龍神様に頼まれて龍使い見習い始めました

縁 遊

文字の大きさ
上 下
52 / 86

52. 母さんの怒り 〈父視点〉

しおりを挟む


「いや~、まさかこんな事になるなんて思ってなかったよ~。」

 私は今、自分が書いた本にサインを求められている。それを妻が冷めた目で見ているが…どうしてだ?

「ありがとうございました。大事にしますね。」

 サインを書いた本を大事そうに胸に抱きしめて女性は去って行った。

「知花ちゃん…何でそんな冷めた目で見るの?」

 妻の冷たすぎる視線に堪えられず聞いてみた。

「分からないのですか?」

 自分で考えてみたが思い当たらない。知花ちゃんに嫌われる様な事をしていないと思うんだけどな。

 あれかな、知花ちゃんが食べたがっていたケーキを黙って私だけ食べたのがバレてしまったとか?

 それとも、知花ちゃんが大事にしていた本にうっかりして紅茶をかけてしまったことがバレてしまったとか?

 考えてみればわりとあったな…。どれだろうか。

「はぁ~、本当に分かっていないのね。貴方、竜に本を出すことを話したの?」

 そう言えば…まだ話していなかった!

 話すつもりだったんだけどいろいろと忙しくて忘れていたよ。

「思い出したみたいね。本人に了解もなく勝手に本なんか出して…。竜ちゃんに怒られるわよ!」

「いや…わざとではないよ。竜だって分かってくれると思うんだけど。」

 竜は怒らない…よな。

「まったく…。あの本を読んだら貴方も龍のことに詳しいみたいに人は思うわよ。実際は竜ちゃんに聞いた事しか知らないくせに。」

「え…そんなつもりでは書いていないんだけどな…。」

 知花ちゃんがこんなに怒るとは思っていなかった。

「一刻も早く竜に手紙を書きなさい!さもないと…。」

「さもないと…何?」

 どうするつもりだ。

「しばらく実家に帰ります。」

「えええ!!!」

 それは困る!私は知花ちゃんが側にいてくれないと仕事をする気にならないし、姿を見ないと不安になってしまうよ~!

「嫌だ!それは絶対に嫌だ!!」

「それなら今すぐ書きなさい。」

 知花ちゃんがどこからか便箋とペンを出してきた。え?ここはカフェなんだけど…。ここで書くのかい?

「何を驚いているの?書くの書かないの?!」

「書く!書きます!!」

 私は追いたてられるように返事をした。

 ペンを握ったものの何て書こうかな。実は本を出してベストセラーになったんだ。とか?

「貴方…まさか自分が書いた本がベストセラーになった…とか書こうとしていないわよね?」

 知花ちゃん何で分かったの?流石付き合いが長いだけあるよね。

「はぁ~、答えなくても良いわ。今の顔だけで理解できたから。貴方が手紙に書くのは自慢ではなくて謝罪よ!」

 テーブルの上をバンッと大きな音が鳴るくらいに手で叩き私の事を睨んでいる。

「反省しています。すぐに竜に謝罪します。」

 私はこの後知花ちゃんに監視されながら謝罪の手紙を書きました。

 知花ちゃん…これで実家に帰らないよね?


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

旅の道連れ、さようなら【短編】

キョウキョウ
ファンタジー
突然、パーティーからの除名処分を言い渡された。しかし俺には、その言葉がよく理解できなかった。 いつの間に、俺はパーティーの一員に加えられていたのか。

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...