7 / 10
7. リリーシャの生い立ち (リリ視点)
しおりを挟む「僕はなぜ女性の格好をしなければならないの?」
物心がつく頃には僕は男なのに女性のドレスを着せられていた。
納得がいかない僕ははいつも回りの大人達に聞いて困らせていたが、答えはいつも決まっていた。
「これはリリ様の為なのです。」
皆が同じことをいつも言うので、その内に僕も聞かなくなった。
この決まり文句が「ルナリアお嬢様に会う為にはこのお姿をしていないと会えませんよ。」に変わったのはいつからだったかな?
「ルナに会えないのは嫌だ!だから…嫌だけどドレスを着る。」
僕の答えも決まっていたな。
亡き母の親友の公爵夫人の娘のルナに僕は一目惚れしたんだ。
初めて会った時の衝撃は今でも覚えている。
屋敷から出て使用人以外の人と会うのは初めてで緊張していたら僕の所までルナが走ってきて瞳をキラキラさせながら言ったんだ。
「あなたは天使さまですか?」って瞳をキラキラさせながら言われたんだ。
僕には聞いてきたルナの方が天使に見えた。
明るい日の光に照らされてキラキラと光る美しいシルバーの髪。宝石のアメジストの輝きにも負けない瞳の美しさ…。僕はルナに言い返した。
「君が天使じゃないの?」って。
お互い笑いあって、僕達はすぐに仲良くなった。
途中、声変わりをした時は誤魔化すのに苦労したけどね。ルナが素直に病気だと信じてくれて助かったよ。
20歳くらいまでは父との約束で今のままでいるつもりだったんだけど…。
美しく成長していくルナにたかるハエ達を処分するのが大変になってきたんだよね。
ルナ本人は全然気がついて無いみたいだけど、頭が良くて美人なルナは人気があっていろんな奴が近寄ろうとしていた。だから僕は裏から手を回したりルナの父の公爵や兄達に情報をさりげなく流したりして敵を排除してきたんだ。
だけど…王家に関わる人間は簡単には排除できない。
僕の従兄弟…カダ。
アイツは僕が相手をしないとね。
まあ、カダは僕の事を男だと知らないし従兄弟とも知らないんだけどね。
アイツの両親は僕の母の敵だからね。
そんな奴に僕の天使…ルナは渡せないよ。
僕の天使は本当の僕を知って受け入れてくれるだろうか…。
友人ではなく夫婦になりたいと言ったらどんな反応を見せてくれるのだろう。
願わくば喜んでくれると嬉しいな。
問題はルナの父親の公爵と兄達だけど…。こっちには公爵夫人がついているから心配はないだろう。
義理母様は大事にしなければいけないな。
あ~あ、ルナ、ルナリア…僕の天使。
早く君に本当の姿の僕を見て欲しい。
僕を好きになって欲しい。
僕を愛して欲しい。
僕は君のことが大好きなんだよ。
もう、女の格好をした僕はこの世にいない。
男の…この国の第一王子…リリーシャとして君を迎えに行くからね。
待っていて…僕の天使、ルナリア。
0
お気に入りに追加
240
あなたにおすすめの小説


攻略対象の王子様は放置されました
白生荼汰
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。


白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

顔も知らない旦那さま
ゆうゆう
恋愛
領地で大災害が起きて没落寸前まで追い込まれた伯爵家は一人娘の私を大金持ちの商人に嫁がせる事で存続をはかった。
しかし、嫁いで2年旦那の顔さえ見たことがない
私の結婚相手は一体どんな人?

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

告白さえできずに失恋したので、酒場でやけ酒しています。目が覚めたら、なぜか夜会の前夜に戻っていました。
石河 翠
恋愛
ほんのり想いを寄せていたイケメン文官に、告白する間もなく失恋した主人公。その夜、彼女は親友の魔導士にくだを巻きながら、酒場でやけ酒をしていた。見事に酔いつぶれる彼女。
いつもならば二日酔いとともに目が覚めるはずが、不思議なほど爽やかな気持ちで起き上がる。なんと彼女は、失恋する前の日の晩に戻ってきていたのだ。
前回の失敗をすべて回避すれば、好きなひとと付き合うこともできるはず。そう考えて動き始める彼女だったが……。
ちょっとがさつだけれどまっすぐで優しいヒロインと、そんな彼女のことを一途に思っていた魔導士の恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる