龍神様に頼まれて龍使い見習い始めました

縁 遊

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67. イラッとするのは誰のせい

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 慌てて事務員さんが俺を呼びに来たので何があったんだと急いでやってきたが…。連れていかれた応接間には知っている人が満面の笑みを浮かべて俺に手をふっていた。

「竜、元気だったか?」

「お父様…。」

 何で父さんがここにいるんだ?!毎月送られてくる手紙にも書いてなかったぞ。

「フフッ、驚いたか?実はなこの学校の保護者向けに今度講演会をすることになってな、今日はその打ち合わせに来たんだ。驚かせてやろうと思って手紙にも書かなかったんだ。どうやら、成功だな。」

 父さん、本業はどうしたの?怒られないのか?いや、それよりも気になるのは…。

「講演会って…。もしかして龍についてですか?」

 父さんがハッとして顔色が変わる。

「竜すまない!勝手に本に書いたりして…。許してくれるか?」

「許すもなにも…。」

 事後報告で、今更ですよね。父さんは以前にも増して元気になったみたいだし、怒る気はありません。

「そうか、許してくれるか!さすがは私の息子だ!」

 まだ言葉にはしていないですよ。父さんってせっかちな所があるよな。

「それで僕に何か用事なのですか?」

 事務員さんが走って呼びに来たくらいだから何か急いで伝えたいことでもあるんだろう。

「いや、顔を見たかっただけだ。」

 ん?父さんは出されていた紅茶を優雅に飲み始めた。

「え…顔を見たかった?それだけですか?」

 俺は今から佐藤くんと大事な話をしないといけないから気合いをいれていたのに…。

 それに事務局さんも忙しい様子だったのにわざわざ呼びとめて俺を呼んで来てもらったんだよね?

「お父様…僕は忙しいのでこれで失礼します。」

 空気が読めないと思っていたけど…ここまでとはね。少しイラッとしているけどお父様の気持ちも分かるから黙って出て行こうとした。

「え!竜…。せっかく父が来たのにもう行ってしまうのか?寂しいではないか!」

 父さんが引き止めた。俺が怒っているのに気がついていないんだな。

「お父様は講演会の打ち合わせにきたんですよね?しっかりお仕事してください。僕も忙しいので…。」

 父さんが悲しそうな顔で呆然としている。

「竜…。」

 かわいそうかな。いや、父さんにも分からせないとね!

「では失礼します。お父様講演会がんばって下さいね。」

 俺が応接間の扉を閉めると父さんの叫び声が聞こえた。

「竜ーー!!!」

 父さんは子供の中でも唯一の男子だった俺をすごい可愛がってくれていたのは分かっていた。女ばかりの中で父さんの立場が無かったからなんだろうけど…。こんなに長く離れた事が無かったので理由をつけて俺に会いに来たんだろうな。

 しかし…講演会とは。

 儲けすぎていないか?

 家に帰ったら母さんに色々と聞かないといけないことが増えたな。

「はぁ~。」

 俺は大きな溜め息をついて気持ちを整えた。

「良し!佐藤くんに会うぞ!!」

 急いで部屋に戻ると佐藤くんが俺の部屋の前で待っていた。

「ごめん佐藤くん!待たせたよね。」

「いや、呼び出されたんだろ?大丈夫なのか?」

 近くにいたクラスメイトに佐藤くんにデンゴンヲ頼んでいたのだがきちんと伝わっていたようだ。

「ありがとう。もう済んだよ。さあ、部屋に入ってよ。」

「ああ、お邪魔します。」

 佐藤くんは俺の部屋に入るとキョロキョロと部屋の中を見回していた。初めて入るから見ちゃうよね。

「綺麗にしているな~。俺の部屋なんかすごいことになっているぞ。」

 そうなんだ…。

「難しそうな本が沢山あるな。俺の部屋にはないな(笑)あるのは教科書くらいだ。」

 佐藤くんは本を読まないんだね。一つ知ることができたよ。

「お茶でもいれるね。お菓子もあるよ。」

 佐藤くんの目付きが変わった。

「お菓子…。」

 さっき沢山食べていてもお菓子は別腹なのかな?

「うん。実家から送ってきたクッキーなんだけど食べる?」

「食べる!!」

 返答が早い(笑)

 実家きら送ってきたクッキーは乾燥させたレーズンが入っている。俺がアイデアを出して作ってもらったものだ。佐藤くんの口に合うと良いな。

「う、旨い!なんだこれ!!クッキーの中に…干し葡萄が入っているのか?」

「うん。良かったよ口に合ったみたいで。」

 佐藤くんは皿にのせて出したクッキーをあっという間に食べ終わってしまった。

「もっと食べる?」

「食べる!!!」

 俺は用意してあったクッキーを全て出した。…がこれもあっという間に無くなった。

「はあ~、旨かった~。」

 ここからが大事なんだけど、佐藤くんはクッキーを食べて終わりだと思っていないよね?

「それで…佐藤くんに言っていた話の事なんだけど…。」

「あっ、そうだったな。なんだ話って?ついクッキーに夢中になっちゃった。」

 素直だな。

「佐藤くんはこの寮の壁に描いてある龍の絵について知っている?」

 何から話すか迷ってイメージしやすい所から話すことにした。

「あのカッコいい龍の絵の事か?龍が描いてあるな~くらいしか知らない。何故だろうと思ったことはあるけどな。」

 みんなもそんな感じなんだろうな。

 どう佐藤くんに説明をしようかな。











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