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68. 佐藤くんって良い人
しおりを挟む「そもそもなんだけどさ…。佐藤くんは龍の存在を信じる?」
考えたんだけど佐藤くんには遠回りな言い方をしても通じない可能性があるからストレートに言うことにした。
「う~ん、俺自身は見たことは無いけど、信じる信じないで言うと…信じたいかな。」
微妙な言い方だけど信じないじゃなくて良かった。
「もしかして八岐くんは視える人なのか?」
佐藤くんが目を大きく見開いて俺を見た。興味がありそうな感じだ。
「…うん。」
「え?!本当に?!凄いな!!」
ご飯を美味しそうに食べている時の佐藤くんの顔と同じだ。
「じいちゃんからは昔は龍がこの国の人達にもついていたって聞いた事はあるんだけど…。今も居たりするのか?」
じいちゃんから聞いた?もしかして佐藤くんのおじいさんは視える人なのか?!
「実は…佐藤くんにもついてるよ。」
佐藤くんは更に目を大きく見開いて驚いている。
「お、俺についてるのか?!どんな奴?なあ、教えてくれよ!」
どんな奴…正直に言って良いのかな。龍には性別がないから女の子の様な言葉を話す龍っていうのも違うしな…。
「え~と、佐藤くんの食べっぷりに感動してついたみたいだよ。」
嘘は言っていないよね。
「そうか~。じゃあ、その龍も大食いなのか?」
「龍は基本的に食事はしないんだ。人間からのやる気とかのエネルギーが主食になるんだよ。」
「そうなんだな。見えるなら見てみたいなそいつの姿を…。」
どうなんだろう?佐藤くんが壁に描いている皇帝龍を想像しているなら見えないほうが夢は壊さないと思うけどな。まあ、いかつい感じは変わらないけど話し方がね…個性的だから。
『ちょっとさっきから黙って聞いていれば失礼しちゃうわね!』
ヤバイ…。佐藤くんの龍が聞いていたみたいだ。
『居たんですね。』
『居るわよ!ちゃんと質問に答えてあげなさいよ!綺麗で神々しい龍がついているって教えてあげなさいよ!』
自信家なんだな。
『自信家って…私は本当のことを言っているだけよ!』
俺の思念まで読めるから龍との会話は怖いんだよね。
『失礼しちゃうわ!私は怖くなんかないわよ!』
龍同士だと細かい違いは良く分かるのかな?俺には色の違いや大きさで見分けるくらいしかできないんだけど…。あと言葉使いとか。
『本当にあんたって失礼なお子ちゃまね。』
しまった…。余計に怒らせたみたいだ。
「佐藤くんについている龍は凄い綺麗な龍だよ。」
俺は慌てて佐藤くんに言った。龍をこれ以上怒らせない為に…。
「そうなのか!」
佐藤くんの顔がパァと明るくなった。喜んでいるみたいだ。
「あのね、龍の話をしたのは実は佐藤くんにお願いがあるからなんだけど聞いてくれるかな?」
佐藤くんはキョトンとした顔になった。
「聞いてみないと分からないから聞かせてくれ。」
佐藤くんのこういう真面目に答えてくれるところは尊敬するな。お調子者に見えて違うんだよね。
『よね~!』
あ、龍も同意してる。
「実はさ、委員長にも龍についてもらいたいなって思っていて…。委員長と仲良くなりたいんだけど上手くいかなくて困っているんだよね。」
佐藤くんは俺の話を頷きながら聞いていた。
「なるほど。それで俺に仲を取り持ってほしいんだな。」
おお、話が早い。
「そうなんだよ!頼めるかな?」
俺は少し困り顔をして佐藤くんを見た。
「それくらいなら良いぞ、協力する。」
「ありがとう~!」
『さすがダーリンね。男らしいわ~。』
いつから佐藤くんの事をダーリンって言っているの?ますます怪しい龍に見えるよ。
『また!失礼な事を言うんじゃないわよ!!』
…俺に対してはすごい厳しいな。口調も違うんだよな。地味にへこむな…。
『ダーリンをこき使うんじゃないわよ!』
『…はい。』
言うこと言ったら姿を消しちゃったよ。
だけど佐藤くんに協力してもらえれば委員長の態度も変わるよな。前に進めそうな予感がする。
「八岐くんはさ最終的にどうしたいの?」
いきなり核心をつく質問ですね。
「ん~、会長と話した結果なんだけど…この学校の生徒全員に龍がつくことを目指してるんだよね。」
「へぇ~凄いな…。」
「道はまだまだ遠いけどね。」
だってまだ数人しかついてもらえていないからね。
「俺でよければ委員長以外でも協力するよ。」
な、なんてよい人なんだ佐藤くんはー!!!
「え…そんな涙ぐむ様な事なのか?」
俺が目を潤ませて佐藤くんの手を握った。ちょっと引かれてる?
「だって…嬉しいんだ。ありがとう。」
「あ…うん。」
最後はなんだか微妙な雰囲気で終わったけど幸先は良いはずだ。…たぶん。
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