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66. 相変わらずです佐藤くん
しおりを挟む「さあ、今日も美味しく頂きます。」
佐藤くんがテーブルに乗りきらないくらいの沢山の料理を前にして手を合わせている。
「ねえ、佐藤くん…。」
「何だ?」
大きな口を開けてスプーンで親子丼を食べている。一口がでかすぎるな…。
「あのさ委員長とは昔から知り合いだったりするの?」
「委員長?ん~、そうだな。ものすごく仲が良い訳では無いけど友人だな。お互いの父親が友人だから何度か顔を合わせたりしていたんだ。」
それだー!謎が解けた~!
委員長が俺に冷たいと思っていたのは、佐藤くんが昔からの知り合いだったから対応が違っただけだったんだ。なんだかホッとしたよ…。
「委員長がどうかしたのか?」
佐藤くんが親子丼を食べ終わり、次のグラタンが熱すぎたらしくフーフーと冷ましながら俺にたずねる。知り合いだから気になるのかな?
「え?たいしたことではないんだけど、佐藤くんと話す時と僕と話すときの雰囲気が違うな…と思ってさ。」
佐藤くんは驚いた顔をしている。けどそれが口に入れたグラタンが思ったより熱かったせいなのか、俺の話しに驚いているせいなのかが分からない。
「委員長は人が苦手なんだよ…。あれでもましになったんだ。」
「そうなんだ。」
昔はどれだけ酷かったんだ。ほとんど口をきかなかったとか?
「アイツは母親が早くに亡くなって父親は再婚せずに男手一つでアイツ育てたんだ。俺の家に来たときなんかは俺の母親の事を遠くから見ていたりしたから母親が恋しかったんだろうな…。一時期は家から一歩も出ないって親父さんが困っていたからな。今こうやって学校に毎日来ているだけでもアイツの親父さんは嬉しいだろうと思うよ。たまにアイツの親父さんから手紙をもらっているだ。アイツの事が知りたいみたい。本人は簡単な手紙しか寄越さないから学校での事が分からないって嘆いていたよ(笑)」
「へぇ~。」
幼馴染みに近いのかな。委員長のお父さんから手紙をもらうくらいだから佐藤くんは家族ぐるみで親交があるということだよね。
いつもクラスにいる時は話しているのを見たことが無かったから分からなかった。俺が見ていない時とかに話をしていただけなのかな?
「だからアイツがあんな感じなのは気にすることないと思うぞ。俺も最初に話しかけた時は無視されたからな。アイツが親父さんに怒られて口をきいたくらいだから(笑)」
そう言いながら佐藤くんの手は休まずご飯を食べている。今はグラタンが食べ終わって酢豚に手をつけている。佐藤くんは酢豚のパイナップルも避けること無く食べている。俺はアレが苦手なんだよな。
料理に入っている果物…。果物は生のまま食べたい派です。
…話がそれそうなのでこれは置いといて…。
佐藤くんと委員長の関係が分かってスッキリしたよ。委員長に龍つけるために佐藤くんに協力してもらおうかな。俺一人では強敵の様な気がするからね。
「あのさ…ご飯が食べ終わったら聞いて欲しい話があるんだけど良いかな?」
「ん?良いけど…。」
佐藤くんは最後の酢豚を口に入れた。次は唐揚げ…さっき酢豚を食べてたよね?その前はグラタン…食べ合わせもすごいな。
結局佐藤くんが大盛りご飯とおかずをたらふく食べて満足するのに一時間かかった。休みはいつもより時間をかけて食べる量も増やしているみたいだ。
「はぁ~、食った食った。待たせたな。どこで話をする?ここか?部屋か?」
妊婦さんの様に大きく膨らんだお腹を擦りながら佐藤くんが明るく聞いてくる。
「ここではちょっと話しにくいから僕の部屋で良いかな?」
「了解~。じゃあ、八岐君の部屋に行こうか。」
「ありがとう。」
「あ、でもその前に自分の部屋に一度帰ってから行くわ。俺…ご飯食べた後は絶対にトイレに行きたくなるんだよ。だからその後でも良いか?」
なるほど…あんなに食べるのに太らないのは消化が良いからなんだね。
「うん。部屋で待ってるよ。」
「おう!じゃあ、後でな!」
佐藤くんは身体も重いのか歩く速度も遅くお腹を触りながら部屋に帰って行った。
『お前…何を佐藤に話して大丈夫か?』
『翡翠…。』
翡翠が話しかけてきた。
『俺…反省したんだ。翡翠に言われて俺も頑張らないといけないと思えたんだよ。委員長と佐藤くんは知り合いみたいだから協力してもらえれば良いかなと思ったんだけど…翡翠は反対なのか?』
翡翠はすぐには答えなかった。
『……お前が決めたなら口出しは止める。』
『翡翠…。』
何とも言えない空気だ。翡翠はまだ俺のことを怒っているのかな。
『おのさ…。』
俺が翡翠と話をしようとした時だった。
「いた!八岐くん!!」
学校の事務員さんが俺の事を探していたみたいだ。
「ちょっと事務局まで来てもらえないかしら?」
「え?!」
事務局…一体なんだ?!
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