龍神様に頼まれて龍使い見習い始めました

縁 遊

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37. 学校に到着

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「竜…いつでも帰って来ていいからな。」

 いや、ダメでしょ父さん。

「竜ちゃん…貴方なら大丈夫よ。頑張ってきなさい。」

 やっぱり父さんより母さんの方がしっかりしてるんじゃないか?見た目は逆だけどね。

「竜…官僚の学校に来たくなったらいつでも歓迎するわよ。」

 忙しいのに見送りに来てくれたんだね桃花姉さん。

「竜…衣装は私が作っておくからね。」

 菊花姉さん、制服があるから大丈夫だよ。

「「「竜ちゃん~!!!」」」

 三つ子の姉さん達…そんなに号泣しなくても。それに姉さん達も学校に行くんだよね?

「姉さん達、また休みには帰って来ますから…。」

 三つ子の姉さん達に抱きつかれて俺の制服は涙と鼻水らしきもので濡れている。

 菊花姉さんがどこからか新しい制服を出してきて俺に渡してきた。一体どこにしまってたの?

「ありがとう菊花姉さん。」

 俺は制服を着替えて家族に挨拶をしようと顔を見たら…なんだか俺もじんわりと胸が熱くなってきた。

「…頑張ってきます。」

 気のきいたことも言えず、泣きそうな声を堪えた。

 考えてみれば前世では家族の交流はほとんど無かった。俺にとっては初めての温かい大家族との生活。初めは戸惑いもしたものの、いつの間にかすっかり慣れてしまっていたんだなと実感した。

 以前の俺なら一人になることに寂しさなんて感じなかったかもしれない。だけど今は家族の温かみをしってしまった。

 俺は泣きそうになるのを堪えて馬車に乗った。学校までは馬車で1日くらいかかるらしい。

 馬車に乗ると駄目だった。

 涙が溢れてしまって恥ずかしいから窓から顔を出さずに手だけを出して家族に向けて手を振った。

「行って…きます。」

「身体に気を付けるのよ~!」


 母さんの声が聞こえてくる。

 俺は窓から出していた手を思い切り振った。

 こんなことになるとは想像していなかったな…。

 俺は暫く馬車の中で泣いていた。

 見慣れた景色から見慣れない景色に変わった頃、やっと涙も止まってこれからの事を考えていた。

 これからの学校生活は俺にとっては大きな賭けに近い。神官の学校と言うだけで詳しい学校の中身は調べても分からなかったんだ。

 わざと隠しているのか、それとも神様の事を学ぶ学校と分かれば充分だと思っているのか…。

 まあ、王様に行けと言われた時点で拒否はできないだろうけどね。いろいろと考えてしまうよ。

 途中の町で一泊して2日かけて学校に到着した。

「凄いな…。」

 見た目は大きな教会にしか見えない建物だ。俺の知っている範囲で言うならヨーロッパに建っている教会かな。しかもステンドグラスがふんだんに使用されている。

 贅沢だな…。って言うかこの国の建物は統一感が無いよな。お城は日本風だし、学校はヨーロッパ風?

 この国の人は自由人なのか?

 俺は学校を確認した後に寮を探した。学校の裏手にあると聞いていたからだ。

 馬車を降りてお礼を言った。馬車が見えなくなるまで見送ってから学校の裏手に回ると…。

「何だ…これ…。」

 目の前に見えた建物は、日本風でもヨーロッパ風でもなく、中華風…。

 朱塗りの豪華な建物に提灯…。

 おいおい…。誰の趣味だよ。

 あっ、でも龍の絵がある。大きな壁に金色で描かれた大きな龍が目に入った。

「カッコいい…。」

『これは昔ここに住んでいた龍だな。』

 翡翠が龍の絵の前に現れてまじまじと絵を見ている。

『そうなの?』

『昔はこの国にも沢山の龍が住んでいたんだ。その中でも皇帝と言われていた奴だな。』

 皇帝…。名前だけでも凄いと分かる。

『この辺で知らない龍はいなかったと思う。』

『その龍は今はどうしているの?』

 まだ姿を見たことが無いけど?

『…消えた。』

『消えた?』

 え?どういう事…。


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