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43. 自己紹介
しおりを挟む「え…王子…。」
「あれ?君は八岐くんだよね。」
扉から顔を覗かせていたのは一条先輩だった。
「どうぞ中に入って下さい。」
一条先輩は扉を全開にした。中には何人かの人が座っているのが確認できた。
「ふん!」
王子は俺を無視するように中に入っていった。
無いな~。話を聞いた時は賢い王子かと思ったけど、あれは誰かに言われて無理やりに留学させられたって感じじゃないか。
「ほら、八岐くんも早く入って。」
「あっ、すいません。失礼します。」
俺はサラリーマンの癖全開に頭をペコペコと下げながら入室した。
席は最悪だけど王子の隣。同学年だから仕方がないけどね。
「これで全員揃ったのか?」
テーブルの所謂、お誕生日席と言われる場所に座っている人が数を数えながら一条先輩にきいている。
「まだみたいですよ会長。」
あの人が生徒会長か。金色の髪に金色の瞳…まるで獅子のような風貌の人だな。勇ましい感じがする。
「アイツがまだか…。」
会長は大きなためいきをついている。
「そうみたいですね…。」
一条先輩は苦笑いしながら返答しているけど、いつもの事みたいな感じがするな。アイツって誰なんだろう?
その時扉が大きい音をたてて開いた。
「すまん!遅れた!」
入ってきたのは180センチ越えの大きな男性。筋肉もムキムキだな。紫色の髪と紫色の瞳をしている。あれ?この人って…どこかで見たような。
「今日は何をしていたんだ?」
今日はと聞かれている時点で遅刻常習犯だと想像できる。
「え?今日は来る途中でこけてケガをしている奴がいたから保健室まで連れていっていたら遅くなった。ガハハハ…すまん、すまん。」
豪快な笑い方だな。
「お前は…。」
会長が頭を抱えている。
「これで全員揃いましたね。では始めましょうか。会長、宜しくお願いします。」
一条先輩はマイペースだな。
「これより新入生歓迎会についての会議を行なう。初めての人もいるので自己紹介からだ。」
「「「「「はい!」」」」」
統率がとれているのか声がピッタリと合っている。軍隊みたいだな。
「まずは俺だな。生徒会長の伊達 吉宗(だて よしむね)だ。何かあれば俺の所に相談に来てくれ。」
「「「「「はい!」」」」」
「次は副会長お願いします。」
あれ?一条先輩は副会長ではないんだ。
「面倒臭いからパスで…。」
さっきの遅刻してきた人が副会長なのか?!
「帝!お前はいい加減にしろよ!早くやれ!」
帝…あっ!思い出した、この人初日に会った帝先輩だよ!
「はいはい。帝 政宗です。」
だるそうに名前だけ言って終わっちゃった。何でこの人が副会長なんだ?
「はい、次は僕、二年生の一条 義経です。書記をしています。因みに帝くんも二年生だよ。」
一条先輩は相変わらずにこやかな笑顔で挨拶をしている。さっきまでの空気が変化したよ。
挨拶が次々と終わり残すは隣にいる嫌な感じの王子と俺だけになった。
この場合はやっぱり身分が高い王子から自己紹介をするべき?それとも最後を王子にしてもらった方が良いのかな?
「じゃあ、次は一年生の自己紹介をお願いします。え~と、どっちからしますか?どっちからでも良いですよ。」
一条先輩そこは決めてほしかった。俺は王子の方をチラッと見たけど王子は立ち上がりそうにない。これは俺からした方が良さそうだな。
「皆さん初めまして、一年生の八岐 竜です。色々と分からない事だらけですので先輩方に教えて頂けると助かります。宜しくお願いします。」
こういう挨拶は前世で何回もしているから定型文みたいなのを覚えているんだよな~。最後はもちろん天使の笑顔と呼ばれるスマイルを見せる事を忘れてはいないよ。
「アイツが噂の八岐くんか…。可愛いじゃないか…。」
「誰だよいかつい感じの男だなんて言っていた奴は…。」
「本当に噂の八岐なのか?同姓同名とか?」
何だか先輩方が騒がしいな。何でだ?
「はい、皆さん静粛に!まだ自己紹介が終わっていませんよ。」
一条先輩の鶴の一声でざわついていたのが静かになって王子に注目が集まった。
「…ペリーだ。宜しく頼む。」
むすっとした表情でその挨拶は無いよね~。王子はどんな教育をされてきたんだよ。先輩方も固まっているぞ。
「あれは例の隣国の王子か…。」
「ああ、名前だけは知っていたが…噂通りの人だな。」
「何でも強制されて来たらしいぞ。隣国は神の導きをしていないからな。」
先輩方のヒソヒソと話す声が聞こえてくる。
隣国は神の導きをしていないのか…。知らなかった。じゃあ、この王子は誰かに職業を決められてここに来たのか?確かにいろいろと問題ありそうな人だけどな。
「では、全員自己紹介が終わりましたので本日の議題について話し合いたいと思います。では会長、宜しくお願いします。」
「分かった。新入生歓迎会についてだが今年はいつもと違う催しにしたいと考えている。」
「「「「「え?!」」」」」
先輩方が驚いている。これって毎年同じことをしてきていたのかな。佐藤くんは美味しい物を食べるのを楽しみにしていたのに…どうなるんだろう。
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