龍神様に頼まれて龍使い見習い始めました

縁 遊

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76. 龍神様との再会と波乱の予感

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『え!!!本当ですか…。』

 俺は興奮をおさえられなかった。

『嘘を言う必要はないだろう。』

 そうなんですけど…。信じられない気持ちがでてしまった。え?何を信じられないかって?

 それは…。

『お主はこの世界に来てから頑張ってくれた。この世界に龍達も戻ってきつつある。これもお主のおかげだ。だから約束はきっちり果たすぞ。』

 この世界に転生してから会っていなかった龍神様が夜中に突然姿をお見せになって驚いていたら、突然告げられた嬉しい話。

『じゃあ…じいちゃんに…じいちゃんに会えるんですね。』

『ああ、一度だけしか会わせられないがな。』

 それでも嬉しい。あっ…でも一つ心配事が…。

『あの…この姿で会うんですか?』

 転生した今の姿ではじいちゃんは俺だと気がつかないだろうな。

『言ってなかったな。姿は日本人に戻すから安心して良い。』

『良かった~。』

 ホッとしたよ。これでじいちゃんに安心して会える。

『それで…じいちゃんにはいつ会えるんですか?』

 今すぐって言われても気持ちの準備が出来ていないしね。話したいことは沢山あるから何を話すかも決めたいしな。

『そうだな、次の満月の夜になるな。』

『次の満月の夜…。』

 それならいろいろ準備が出来そうだ。

『分かりました。約束を守って頂きありがとうございます。』

『いや、こちらこそ感謝する。ただこの約束を果たしてもお主はこの世界で生きて行くことになるが…大丈夫か?』

 龍神様に感謝されたよ。俺の事を心配までしてくれている。

『はい。この世界を今は楽しんでいます。天命を終えるまでこの世界で頑張ります。』

 この世界では大家族に囲まれて、友人達に囲まれて楽しく毎日を過ごさせてもらっている。この世界に転生させてもらって龍神様に感謝しているんだ。今更、日本に戻ってもじいちゃんもいなしな…。

『確かに楽しんでいるみたいだな。女装姿は似合っていたぞ。』

 龍神様が笑っている。俺の女装姿を見られていたんだ!恥ずかしい。

『顔が真っ赤だぞ。』

 からかわれているのか。人が悪いな…いや、龍が悪いな。

『からかわないで下さいよ!』

『すまん、すまん。これ以上、怒られては嫌なのでそろそろ帰るとするか。』

 龍神様の身体が光だした。

『え…もう帰られるのですか。』

 久しぶりに会えたからか寂しさを感じる。

『またすぐに会える。元気でな。』

 真っ白な光に包まれ、眩しさのあまりに目を閉じた。目を開けた時にはもう龍神様の姿は消えていた。

「次の満月の夜か…。楽しみだな。」

 俺は気持ちが興奮したせいかその夜は眠る事が出来なかった。



「ふぁ~。」
 
 昨日寝られなかったせいでアクビが何度も出てしまう。

「八岐君がアクビなんて珍しいね。昨日寝られなかったの?」

 俺の横に座っている大谷くんが顔を覗き込むように見てきた。

「何だ?!何かあったのか?」

 佐藤くんは相変わらず何かを食べながら話している。今日は…クリームパンみたいだ。紙袋の中にはまだまだ入ってそうだな。まだ1時間目が終わったとこだけど…朝ご飯が少なかったのかな?

「もしかして…恋の悩みとか?」

 大谷くんがニヤニヤしながら聞いてくる。

「は?いや、それはないよ。」

 この男ばかりの世界で恋愛?いつ出会いがあるのさ。

「そうかな~。学祭が終わった後から恋愛相談が増えたんだよね~。八岐くんも、もしかして…と思ったんだけどな。」

 恋愛相談が増えたなんて初耳だ。大谷くんは交遊関係が広いからか人から相談される事が多いのは知っていたけどね。

「あ、因みに八岐くんのお姉様達に恋した子もいるんだけどね。」

「え!そうなの?」

 あの姉達に恋?!

「まあ仕方ないよね。皆さん凄い綺麗な方ばかりだったからね。女性に免疫のない僕達にとっては刺激が強すぎたかもね。」

 大谷くんは遠くを見つめて話している。顔が緩んでますが…。

「そうだよな。俺も最近食欲が減ってさ…。あの方達の事を思うと胸が一杯になるよ。」

 佐藤くん…それで食欲が減ってるの?手にはまたメロンパンを握ってますが?

「そう言えば隣のクラスの王子もお姉様達を見初めたらしよ。」

 なんだと!!あの嫌な感じの…え~と、ペリーだったかな?!

「そうなのか…。」

 俺は顔をひきつらせながら答えた。出来ればあの王子と親族にはなりたくない。父さんに"王子からの話は断れ"と手紙を送ろう。

 でも、ペリー王子と釣り合う歳だと三つ子の姉さん達くらいだよな。いや…無いな。あの無口なペリー王子と三つ子の姉さん達が一緒にいる姿が想像できない。姉さん達に振り回されているペリー王子の姿は想像できるけどね。

 俺はモヤモヤしながらその後も授業を受けた。せっかく良い気分だったのにな。アイツのせいで台無しだよ。やっと放課後になったことだし今日は部屋に帰ってすぐに寝よう。

 そう思っていたのに…委員長が俺の所にやって来た。

「おい、八岐くんにペリー様が会いに来てるぞ。」

 委員長は相変わらず冷たい態度だな。って言うか…ペリーが会いに来た?!

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