
「ああ、わかってる」
スゴイ笑顔だな…。
絶対に期待している。
あー…簡単に引き受けてしまったけど…どうしよう。
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