家族に溺愛されすぎて適齢期ですが結婚できていません

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7. リリーシャの生い立ち (リリ視点)

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「僕はなぜ女性の格好をしなければならないの?」

 物心がつく頃には僕は男なのに女性のドレスを着せられていた。

 納得がいかない僕ははいつも回りの大人達に聞いて困らせていたが、答えはいつも決まっていた。

「これはリリ様の為なのです。」

 皆が同じことをいつも言うので、その内に僕も聞かなくなった。

 この決まり文句が「ルナリアお嬢様に会う為にはこのお姿をしていないと会えませんよ。」に変わったのはいつからだったかな?

「ルナに会えないのは嫌だ!だから…嫌だけどドレスを着る。」

 僕の答えも決まっていたな。

 亡き母の親友の公爵夫人の娘のルナに僕は一目惚れしたんだ。

 初めて会った時の衝撃は今でも覚えている。

 屋敷から出て使用人以外の人と会うのは初めてで緊張していたら僕の所までルナが走ってきて瞳をキラキラさせながら言ったんだ。

「あなたは天使さまですか?」って瞳をキラキラさせながら言われたんだ。

 僕には聞いてきたルナの方が天使に見えた。

 明るい日の光に照らされてキラキラと光る美しいシルバーの髪。宝石のアメジストの輝きにも負けない瞳の美しさ…。僕はルナに言い返した。

「君が天使じゃないの?」って。

 お互い笑いあって、僕達はすぐに仲良くなった。

 途中、声変わりをした時は誤魔化すのに苦労したけどね。ルナが素直に病気だと信じてくれて助かったよ。

 20歳くらいまでは父との約束で今のままでいるつもりだったんだけど…。

 美しく成長していくルナにたかるハエ達を処分するのが大変になってきたんだよね。

 ルナ本人は全然気がついて無いみたいだけど、頭が良くて美人なルナは人気があっていろんな奴が近寄ろうとしていた。だから僕は裏から手を回したりルナの父の公爵や兄達に情報をさりげなく流したりして敵を排除してきたんだ。

 だけど…王家に関わる人間は簡単には排除できない。

 僕の従兄弟…カダ。

 アイツは僕が相手をしないとね。

 まあ、カダは僕の事を男だと知らないし従兄弟とも知らないんだけどね。

 アイツの両親は僕の母の敵だからね。

 そんな奴に僕の天使…ルナは渡せないよ。

 僕の天使は本当の僕を知って受け入れてくれるだろうか…。

 友人ではなく夫婦になりたいと言ったらどんな反応を見せてくれるのだろう。

 願わくば喜んでくれると嬉しいな。

 問題はルナの父親の公爵と兄達だけど…。こっちには公爵夫人がついているから心配はないだろう。

 義理母様は大事にしなければいけないな。

 あ~あ、ルナ、ルナリア…僕の天使。

 早く君に本当の姿の僕を見て欲しい。

 僕を好きになって欲しい。

 僕を愛して欲しい。

 僕は君のことが大好きなんだよ。

 もう、女の格好をした僕はこの世にいない。



 男の…この国の第一王子…リリーシャとして君を迎えに行くからね。



 待っていて…僕の天使、ルナリア。




 





 
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