龍神様に頼まれて龍使い見習い始めました

縁 遊

文字の大きさ
上 下
40 / 86

40. 初日

しおりを挟む


 キーンコーン。学校の授業開始のベルの音がなった。

 教室のドアから厳つい感じの体格の良い男性が入ってきた。

 教室は静まり返りその男性を目で追っている。

「皆、席に着いているな。」

 低音のお腹に響く様なバリトンボイスだ。

 教卓の所まで来ると男性は止まり、周りを見渡した。

「ふむ、今年は大人しそうな生徒が多いな。私は君達の担任の織田 慶二(おだ けいじ)だ。」

 この人が担任…これから大丈夫かな?怖そうだよ。俺のイメージだともっとひ弱そうな優しい感じの線の細い男性かと思っていたよ。

 だけど…。

『アイツは凄い情熱をもった教師みたいだな。』

 翡翠が俺の机の上に姿を見せた。

『そうだな。凄い朱色の大きな龍がついているからね』

 前にも言ったけど龍の色には色んな意味があって龍の性格も分かるんだ。朱色は情熱家。その龍がついている人間だから性格も似ていると考えられる。

 悪い人ではなさそうだけどね。

『ちょっと話してくるわ。』

『へ?』

 翡翠はフラッと飛び上がり朱色の龍に近づいていった。翡翠って本当に自由龍だな。

 翡翠は朱色の龍と何かを話し込んでいるとと思ったら急に姿を消した。朱色の龍と一緒に…。どこに行ったんだ?

「おい!八岐、聞いているのか?!」

 担任の織田先生に名前を呼ばれてハッとした。どうやら、名前を呼ばれていたらしい。

「へ?あ、すいません。」

「初日から寝ぼけているのか?しっかりしろよ!」

「…はい。」

 クラスメイトから笑われながら俺は先生に謝った。こんな風に目立ちたくは無かったんだけどな。

 恥ずかしいよ…。

 顔を上げることもできず座っていると、隣の席に座っている子から話しかけられた。

「八岐くんは面白いんだな。てっきり真面目な奴かと思ってたよ。」

 顔を上げて横を見ると茶色の髪に緑の瞳、顔にソバカスがある少しヤンチャな感じの男の子だった。

 いや、俺は真面目だと思うけど…。これって反論しない方が良いよね。

 目が合うとニコッと笑顔になって握手を求められた。

「俺は佐藤 勘太郎(さとう かんたろう)だ。宜しくな!」

「あ、僕は八岐 竜です。宜しくね。」

 取り敢えずは友達一人できたかな?朝は挨拶だけで終わったからな。

「あの先生は怖そうだよな…。」

 小声で佐藤くんが話しかけてくる。

「そうだね…。」

 やはり俺だけではなくて皆がそう思うんだな。

 因みに数えたらクラスは15人いた。残念なのは女子が一人もいないことかな…。女の子みたいな顔をした男の子はいるみたいだけどね。

 まあ、婚約者がいる俺には女の子がいても関係ないか。

 そう言えばあれから瑠璃姫と手紙のやり取りをしているんだ。瑠璃姫は学校に行くことはしないで家庭教師から勉強を教えられているらしい。だから学校生活に憧れていると書いていたな。王族もいろいろと自由にならなくて大変だよね。

 今度会う時に学校の話を聞かせてほしいとも書いてあったけど、今度はいつ会えるのやら…。

『おい、竜。』

 翡翠が帰ってきた。朱色の龍と何を話していたのか聞かないとな。

『翡翠お帰り。何を話していたの?』

『部屋に帰ってから教えてやるよ。』

『え?何でだよ。今教えてよ。』

 翡翠はニヤリと笑って姿を消した。

 おい!こら翡翠!!何姿を消してるんだよ!!!

 いつも急に現れて急に消えるんだから、本当に勝手だよな。

「八岐!また聞いてないな!」

 しまった!また織田先生に怒られたよ。

「すいません。」

 だって今日は初日だから学校の歴史とこれからの説明をするだけの日だから聞かなくても分かっているんだよね。

 先生には悪いけど…。

「お前は…放課後居残りだな。」

 え!?初日から?

「そうだ…お前が学級委員長になれ!それなら俺の所に報告に来ることが多いからな。」

 クラスの皆が拍手している。これって賛成ってこと?隣の佐藤くんまで拍手してるよ。

 今って、委員を決めてたんだ…。話を聞いておくべきだったな。

「皆が拍手しているから、決まりだな。よろしく頼むぞ委員長。」

 断れないのか…。

「…はい。」

 またまた思わぬ事になってしまった。所構わず龍と話すのを止めないといけないな。

 反省…。

 結局、授業が全て終わった後、職員室でたっぷり織田先生にお説教されて初日は終わりました。



 

 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

旅の道連れ、さようなら【短編】

キョウキョウ
ファンタジー
突然、パーティーからの除名処分を言い渡された。しかし俺には、その言葉がよく理解できなかった。 いつの間に、俺はパーティーの一員に加えられていたのか。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

いつだって二番目。こんな自分とさよならします!

椿蛍
恋愛
小説『二番目の姫』の中に転生した私。 ヒロインは第二王女として生まれ、いつも脇役の二番目にされてしまう運命にある。 ヒロインは婚約者から嫌われ、両親からは差別され、周囲も冷たい。 嫉妬したヒロインは暴走し、ラストは『お姉様……。私を救ってくれてありがとう』ガクッ……で終わるお話だ。  そんなヒロインはちょっとね……って、私が転生したのは二番目の姫!? 小説どおり、私はいつも『二番目』扱い。 いつも第一王女の姉が優先される日々。 そして、待ち受ける死。 ――この運命、私は変えられるの? ※表紙イラストは作成者様からお借りしてます。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...