37 / 86
37. 学校に到着
しおりを挟む「竜…いつでも帰って来ていいからな。」
いや、ダメでしょ父さん。
「竜ちゃん…貴方なら大丈夫よ。頑張ってきなさい。」
やっぱり父さんより母さんの方がしっかりしてるんじゃないか?見た目は逆だけどね。
「竜…官僚の学校に来たくなったらいつでも歓迎するわよ。」
忙しいのに見送りに来てくれたんだね桃花姉さん。
「竜…衣装は私が作っておくからね。」
菊花姉さん、制服があるから大丈夫だよ。
「「「竜ちゃん~!!!」」」
三つ子の姉さん達…そんなに号泣しなくても。それに姉さん達も学校に行くんだよね?
「姉さん達、また休みには帰って来ますから…。」
三つ子の姉さん達に抱きつかれて俺の制服は涙と鼻水らしきもので濡れている。
菊花姉さんがどこからか新しい制服を出してきて俺に渡してきた。一体どこにしまってたの?
「ありがとう菊花姉さん。」
俺は制服を着替えて家族に挨拶をしようと顔を見たら…なんだか俺もじんわりと胸が熱くなってきた。
「…頑張ってきます。」
気のきいたことも言えず、泣きそうな声を堪えた。
考えてみれば前世では家族の交流はほとんど無かった。俺にとっては初めての温かい大家族との生活。初めは戸惑いもしたものの、いつの間にかすっかり慣れてしまっていたんだなと実感した。
以前の俺なら一人になることに寂しさなんて感じなかったかもしれない。だけど今は家族の温かみをしってしまった。
俺は泣きそうになるのを堪えて馬車に乗った。学校までは馬車で1日くらいかかるらしい。
馬車に乗ると駄目だった。
涙が溢れてしまって恥ずかしいから窓から顔を出さずに手だけを出して家族に向けて手を振った。
「行って…きます。」
「身体に気を付けるのよ~!」
母さんの声が聞こえてくる。
俺は窓から出していた手を思い切り振った。
こんなことになるとは想像していなかったな…。
俺は暫く馬車の中で泣いていた。
見慣れた景色から見慣れない景色に変わった頃、やっと涙も止まってこれからの事を考えていた。
これからの学校生活は俺にとっては大きな賭けに近い。神官の学校と言うだけで詳しい学校の中身は調べても分からなかったんだ。
わざと隠しているのか、それとも神様の事を学ぶ学校と分かれば充分だと思っているのか…。
まあ、王様に行けと言われた時点で拒否はできないだろうけどね。いろいろと考えてしまうよ。
途中の町で一泊して2日かけて学校に到着した。
「凄いな…。」
見た目は大きな教会にしか見えない建物だ。俺の知っている範囲で言うならヨーロッパに建っている教会かな。しかもステンドグラスがふんだんに使用されている。
贅沢だな…。って言うかこの国の建物は統一感が無いよな。お城は日本風だし、学校はヨーロッパ風?
この国の人は自由人なのか?
俺は学校を確認した後に寮を探した。学校の裏手にあると聞いていたからだ。
馬車を降りてお礼を言った。馬車が見えなくなるまで見送ってから学校の裏手に回ると…。
「何だ…これ…。」
目の前に見えた建物は、日本風でもヨーロッパ風でもなく、中華風…。
朱塗りの豪華な建物に提灯…。
おいおい…。誰の趣味だよ。
あっ、でも龍の絵がある。大きな壁に金色で描かれた大きな龍が目に入った。
「カッコいい…。」
『これは昔ここに住んでいた龍だな。』
翡翠が龍の絵の前に現れてまじまじと絵を見ている。
『そうなの?』
『昔はこの国にも沢山の龍が住んでいたんだ。その中でも皇帝と言われていた奴だな。』
皇帝…。名前だけでも凄いと分かる。
『この辺で知らない龍はいなかったと思う。』
『その龍は今はどうしているの?』
まだ姿を見たことが無いけど?
『…消えた。』
『消えた?』
え?どういう事…。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

旅の道連れ、さようなら【短編】
キョウキョウ
ファンタジー
突然、パーティーからの除名処分を言い渡された。しかし俺には、その言葉がよく理解できなかった。
いつの間に、俺はパーティーの一員に加えられていたのか。


いつだって二番目。こんな自分とさよならします!
椿蛍
恋愛
小説『二番目の姫』の中に転生した私。
ヒロインは第二王女として生まれ、いつも脇役の二番目にされてしまう運命にある。
ヒロインは婚約者から嫌われ、両親からは差別され、周囲も冷たい。
嫉妬したヒロインは暴走し、ラストは『お姉様……。私を救ってくれてありがとう』ガクッ……で終わるお話だ。
そんなヒロインはちょっとね……って、私が転生したのは二番目の姫!?
小説どおり、私はいつも『二番目』扱い。
いつも第一王女の姉が優先される日々。
そして、待ち受ける死。
――この運命、私は変えられるの?
※表紙イラストは作成者様からお借りしてます。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる