龍神様に頼まれて龍使い見習い始めました

縁 遊

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47. 龍とマッチング

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「龍について…ですか?」

 父さんが本に何を書いたのかが分からないからなぁ。龍について何を書いたのか気になるな。

「八岐はまだ学校に入ってきたばかりだからこの学校に伝わる龍伝説を知らないだろう?」

「龍伝説ですか!?そんなのがあるんですか。」

 もしかして皇帝龍の事なのかな。

「この国に龍が溢れていた時代。この学校にとても優秀な生徒がいた。彼は悩める人達を龍と共に助け、人々から"龍神さまの使い"と言われていたそうだ。ところが国を揺るがす様な天災が起き人々はパニックになりそして龍神様の仕業ではないかと疑い…その"龍神様の使い"と言われていた生徒を殺してしまったんだ。」

 何て事を…。殺さなくても良いじゃないか。


「勿論、天災は龍の仕業ではなかったんだが…。その生徒についていた龍は人間に対して不信感を抱きこの国から去る時にわざと人々に姿を見せてこう言ったらしい『愚かな人間どもめ!我ら龍はこの国から去ることを決めた。これからお前たちは自分の行いをくいあらためるが良い!お前達が変わらない限りこの国は良くならないであろう!覚悟するが良い!』言い終わると龍は姿を消してしまったそうだ。」

 そんな伝説があったのか…。やはり皇帝龍の事みたいだな。

「あの、宿舎の壁に書いてある龍がその時の龍ですか?」

「ああ、あの絵を書いたのはその殺された生徒の親友らしい。殺された生徒から聞いていた特徴を思い出して書いたと聞いている。」

 そうだったんだ。龍神様の使い…。今の俺と似たような感じだよな。

 胸がモヤモヤとする。

 会長は俺に何が聞きたいのだろう?

「それで会長は龍について僕に何を聞きたいのですか?」

「本にはお前が龍と話せると書いてあったがそれは本当なのか?」

 父さん…そんな事を書いたんだ。

「本当です。」

 その時、会長の目がキラリと光った様な気がした。

「そうか!本当なのか!」

 あ、会長のこの反応はダメなやつだ。嫌な予感がしてきました。

「実はな…昔の様にこの学校の生徒全員に龍がついてくれないかと思ってな…。お前ならできるんじゃないか?」

 生徒全員に龍…!?

 会長はそんな事を考えていたのか。
 
 いや、それは俺の目的にも合っているんだけど、いきなり全員は難しいよ。

「え…と、それは僕一人が頑張ってもできないというか…。」

「では、どうすれば良いのだ?」

 どこから話をするべきなんだろう。この場合は最初からなのかな。

「そもそもなんですが…龍は人間があの人についてほしいとお願いしてついてくれるものではありません。」

「え!そうなのか?」

 会長が驚いているところを見ると本には書いて無かったんだな。

「龍は人間が頑張っている姿などを見て、この人間につこうと思って下りてきてくれるのです。」

 会長が張り子の赤べこの様に顔をふっている。

「そうなんだな。では、我々は頑張っている姿を見せれば良いのか?」

「そうですね。そうすれば龍が寄って来やすくなると思います。」

 でも、この国にはあまり龍がいないんだよね。どこからか見ていてくれれば良いけどな。

「会長はなぜ生徒に龍がつけば良いと思ったんですか?」

「それは…俺が昔から祖父から龍が沢山いた時代は人も国も活気がありエネルギーに満ち溢れていたと聞いたんだ。今のこの国…いや人々はお世辞にも活気に溢れているともエネルギッシュとも言えない。せめて少しの変化でも起こすことができないだろうかと考えたんだ。」

「そんな事を考えていたんですね。」

 会長は照れ笑いをしながら頭をかいた。

「そんな時に八岐様の本を読んでコレダ!と思ったんだ。偶然にも息子さんがこの学校に入ってくるらしいと情報を得た時から指折り数えて待っていたんだ。」

 その割には入学して少したってますけどね。

「本当はもっと早くに接触しようとしたのだが周りに逃げられるかもしれないから様子を見ながら行け!と言われてな…。」

 なるほど…。確かに、会長は猪突猛進タイプの様ですからね。いきなり知らない人にお願いされても断っていたかもしれないです。

そんな話を会長と長々としていた時だった。

『面白そうではないか…。私も参加するとしよう。』

 会長の頭の上に赤い龍が姿を見せた。

「あ!会長、会長にも龍がついてくれましたよ。」

 俺が会長の頭上を指差して話すと…。

「な、何!どこ…どこだ!?」

 会長は自分の頭上をキョロキョロと見回している。残念ながら見えないですよ。

「会長は見えないと思います。赤い龍が会長のやることが面白そうだと言ってやってきてくれましたよ。」

「そ、そうか…。」

 会長が嬉しそうに顔をにやつかせている。

『あなたは会長の事を前から見ていたのですか?』

 赤い龍は何となく気配があったんだよね。姿は見せてくれなかったけど。

『ああ、こやつはなかなか面白い男なんだ。熱血漢だが少し天然な所もあってな。見ている分には飽きない男だ。』

『そうなんですね。』

「会長の事を前から気になって見ていたそうです。」

 会長はずっと俺が何かを言うのを待っている。

 この調子で全生徒龍とマッチング計画が上手くいけば良いな。








 
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