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40. 初日
しおりを挟むキーンコーン。学校の授業開始のベルの音がなった。
教室のドアから厳つい感じの体格の良い男性が入ってきた。
教室は静まり返りその男性を目で追っている。
「皆、席に着いているな。」
低音のお腹に響く様なバリトンボイスだ。
教卓の所まで来ると男性は止まり、周りを見渡した。
「ふむ、今年は大人しそうな生徒が多いな。私は君達の担任の織田 慶二(おだ けいじ)だ。」
この人が担任…これから大丈夫かな?怖そうだよ。俺のイメージだともっとひ弱そうな優しい感じの線の細い男性かと思っていたよ。
だけど…。
『アイツは凄い情熱をもった教師みたいだな。』
翡翠が俺の机の上に姿を見せた。
『そうだな。凄い朱色の大きな龍がついているからね』
前にも言ったけど龍の色には色んな意味があって龍の性格も分かるんだ。朱色は情熱家。その龍がついている人間だから性格も似ていると考えられる。
悪い人ではなさそうだけどね。
『ちょっと話してくるわ。』
『へ?』
翡翠はフラッと飛び上がり朱色の龍に近づいていった。翡翠って本当に自由龍だな。
翡翠は朱色の龍と何かを話し込んでいるとと思ったら急に姿を消した。朱色の龍と一緒に…。どこに行ったんだ?
「おい!八岐、聞いているのか?!」
担任の織田先生に名前を呼ばれてハッとした。どうやら、名前を呼ばれていたらしい。
「へ?あ、すいません。」
「初日から寝ぼけているのか?しっかりしろよ!」
「…はい。」
クラスメイトから笑われながら俺は先生に謝った。こんな風に目立ちたくは無かったんだけどな。
恥ずかしいよ…。
顔を上げることもできず座っていると、隣の席に座っている子から話しかけられた。
「八岐くんは面白いんだな。てっきり真面目な奴かと思ってたよ。」
顔を上げて横を見ると茶色の髪に緑の瞳、顔にソバカスがある少しヤンチャな感じの男の子だった。
いや、俺は真面目だと思うけど…。これって反論しない方が良いよね。
目が合うとニコッと笑顔になって握手を求められた。
「俺は佐藤 勘太郎(さとう かんたろう)だ。宜しくな!」
「あ、僕は八岐 竜です。宜しくね。」
取り敢えずは友達一人できたかな?朝は挨拶だけで終わったからな。
「あの先生は怖そうだよな…。」
小声で佐藤くんが話しかけてくる。
「そうだね…。」
やはり俺だけではなくて皆がそう思うんだな。
因みに数えたらクラスは15人いた。残念なのは女子が一人もいないことかな…。女の子みたいな顔をした男の子はいるみたいだけどね。
まあ、婚約者がいる俺には女の子がいても関係ないか。
そう言えばあれから瑠璃姫と手紙のやり取りをしているんだ。瑠璃姫は学校に行くことはしないで家庭教師から勉強を教えられているらしい。だから学校生活に憧れていると書いていたな。王族もいろいろと自由にならなくて大変だよね。
今度会う時に学校の話を聞かせてほしいとも書いてあったけど、今度はいつ会えるのやら…。
『おい、竜。』
翡翠が帰ってきた。朱色の龍と何を話していたのか聞かないとな。
『翡翠お帰り。何を話していたの?』
『部屋に帰ってから教えてやるよ。』
『え?何でだよ。今教えてよ。』
翡翠はニヤリと笑って姿を消した。
おい!こら翡翠!!何姿を消してるんだよ!!!
いつも急に現れて急に消えるんだから、本当に勝手だよな。
「八岐!また聞いてないな!」
しまった!また織田先生に怒られたよ。
「すいません。」
だって今日は初日だから学校の歴史とこれからの説明をするだけの日だから聞かなくても分かっているんだよね。
先生には悪いけど…。
「お前は…放課後居残りだな。」
え!?初日から?
「そうだ…お前が学級委員長になれ!それなら俺の所に報告に来ることが多いからな。」
クラスの皆が拍手している。これって賛成ってこと?隣の佐藤くんまで拍手してるよ。
今って、委員を決めてたんだ…。話を聞いておくべきだったな。
「皆が拍手しているから、決まりだな。よろしく頼むぞ委員長。」
断れないのか…。
「…はい。」
またまた思わぬ事になってしまった。所構わず龍と話すのを止めないといけないな。
反省…。
結局、授業が全て終わった後、職員室でたっぷり織田先生にお説教されて初日は終わりました。
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