30 / 86
30. 王様との話し
しおりを挟む扉が開いて部屋の中が見えた。
すごい広いな…。大理石か?ピカピカとひかっている石の床と壁。天井には沢山の花の絵が描かれている。そこから豪華なシャンデリアが沢山吊り下げられていて…おいおい外見と中身のミスマッチ感が半端じゃないんだけど。
俺は少しこの空間に違和感を感じつつも父さんと一緒に遠くに見える王様を目指して歩いていった。
「やっと会えたな。私がこの国の王、殿様 家康(とのさま いえやす)だ。 」
……。俺は笑いを必死に堪えてクールな表情を維持した。
いや、殿様って!家康って!
突っ込みどころが満載なんですけど!
やっぱりこの異世界はかなり日本の影響を受けているとしか考えられない。
しかも王様は日本人と同じ真っ黒な髪と瞳をしている。顔はタヌキ顔をしているな。
「遅くなり申し訳ございません。息子はまだ8歳の子供ですので何かとマナーについて教える事が多くお日にちをいただきました。」
父さんの汗がすごい出ているのが見える。
嘘ついているからね。マナーなんてとっくに習得しているよ。今回は王様対策を練っていて時間がかかったんだ。
「お初にお目にかかります。八岐 竜と申します。お会いできて光栄です。」
俺はなるべく子供らしく聞こえるように話し、王様に笑顔を見せた。
「おお、可愛らしい子供だな。確か…男の子と聞いていたが間違いはないか?」
「はい。」
王様は俺が女の子の様に見えたんだな。よく言われます。
「ほう…これは将来が楽しみな美少年だな。」
王様は高笑いをしながら俺を下から上まで確かめるように見ている。
何だろう…寒気を感じる。蛇に睨まれた蛙ってこんな感じなんだろうなとふと思った。
「今回、竜を城に呼んだのは聞きたい事があるからだ。」
いよいよ本題にはいりますね。
「はい。」
「…そうだ忘れておった、まずは礼を言わねばならなかったのだ。今回の事件に協力してくれていたのであろう。ご苦労であったな。」
これって…引っかけなのか?父さんとの話し合いては俺は直接この事件に関わっていないことにしようと決めていた。報告書にも俺の名前は書かなかったときいている。それなのに…俺に事件解決のお礼を言うということは、俺が事件に関わっていることを確認したいと思っている?
答え方が難しいな…。
「いえ、お礼を言われる事はしていません。私はただお父様に無理を言って一緒にあの領地まで連れて行ってもらい、そこの領民の皆さんとお話をしただけです。」
王様は不敵な笑みを顔に浮かべた。上手く答えられたと思ったんだけど…ダメだった?
「フッハハハッ!」
王様が豪快に笑いだした。え?!何?!何が起こったの?!
「いろいろとお前の事を調べさせたが…やはり一筋縄ではいかない子供だな。安心しろ罰する為に呼んだのではない。」
え?そうなのですか。だって父さんが「神の使い」って領民の皆さんが言っていることが問題だって言っていたのに…。あれ、違うのか?
「正直に申してみよ、本当の事が知りたいのだ。王妃の進退にも関係している事だからな。」
正直に…。どこから話すの?
俺は父さんの方をチラッと見た。父さんも俺の方を見ていた。父さんの顔色悪!!!
報告書が嘘だとバレたんだから仕方ないけど…。大丈夫なのか?
それよりどうするの?俺は正直に話して良いのか?
「大丈夫だ、八岐の報告書も罪に問わない。何か事情があったのだろう。だから素直に話せ。」
父さんが安堵の溜め息を吐き出したのが聞こえてきた。顔色も…良くなってきているね。
んー、話しても良いかな。王様に龍達の事を理解してもらえればこれ程強い味方はいないしね。
僕は王様に事件の事を話す事に決めた。
「どこから話せば良いのでしょうか?」
「そうだな、まずは…なぜお前が父親について行くことになったのか。うん、そこからだな。」
最初からということですね。
「信じていただけるかは分かりませんが、僕は龍神様から"龍の使い"にになるようにお告げを受けました。その後に龍の呪いが原因で土地が荒れているというのを耳にして調べてみたくなったのです。」
王様は黙って俺の話を聞いてくれていた。
「"龍の使い"とは何だ?」
俺は龍の使いについて王様に説明した。
「そんな職業は始めて聞いたな。」
そうだと思います。この国に居ないから異世界から来たんですよ。とは言えないけど。
「なぜついて行ったのかは理解した。次はどうやって不正を暴けたのかだ。」
「それはお父様の報告書の内容と変わりがありません。」
別に龍達の力を少し借りた事は言わなくても良いだろう。
「そうか…。」
王様は何かを考えているみたいだ。沈黙の時間が緊張を誘う。
早く帰りたいな…。父さんも限界が近いよね。
「話しは変わるが、竜は学校に行きたいと言っているらしいな。」
そこまで調べられているんだ!
「はい。」
「どこに行くのかは決まっているのか?」
それは父さんからまだ聞かされていないんだよね。
「実は…今選んでいる最中なのです。」
父さんが冷や汗を拭きながら答えている。今更だけど、父さんってよく国防相に勤められているよね。そんな感じで大丈夫なの?
「そうか、それなら私が選んでも良いだろうか?」
「「王様がですか?!」」
父さんと声が被ったよ。俺はどこにやられるわけ?
「それは…どこかお聞きしてもよろしいですか?」
「ああ…それは…。」
「「それは…?」」
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

旅の道連れ、さようなら【短編】
キョウキョウ
ファンタジー
突然、パーティーからの除名処分を言い渡された。しかし俺には、その言葉がよく理解できなかった。
いつの間に、俺はパーティーの一員に加えられていたのか。


魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
いつだって二番目。こんな自分とさよならします!
椿蛍
恋愛
小説『二番目の姫』の中に転生した私。
ヒロインは第二王女として生まれ、いつも脇役の二番目にされてしまう運命にある。
ヒロインは婚約者から嫌われ、両親からは差別され、周囲も冷たい。
嫉妬したヒロインは暴走し、ラストは『お姉様……。私を救ってくれてありがとう』ガクッ……で終わるお話だ。
そんなヒロインはちょっとね……って、私が転生したのは二番目の姫!?
小説どおり、私はいつも『二番目』扱い。
いつも第一王女の姉が優先される日々。
そして、待ち受ける死。
――この運命、私は変えられるの?
※表紙イラストは作成者様からお借りしてます。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる