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58. やってやる!
しおりを挟む少し気になる言葉があったんだけど…。
「佐藤くん…もしかして佐藤くんの家族皆が佐藤くんくらい食べるの?」
小声で話しかけたけどお兄さんに睨まれている。こ、怖い…。
「うん。家族は俺より食べるかも…。」
え?!俺は声に出さず目を見開いて驚いた。
佐藤くんより食べるのか…。大食いは家族全員が大食いの可能性があると聞いた事があったけど、本当なんだな。あれ?…ということは…。お兄さんも…。
「おい、勘太郎聞いていたのか?辞退しろよ。」
佐藤くんは何も反論しないで下を向いてしまっている。も~う、お兄さん邪魔しないで下さいよ!せっかく本人はやる気になっていたのに!
俺の野望が…。
どうしよう、このままだと佐藤くん参加を辞退しちゃうかも…。何か良い案はないかな。
そうだ!
「あの~、すいません。」
俺は佐藤くんのお兄さんに話しかけた。
「何だ?」
「提案なんですが、お兄さんも大食い大会に参加しませんか?」
「「はぁ?!」」
声をあげたのはお兄さんと佐藤くんだった。
「僕は大食い大会の実行委員なんですけど、人数がまだ少ないんですよね。お兄さんも参加していただけると嬉しいかな~って。ヘヘッ…。」
二人は呆気にとられている様子。
「何で私が参加しないといけないんだ。」
はい、予想通りの返答きました。ここからが俺の腕の見せ所だよ。前世で鍛えたサラリーマントークをなめんなよ。
「いや、お話を聞いていたら佐藤くんより食べるのかな?と言う感じでしたので参加してみてはどうかなと思ったのです。」
お兄さんの目元がヒクヒクしている。まだ押しが足りないかな。
「あっ…すいません。でも佐藤くんは訓練して、かなり大食いになっているのでお兄さんは参加しないほうが良いですね。大勢の前で弟に負けるのは恥ずかしいですよね。気がつかずにすいません。」
わざとへらへらと笑って見せた。
「私が弟に負けると…言うのか。」
冷静に見せながらも、声に怒気が含まれている。
かかったな。
「いえ、そんな…。」
俺は挑発するために少し笑いながら言った。
「ふん、良かろう、私も参加してやる。私が弟に負ける訳がない。優勝してみせてやる。勘太郎!お前には負けないからな!」
お兄さんは捨てゼリフを言いながら鼻息荒く去って行った。
「佐藤くん…何かごめんな。お兄さんと競う様なことになっちゃったね。」
俺は頭を掻きながら佐藤くんの方を見て謝った。
「いや良い機会だから勝負するよ!いつも兄貴にはバカにされていたけど今回は絶対に勝ってやる!勝って兄貴を見返してやる!」
漫画でいうなら佐藤くんの後ろに炎が見えるくらいやる気に燃えている。
よしよし…良い感じになってきた。
「うおぉぉぉーーー!!!」
佐藤くんは、止まっていた手を動かし再び食べ始めた。さっきよりスピードがある。あっという間にテーブルに置かれていた全てを食べ終えてしまった。
「す、凄いね。」
「ほぉれはやる!へったいにやってやる!」
また口に頬張りすぎて言葉がハッキリしないけど「俺はやる!絶対にやってやる!」と言っているみたい。
やる気が出たのは良い事だよ。俺は佐藤くんのお兄さんがどれくらいの量を食べるのか知らないからな…不安はある。これで佐藤くんが負けたらきっと落ち込みは凄いだろうな。そうならないようにしないと…。
「ねえ、面白そうな事になってたみたいだけど、何があったの?」
大食い大会の出場者にインタビューしに行っていた大谷くんが席に帰ってきた途端に目を輝かせて俺に何があったのかと聞いている。
「さっきの人は佐藤くんのお兄さんだったんたけど…。」
俺は今までのやり取りを大谷くんに話した。
「くっ…僕としたことが…。そんなスクープを逃すなんて…。いや、待てよ…部長ならいつでもインタビューできるな!よし、明日の1面だ!」
ぶつぶつと一人で話し終わると走ってどこかに行ってしまった。
大谷くんって行動力ありすぎなんだよね。何で龍がついていないのかが不思議だよ。
もしかして、ついているけど姿を見せないようにしているのか?
翡翠が帰って来たら聞いてみよう。
そういえば翡翠は今どこにいるのかな?
仲間の龍を探しに行ってから何日も経っている。
連絡もないしな…。
元気でやっているかな?
「なあ、八岐くん。お~い!」
おっといけない、またボーとしていたよ。
「ごめん、どうかしたの佐藤くん?」
「いや、大会で何を食べるのか決まっているのかなって思ってさ。」
それね。実行委員でも、もめているんだよね。
「それがまだ決まっていないんだよね。」
「そうなんだな…。分かれば対策が練れるかなと思ってたんだけど…。ダメか…。」
佐藤くんっていつもは作戦を練るタイプじゃないのに…。今回の本気度がわかるよ。
「でも、僕も協力するから頑張ろうね!」
「おう!」
さあ、作戦を成功させる為に頑張るぞ!
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