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26. 欲望の違い
しおりを挟む「ねぇ、竜くんは見たの?」
百合花姉さん…近いよ。
「ねぇ、教えてよ~。」
撫子姉さん…だから近いって。
「隠さなくて良いでしょ?家族なんだから。」
椿姉さん…近すぎるってば!
俺は今…三つ子の姉さん達に追い詰められています。その原因は…。
「ほら、言いなさいよ。現地にまで行ったのだからお化けを見たのでしょう?」
そう、例の問題の領地に幽霊が出るという噂が貴族の間で回っているのです。姉さん達は俺は龍が見えるのだから幽霊も見たに違いないと言って俺に迫っているのです。
「だから、さっきから言っているではありませんか!龍が見えるからといって幽霊が見えるわけではありませんって。」
「「「ブー!!!」」」
姉さん達は母さんに見られたら怒られますよ。
でも、良かった…父さんは上手いことしてくれたんだな。実はこの幽霊騒ぎの元は俺なんです。
父さんに話した領地を他の貴族達に奪われない方法として「この土地を曰(いわ)く付きの土地にするんです。」とあの時に提案したのだ。
最初は父さんも"曰く付き"という言葉にピンときていなかったが俺が「幽霊が出ると言われる土地を好んでかいたいですか?」と質問したら、俺の言っている事を理解してくれたみたい。
まあ、上手くいくかは半信半疑だったみたいだけどね。結果は今の通りというわけさ。
「竜くんってば、何か隠しているっぽいのよね~。」
勘がスルドイね椿姉さん。隠していることは沢山あるよ。
「隠していることですか…。あっ、先日お姉さま達に内緒でお父様にお菓子を買ってもらった事くらいしか…。あっ、秘密だったんだ!」
俺はわざとらしく口を塞いで芝居した。
「「「え!!!ずる~い!!!」」」
本当に三つ子って気が合うんだね。
「お父様に聞きましょう。」
百合花姉さんは甘いものが大好きだもんね。お土産で買ってきたかりんとうを凄い勢いで食べてたよね。また、かりんとうを買ってもらうつもりかな?
「そうね、お母様に言いつけるっていうのもあるわよ。」
そういう考え方…撫子姉さんらしいよ。父さんの弱点を狙うんだね。職業は聖なる歌い手じゃなくて参謀の間違いじゃない?
三つ子の姉さん達は三人で顔を見合わせて何かを通じあった様子で俺の側から離れて行った。
はあ~、やっと1人になれるよ。
『お前の姉達は相変わらずパワフルだな。』
翡翠が姿を見せた。
『そうだね。でも龍はパワフルな人間が好きなんでしょ?』
たしか龍神様からそう聞いた事があったような気がする。
『まあ、無気力に生きている人間よりパワフルな人間の方が好きだが。』
俺は気になっていた事を聞くことにした。
『それでいくと、この前の領主もパワフルな人だったと思うんだけど、あの人の事は嫌っていたよね?』
『だからあの時にも言ったではないか!アイツはたしかにパワフルかも知れんが、アイツからは欲望と嫉妬心妬みという感情が溢れていて側にいるだけで気持ちが悪くなるんだ。』
『そこなんだよ…。気になってたんだよね、だって欲望なんて誰にでもあるでしょ?夢とかも欲望の一種でしょ。嫉妬心とか妬みの感情も誰でも持つんじゃないか?』
勉強やスポーツなんてライバルと競うから強くなるっていうでしょ?それって相手の才能に嫉妬したり妬んだりもしてるよね?一番になりたいって夢は欲望と同じだと思うし…。それとは違うのか?
『やはりお前はまだまだだな。欲望や嫉妬心、妬みの気持ちを持っただけで努力をしない奴は駄目なんだ。そういう気持ちをもっていても前向きに努力する人間に我ら龍は好んでつくが、思うだけならまだしも妬むあまりに相手を貶めようとかで行動する奴らは嫌われる。』
なるほど~、その違いなのか。
『何度も聞かされていたはずだが?覚えていないのか?』
『へへへっ…。』
『笑って誤魔化そうとしているな…。呆れるわ。ついでだから言っておくが、誰かの為に行動する人間も好かれる。ただし、自己犠牲なしでだ。自分も愛し、他人の為に行動できる人間だ。』
難しくないか?だって愛って無償の愛って言わない?アレッて自分を犠牲にしても相手の為に尽くすっていうのが美しいって考えじゃなかった?
『本当にわかっておらぬな。アレッは、見返りを求めない愛という意味だ。』
また心を読んでいるんだ…。プライバシーもんだいだよね。
『何がプライバシーだ!お前ら人間は与えた分だけ相手に返してもらいたいという気持ちを持つ者が多いだろ?例えば自分は相手が欲しいと言っていた高価なプレゼントをあげたのに相手からもらったのは安物だった…としたら人間は嫌な気持ちになるんだろう?それは無意識に見返りを求めているからだ。』
それ分かりやすいかも。なるほどね…。それで安物をもらったとしても返してくれた気持ちが嬉しいと思える事が大事なんだ。
『分かってきたじゃないか。その調子で成長してくれ。お前が成長してくれないと俺もこの姿のままになる。それは困る…。』
それって翡翠の欲望だよね。龍が欲望を持つんだ。
『お前は!!もう知らん!!!』
あっ…。翡翠が姿を消しちゃったよ。
俺…翡翠を怒らせた?!
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