龍神様に頼まれて龍使い見習い始めました

縁 遊

文字の大きさ
上 下
45 / 86

45. 指導係は誰だ

しおりを挟む


 なんか…ただのジャンケン大会を画期的だ!と言われてしまうと申し訳ない様な気がして居たたまれないんですけど…と思っていたらペリー王子の発言だよ。確かに子供だましなんだよ。だけど…。

「では何か他にありますか?」

 冷ややかな笑顔で一条先輩が聞いている。

「だから武術…」

「それは却下ですと申し上げましたよね。」

 一条先輩がペリー王子の発言の途中で切ってしまった。

「それ以外で考えて下さいね。」

 無言の圧力とはこういう事なんだ…。怖い。

「ジャンケン大会…俺は良いと思うがな。」

 会長がボソッと発言したのを皆は聞き逃さなかった。

「「「「「同意します。」」」」」

 先輩方は相変わらず誰ひとりはずすことなく声を揃えてきた。

「多数決をとるまでもないみたいですね。じゃあ、ジャンケン大会で決定です。因みに発案者の八岐くんは準備を手伝って下さいね。」

 あ、これは拒否権ないやつですね。

「はい。」

「チッ!」

 はい?今、隣から舌打ちが聞こえたような…?

 ガタンと凄い音をたてて椅子から立ち上がりペリー王子が部屋から出ていった。

「アイツは礼儀を知らんな。あれで隣国は大丈夫なのか?指導が必要だろあれは。なぁ、帝。」

 副会長に同意を求めますか。

「いや~、俺は遠慮するよ。指導係は一条にしてください。」

 副会長はさりげなく生け贄に一条先輩を出してスルーしようとしていますね。一条先輩の顔が凄いことになっていますけど…大丈夫ですか?

「フフッ…僕にまた押し付けるのかな?」

 一条先輩は副会長の帝先輩と会長の間に入って両人に睨みを効かせている。

「前も僕ひとりに全てを押し付けて逃げましたよね。あの時に言いましたよね…今度はありませんよって。覚えてますか?」

 一条先輩が二人の肩をポンポンと叩きながら話しているが、気迫が凄すぎて誰も目線を合わせない。

 先輩方がゆっくりと扉に向かい音をたてずに部屋から出ていっている。ズルい!!俺は扉から遠い位置にいて逃げ遅れてしまった。

 結局部屋に残っているのは会長と副会長、一条先輩と俺だけになってしまった。

 俺もここから抜けたいのですが…。

「じゃあ、同級生ということで八岐くんにお願いしたら良いんじゃないか。」

 帝先輩!何を勝手な事を言っているんですか!巻き込まれ事故もいい加減にして下さいよ!

「先輩、冗談ですよね?僕には荷が重いですよ。」

 俺があの王子の指導係なんてとんでもないよ!毎日胃が痛くなるのが目に見える。それとも俺の成長の為に必要な事だと龍に導かれているのか?だとしてもこれは勘弁してください。

 先輩方は三人でヒソヒソと話し合っている。嫌な予感しかしないんだけど…。

「八岐くん、あの王子が一年くらいで更正できると思わないよね?それだと我々ニ・三年生には時間が足りないだろう。その点、八岐くんはたっぷり時間があるじゃないか。適任だよね。」

 …一条先輩が有無を言わせない迫力のオーラをまとい、笑顔なんだけど見つめられると冷や汗が止まらないこの状況で誰が断れるのだろうか。

「…そ、そうですね。」

 先輩は俺の両肩をしっかりと掴み離そうとしない。そりゃそうだよね、俺が断れば先輩が指導係になりますからね。

「良かった、理解してくれるんだね。八岐くんが指導してくれるなら安心だよ。」

「「だな。」」

 先輩方は頷きながらこちらを見ている。

「これで気持ち良く終われそうだな。」

 会長はそうですよね。ご自分は何もしていませんから。

「俺も安心した。」

 副会長とは名ばかりではないですか?帝先輩は一体何をしている人なんですか?

「そうだね。じゃあ、八岐くん帰って良いよ~。また頼むね。」

 責任から解放された一条先輩の爽やかなこと…。

「はい…。失礼しました。」

 やっと部屋から出ることができたと思ったら何と先に出ていった先輩方が外で待っていた。

「ありがとう!」

「済まない!」

「頼んだよ!」

「君も大変だな…。」

「かわいそうに…。」

 先輩か代わる代わる俺の肩を叩いて去って行った。

 何なんだ…。

 やっと一人になれてホッとしていると、また翡翠が姿を現した。

『疲れてるな。』

 俺は今までのことがあるから周りを見回して誰も居ないことを確かめた。

『当たり前だよ。見ていたんだろ?あれはないよ。』

『でもあの王子は面白そうだ。』

『はあ?アイツが?』

 アイツのどこが面白そうなんだよ!ただの嫌な奴にしか思わないけどな。

『アイツ…姿を隠していたけど、黒龍付きだぞ。』

『え!黒龍!?あの王子に龍がついているのか?』

 夢や希望みたいな明るい要素を全然感じませんでしたけど?

『訳ありなのか?』

『お前が指導係になったんだからいろいろと分かるんじゃないか?』

『そうだけど…。』

 これは思わぬ展開になりそうな予感だ。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

旅の道連れ、さようなら【短編】

キョウキョウ
ファンタジー
突然、パーティーからの除名処分を言い渡された。しかし俺には、その言葉がよく理解できなかった。 いつの間に、俺はパーティーの一員に加えられていたのか。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

いつだって二番目。こんな自分とさよならします!

椿蛍
恋愛
小説『二番目の姫』の中に転生した私。 ヒロインは第二王女として生まれ、いつも脇役の二番目にされてしまう運命にある。 ヒロインは婚約者から嫌われ、両親からは差別され、周囲も冷たい。 嫉妬したヒロインは暴走し、ラストは『お姉様……。私を救ってくれてありがとう』ガクッ……で終わるお話だ。  そんなヒロインはちょっとね……って、私が転生したのは二番目の姫!? 小説どおり、私はいつも『二番目』扱い。 いつも第一王女の姉が優先される日々。 そして、待ち受ける死。 ――この運命、私は変えられるの? ※表紙イラストは作成者様からお借りしてます。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...