龍神様に頼まれて龍使い見習い始めました

縁 遊

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62. 大食い大会の後

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「佐藤くん、これ食べてよ。」

 隣のクラスの生徒から佐藤くんに焼きそばパンが渡されている。

「ありがとな~。助かるわ。」

 大食い大会が終わってからよく見る光景だ。あの大会で佐藤くんは学校で有名になり、今まで話をしたことがないような生徒からも差し入れをもらうようになった。

 佐藤くん本人は「食べ物を貰えると食費が浮くから助かる。」と言っている。

『この子の食べっぷりは気持ちが良いわ~。でもよく太らないわよね。』

 今話したのは佐藤くんについてくれた龍だ。話し方は女性的だけど見た目は…。

 …思っていることも読まれるので自主規制します。

『家系的に太りにくい体質だと本人が言っていたのを聞いたことがあります。』

『そうなのね。…それより今変な事を考えていたでしょ。もう!やだわ。』

 佐藤くんの龍は、フンッと顔を横に向けた途端に姿を消してしまった。

『上手くやれよ…。』

 翡翠が呆れたように言ってくる。

『うん…。上手くやらないと駄目だという気持ちはあるんだけどさ…上手くいかないよね。』

『落ち込むんじゃねえ。前向きに努力しろ!』

『はい!』

 翡翠に喝!を入れられた。

「あっ、兄さん。こっちだよ。」

「早かったんだな。今日は何を貰ったんだ?」

 実は大会が終わってから佐藤くんはお兄さんと仲直りをしたみたいで、最近ではランチを一緒に食べる様になったんだ。

 因みに今、佐藤兄弟は生徒から貰った差し入れを持ち合い分けあってるんだよね。

「焼きそばパンか…これを交換してくれよ。」

 お兄さんは焼きそばパンが好きみたいだ。

「嫌だよ。俺も焼きそばパンは好きなんだ。知っているだろう?!」

 佐藤くんも好きだったとは知らなかった。

「これをやるから…。な!頼むよ!!」

 お兄さんが差し出したのはハムと野菜のサンドイッチだ。

「…俺、サンドイッチにはいっているキュウリは嫌いだからいらない。」

 佐藤くんはキュウリが嫌いだったのか!危なかったよ。実は田楽の前にキュウリで大食いなんてどうかという案もでていたんだよ!!ただ生物は事前に保管するのが難しいよねということになって、結局は田楽になったんだ。

 キュウリが大会に採用されていたら佐藤くんの優勝は無かったかも…。

「そうか、それならこれはどうだ!」

 今度は机の上に黒い物体が透明な容器に入れられてだされた。

「海苔巻き?俺、海苔が歯にひっつくのが嫌なんだよね。それに中にキュウリが入っているだろ。」

 そうだよね、キュウリが嫌いって言っているのにこれは無いよね。お兄さん話しはきちんと聞かないといけないよ。

「フフフッ…。中身の具材をよく見てみろ!」

 お兄さんが不適な笑みをもらしながら海苔巻きの中を見せてきた。

「こ、これは!!!」

「新しいだろ!これはトンカツ海苔巻きだ!!お前はトンカツが大好きだろ?それにキュウリは入っていないから安心して良いぞ。」

 こっちの世界では初めてトンカツ海苔巻きを見たよ。前世の世界で初めて見た時は衝撃を受けたもんな…。

 佐藤くんは悩んでいるみたいだよ。トンカツと焼きそばパンは同じくらい好きだったみたいだな。でもこれって…。

「半分ずつは駄目なのですか?」

 どちらも食べたいのなら半分にすれば良いんだよ。

「そうだ!その手があった!!兄さん頼む、半分にしてくれよ。」

「わかった。俺もトンカツ海苔巻きも食べたかったしな。はんぶんにしよう。」

 佐藤兄弟は嬉しそうに半分にした後、すぐに両方とも食べていた。…確かさっきランチ食べ終わってたと思うんだけどね。デザート感覚なのかな?

「お兄さんも太らないんですか?」

「うん?そうだね。特別に運動とかもしていないけど太った事はないかな。」

 羨ましい話だな。俺なんかすぐに太るから困っているのに…。やっぱり太らない家系なんだな。

「こっちだ!部長見つけたぞ。」

 食堂の入口で誰かが大きな声をあげている。

「げ!見つかったか…。すまないがこれで失礼するよ。またな。」

 お兄さんは俺に挨拶をしながら佐藤くんの頭をポンポンと軽く叩いた後に猛スピードでいなくなった。

「あ!逃げるぞー!!確保しろー!!!」

 一人だけではなくて何人かの生徒がお兄さんを追いかけている。何があったんだ?

 あれ?一番後ろにいるのは…。

「大谷くん…。何があったの?」

 息を切らしながら大谷くんがやってきた。

「…ハァハァ…部長どこに行くか言っていた?」

「いや何も聞いていないけど…。」

 大谷くんは軽く舌打ちして悔しそうな顔になった。

「今日がて次回の新聞記事の締め切り…なんだけど部長の記事がまだできていないのに…逃げているんだよ。」

「これ良かったら飲む?」

 俺は大谷くんに水を差し出した。

「ありがとう!」

 大谷くんは一気に水を飲み干した。

「じゃあ、探してくるわ。またね。」

 部長を追いかけて食堂から出ていった。

「兄さん…何をやっているんだか。」

 佐藤くんは呆れながらもアイスを食べている。

 …みんな色々とあるんだね。
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