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28. 両親の意外な話
しおりを挟む「竜?どうしたんだ。」
父さんが心配そうに俺の身体を掴んで揺すっていた。どうやら翡翠と長い時間話していたから龍が見えない父さんからしたら俺が意識を失くしているように見えたのかもしれない。
「大丈夫だよ。心配させてごめんなさい。龍と話をしていたんだ。」
「龍と話を…か。龍は何と言っているんだ?」
「言霊の話を教えてもらっていたんです。」
「ことだま?」
やはりこの国にはこんな言葉はないんだな。今の父さんの言い方だと漢字も意味も分かってないよね。
「言霊とは分かりやすく言えば…人が口から出す言葉には魔力の様なものが宿るということです。」
父さんに理解してもらえる様に魔力と言ったけど理解してもらえたかな。すごい腕組をしているな。
「魔法を使う時に口で呪文を唱えるがそれの事か?」
あ~、理解してもらえなかったか。どう説明したら良いかな。
「いえ、魔法の呪文だけでなく全ての口から出す言葉のことです。」
「全てか?」
「全てです。」
「では私達は日常において呪文をずっと唱えていると言うことか?」
そこまでになると呪いをかけあっているみたいな感じになるよね。
「え~と、例えば良い言葉を口にすると良い空気になりますが、悪い言葉を口にすると空気も悪く変化しますよね。そういうことです。」
これで分かるよね?
「…なるほどな。確かに言われてみればそうだな。」
父さんもやっと理解してくれたみたいだ。
「だから口から出す言葉は良い言葉を出しなさいと言われました。」
父さんは黙って腕を組んだまま頷いていた。
「後…龍達は口にした言葉を望みだと思い叶えようとするから覚悟がないなら気を付けろ…と教えてもらいました。」
「ほぉ…。ん?覚悟とは何のだ?」
そう、これで俺も翡翠から散々話を聞かされたんだよ。
「それは、例えば何か叶えたい夢があったとします。それを口にします、すると龍は叶えて上げたいと思い準備をしますが言った本人がその夢に対して努力をしなければ夢は叶わないし、努力していたとして叶えるタイミングを龍が作ったとしてもそこで本人に夢を現実にする覚悟が出来ていなければ本人の意志で夢が途絶えるんです。そして今まで準備をしてくれていた龍はガッカリしてその人から離れてしまうかもしれないということです。」
「なるほどな…。」
これを翡翠にいろいろと聞かされたんだけど、意外とこういう人間は多いんだそうだ。翡翠が言うには『例えば恋人が欲しいと願うから会わせてやったのに、私にはもったいないだの、今はそんなきぶんではないだのと言って結局は付き合わないでいるんだ。口にしたのは自分なのにな!』…だそうだ。
これは龍達の間で最近話題になっていて、人間の気持ちが理解出来なくなってきたと言われているらしい。
龍の使いとしては(見習いだけど…)龍との信頼を損ねる事はやめたいよね。
「では、逆に言えば口に出して願いをいってからそれを叶える為に努力をすれば龍が手伝ってくれて願いを叶えてくれやすくなる。というこか?」
「そうです。お父様についている龍は格が高いので努力さえすれば願いは叶えやすいと思いますよ。」
父さんは大きく頭をふり頷いている。
「分かる様な気がする。…母さんと結婚する時にもしかしたら力になってくれていたのかもしれないな。」
母さんと結婚するのって大変だったのか?その時父さんについている龍が姿を見せた。
『久しぶりだな。おぬしは頑張ってきたようだな。皆から噂は聞いておるぞ。』
大きな白い体は輝いていて美しい。
『ありがとうございます。』
『こやつに教えてやって欲しくてな、姿を見せた。さっき言っていた結婚の時の話しは当たっている。』
『そうなんですか?!』
親の馴れ初めなんて聞いた事がなかったから知らなかった。
『おぬしの母親は人気者でな結婚の申し込みが多かったのだ。どうしても結婚したかったこやつはいろいろと努力してな…。だから私が偶然を装い2人を何回か会わせるように仕組んだのだ。まあ、結果は今の通りだ。』
『分かりました。お父様に伝えます。』
『頼んだぞ。』
それだけ言うと龍は姿を消した。
「お父様の考えた事は合っているらしいです。今、お父様についている龍が出てきて教えてくれました。お父様とお母様が結ばれる様に偶然を装い何回も会わせたらしいですよ。」
父さんは凄い驚いているな。目がこれでもかというくらい大きく見開いている。
「やはりそうか…。あの時は本当に運命を感じたんだ。何回も意外な場所で会っていたからな…。そうか…龍様が手伝ってくれていたのだな…。」
父さんは感動しているのか、何かを思い出しているのか分からないが目を閉じている。
父さんの事だから当時の母さんの事を思い出したりしているのだろうな。今でも仲が良いし、母さんは美人だしな…。
あ、すっかり話が反れてしまって忘れていたけど王様に会うまでにいろいろと準備をしないといけないんだった。
間に合うかな…。
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