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45. 指導係は誰だ
しおりを挟むなんか…ただのジャンケン大会を画期的だ!と言われてしまうと申し訳ない様な気がして居たたまれないんですけど…と思っていたらペリー王子の発言だよ。確かに子供だましなんだよ。だけど…。
「では何か他にありますか?」
冷ややかな笑顔で一条先輩が聞いている。
「だから武術…」
「それは却下ですと申し上げましたよね。」
一条先輩がペリー王子の発言の途中で切ってしまった。
「それ以外で考えて下さいね。」
無言の圧力とはこういう事なんだ…。怖い。
「ジャンケン大会…俺は良いと思うがな。」
会長がボソッと発言したのを皆は聞き逃さなかった。
「「「「「同意します。」」」」」
先輩方は相変わらず誰ひとりはずすことなく声を揃えてきた。
「多数決をとるまでもないみたいですね。じゃあ、ジャンケン大会で決定です。因みに発案者の八岐くんは準備を手伝って下さいね。」
あ、これは拒否権ないやつですね。
「はい。」
「チッ!」
はい?今、隣から舌打ちが聞こえたような…?
ガタンと凄い音をたてて椅子から立ち上がりペリー王子が部屋から出ていった。
「アイツは礼儀を知らんな。あれで隣国は大丈夫なのか?指導が必要だろあれは。なぁ、帝。」
副会長に同意を求めますか。
「いや~、俺は遠慮するよ。指導係は一条にしてください。」
副会長はさりげなく生け贄に一条先輩を出してスルーしようとしていますね。一条先輩の顔が凄いことになっていますけど…大丈夫ですか?
「フフッ…僕にまた押し付けるのかな?」
一条先輩は副会長の帝先輩と会長の間に入って両人に睨みを効かせている。
「前も僕ひとりに全てを押し付けて逃げましたよね。あの時に言いましたよね…今度はありませんよって。覚えてますか?」
一条先輩が二人の肩をポンポンと叩きながら話しているが、気迫が凄すぎて誰も目線を合わせない。
先輩方がゆっくりと扉に向かい音をたてずに部屋から出ていっている。ズルい!!俺は扉から遠い位置にいて逃げ遅れてしまった。
結局部屋に残っているのは会長と副会長、一条先輩と俺だけになってしまった。
俺もここから抜けたいのですが…。
「じゃあ、同級生ということで八岐くんにお願いしたら良いんじゃないか。」
帝先輩!何を勝手な事を言っているんですか!巻き込まれ事故もいい加減にして下さいよ!
「先輩、冗談ですよね?僕には荷が重いですよ。」
俺があの王子の指導係なんてとんでもないよ!毎日胃が痛くなるのが目に見える。それとも俺の成長の為に必要な事だと龍に導かれているのか?だとしてもこれは勘弁してください。
先輩方は三人でヒソヒソと話し合っている。嫌な予感しかしないんだけど…。
「八岐くん、あの王子が一年くらいで更正できると思わないよね?それだと我々ニ・三年生には時間が足りないだろう。その点、八岐くんはたっぷり時間があるじゃないか。適任だよね。」
…一条先輩が有無を言わせない迫力のオーラをまとい、笑顔なんだけど見つめられると冷や汗が止まらないこの状況で誰が断れるのだろうか。
「…そ、そうですね。」
先輩は俺の両肩をしっかりと掴み離そうとしない。そりゃそうだよね、俺が断れば先輩が指導係になりますからね。
「良かった、理解してくれるんだね。八岐くんが指導してくれるなら安心だよ。」
「「だな。」」
先輩方は頷きながらこちらを見ている。
「これで気持ち良く終われそうだな。」
会長はそうですよね。ご自分は何もしていませんから。
「俺も安心した。」
副会長とは名ばかりではないですか?帝先輩は一体何をしている人なんですか?
「そうだね。じゃあ、八岐くん帰って良いよ~。また頼むね。」
責任から解放された一条先輩の爽やかなこと…。
「はい…。失礼しました。」
やっと部屋から出ることができたと思ったら何と先に出ていった先輩方が外で待っていた。
「ありがとう!」
「済まない!」
「頼んだよ!」
「君も大変だな…。」
「かわいそうに…。」
先輩か代わる代わる俺の肩を叩いて去って行った。
何なんだ…。
やっと一人になれてホッとしていると、また翡翠が姿を現した。
『疲れてるな。』
俺は今までのことがあるから周りを見回して誰も居ないことを確かめた。
『当たり前だよ。見ていたんだろ?あれはないよ。』
『でもあの王子は面白そうだ。』
『はあ?アイツが?』
アイツのどこが面白そうなんだよ!ただの嫌な奴にしか思わないけどな。
『アイツ…姿を隠していたけど、黒龍付きだぞ。』
『え!黒龍!?あの王子に龍がついているのか?』
夢や希望みたいな明るい要素を全然感じませんでしたけど?
『訳ありなのか?』
『お前が指導係になったんだからいろいろと分かるんじゃないか?』
『そうだけど…。』
これは思わぬ展開になりそうな予感だ。
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