龍神様に頼まれて龍使い見習い始めました

縁 遊

文字の大きさ
上 下
38 / 86

38. 皇帝龍

しおりを挟む


『消えた…って死んだの?』

 龍って寿命あるの?何万年と生きるみたいな話をしてなかった?

『死んだわけではなく、消えたんだ。』

 死んでいないのに消えた?

『失踪したって事なのか?』

『ああ、ある日突然居なくなったんだ。』

 翡翠は俺の方を見ずにずっと龍の絵を見て話している。知り合いなのか?

『居なくなったって…じゃあ、ついていた人間はどうなったの?共に消えたのか?』

『…殺されたらしい。』

『え…。何で…。』

 こんな凄い龍がついていたくらいの人間なんだから悪い人ではないと思うけど、違うのか。

『なぜ殺されたのか分からないんだ。アイツは罠に嵌まったと言っていたけどな…。』

 人間は時に私欲で罪もない人間を貶めることをしたりするからな。誰かの陰謀に嵌められたのかもしれない。

『アイツが消えた事で他の龍達も次々とこの国から消えたんだ。』

 この国に龍が少ない理由はそれなのか?!

『それまでは沢山居たってこと?』

『そうだ。この国の人間も夢や希望を持つ者が多かった。しかし今は…。』

 最後は濁すのか…。言いたいことは何となくだが理解できる。

 真留さん達に出会った時に感じたんだけど、この国の人達は日々の生活に疲れていて夢や希望を抱いていない人間が多い。言い換えれば暮らすのに精一杯ということかな。

 真留さんの場合は虐げられた生活を長い間していたせいかなと考えていたけど、どうやらこの国全体がそんな感じなんだね。

 前世の俺もそうだったかな…。ブラック企業で働いて毎日クタクタで仕事しかしない生活をしていたからな。夢や希望なんて考えた事がなかったかも。

 あの時の俺と同じ様な人間が溢れているのか…。

 駄目だ!それでは俺とじいちゃんが会えるのがいつになるか分からないじゃないか!

 そうだよ、俺はこの国の人達の意識を変えて龍を増やすために異世界転生したんだ。

 その為に学校にも来たんだから、早くじいちゃんに会える様に頑張らないとな。

「新入生かな?」

 俺が皇帝龍の絵の前で翡翠と話していると後ろから誰かに声をかけられた。振り返ると銀色の髪の毛にブルーの瞳をした美少年が立っていた。

「はい。一年生の八岐 竜と言います。よろしくお願いします。」

 最初は挨拶が肝心だと前世でじいちゃんに教わっていた俺は反射的に大きな声で挨拶をしていた。

「元気が良いね。僕は2年生の一条 義経(いちじょう よしつね)だよ。こちらこそよろしくね。良かったら部屋まで案内するよ。」

 俺も人の事を言えないと思うが、一条 義経…凄い名前だな。見た目は女性的なのに名前は男性的というミスマッチな感じがする。

 でも、良い人だな。

「良いんですか。ありがとうございます。」

「じゃあ、僕についてきてね。」

「はい。」

 俺は一条先輩の後について行った。歩きながら教えてもらったんだが学年によって階数が違うらしい。因みに一年生は一階らしい。学年が上がると階数も上に上がるらしい。

「この学校は他の学校と比べて人数は少ないからね。すぐにみんなの顔が覚えられると思うよ。」

「そんなに少ないんですか?」

 この世界には前の世界の様に小学校とかがない。分かりやすく例えるなら専門学校みたいなものしかないんだ。だけどその種類が多いんだよ。

 予想はしていたけど、やはり少ないんだな…。

「そうだね。他の学校は全校生徒数が300だけどここは半分くらいかな。まあ、通う年数も少ないからね。」

 そうなんだよ。この世界の学校は年数もバラバラなのに驚いたんだよね。俺の通う神官の学校は3年なんだけど、三つ子の姉さんの通う学校なんかは5年も通うらしい。

 本当にこの国のシステムは分かりにくい。

「さあ着いたよ。八岐くんの部屋はここだよ。」

 なぜ俺の部屋が分かるのか不思議だと思っていたけど、簡単な事だった。ドアにネームプレートがつけられていたからね。名前さえ分かれば案内できるということが。

「ありがとうございました。」

 俺は一条先輩に頭を下げてお礼を言った。

「どういたしまして。じゃあね。」

 部屋に入るとベッドと机と椅子だけが置いてあるシンプルな部屋だった。広さは10畳くらいかな。

 一人部屋なのは嬉しいな。

 俺はベッドの上に寝転がった。

「ふう~、やっとここまで来たんだな。」

 それにしても翡翠から聞いた皇帝龍の話が気になるな。

 死んだわけではないのならいつかこの国に帰って来てくれるのだろうか…。

 だけど共に成長してきた人間が殺された事でこの国の人間に対して良い印象は無いよな。何年くらい一緒に過ごしていたんだろう。

 俺と翡翠はまだ出会ったばかりだけど、それでもいなくなると思うと寂しいからな…。何十年と一緒に過ごしていたのならもっと辛いだろうな。

 学校にいる間に殺された皇帝龍の相棒の人間についても調べてみよう。この国からなぜ龍が離れていったのかが分かるだろう。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

旅の道連れ、さようなら【短編】

キョウキョウ
ファンタジー
突然、パーティーからの除名処分を言い渡された。しかし俺には、その言葉がよく理解できなかった。 いつの間に、俺はパーティーの一員に加えられていたのか。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

いつだって二番目。こんな自分とさよならします!

椿蛍
恋愛
小説『二番目の姫』の中に転生した私。 ヒロインは第二王女として生まれ、いつも脇役の二番目にされてしまう運命にある。 ヒロインは婚約者から嫌われ、両親からは差別され、周囲も冷たい。 嫉妬したヒロインは暴走し、ラストは『お姉様……。私を救ってくれてありがとう』ガクッ……で終わるお話だ。  そんなヒロインはちょっとね……って、私が転生したのは二番目の姫!? 小説どおり、私はいつも『二番目』扱い。 いつも第一王女の姉が優先される日々。 そして、待ち受ける死。 ――この運命、私は変えられるの? ※表紙イラストは作成者様からお借りしてます。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...