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23. 父さんとの話し合い
しおりを挟む「お疲れ様でした。」
俺達は取り敢えず泊めてもらっていた領主の家に戻っていた。犯罪者達は父さんの部下の空下さんに護送を任せた。
「君達はこれからどうするかを考えた方が良いよ…。」
父さんは出迎えてくれた執事や侍女達に向かって言った。ここの人達には領主が捕まった事を先に伝えてもらっていたからね。
ここは俺の出番なのかな…。
「ねえ、お父様…お願いがあります。」
「ん?何だ。」
俺の必殺技オネダリだ。これはもうすぐ使えなくなるであろう貴重な技だな。
「この人達を全員当家で雇うことはできませんか?」
「は?」
父さんは執事の中条さんだけが欲しいと思っているだろうけど、俺は全員欲しいんだよね。ここの人達はスゴく働き者だと分かったからね。
「僕…ここに泊めてもらって皆さんの働きを見ていましたが、皆さん手際が良くて仕事が早いですよ!絶対に当家で雇うべきです。」
瞳を潤ませ、キラキラさせながらお父様を見つめる。これで落ちるはずだ!
「うっ…そんな瞳で見るな…。まあ、雇えなくはないが…。」
「やったー!良いのですね!」
まだ良いって言ってないけど先に言ったもの勝ちだよ。
「あ、おい…竜。」
父さんが困っている顔をしているのを横目に見ながら、お屋敷の皆さんに笑顔で話しかけた。
「皆さん是非僕のお屋敷で働いて下さい。」
「良いのですか?」
中条さんが本気なのか?って顔をしている。もちろん、本気です。8歳の真顔がどこまで通用するかはわからないけど、取り敢えず真顔で頷いてみました。
「私達も宜しいのですか?」
侍女さん達には笑顔で対応した。
「良かったわ…。もうあの旦那様の下で働かなくてもいいのね…。」
ん?侍女さん達のひそひそ話が耳に入ってきましたよ。
「今日もこちらに来るとお聞きしていたから、ドキドキしていたけど…もう怯える事もないのよね。」
「あのイヤらしい目で見られることもないわ。」
「あの趣味の悪い服も、嫌々誉めなくて良いのよ。」
うん…。かなり不満が溜まっていたみたいだね。俺の父さん達はそんな事しないから安心して…。あっ、違う辛さはあるかも。三つ子の世話が体力勝負だと侍女達が言ってたよ。ファイト!
でもこれで有能な執事も侍女達もスカウト成功だよね。俺に感謝して欲しいくらいだよ。
あ、そう言えば…。
「お父様…例の話をしたいのですが、どうされますか?」
「ん?ああ、そうだな。部屋を借りたいのだが良いかな。」
執事の中条さんに空いている部屋に案内をしてもらった。
「一応、魔道具で結界を張っておく。」
父さんは魔道具を取り出して部屋に結界を張ってくれた。これで会話を誰かに聞かれることはない。
「まず最初に今回の話からしたい。結局は龍の呪いではなかったということだよな。」
「はい。領主はかなり龍に嫌われていましたけど呪いなどはかけていませんでしたよ。」
そういえばあれから翡翠の姿を見ていないけど俺について来てるよね?
「そうか…。良かった。じゃあ、やはりあの工場が全ての原因で報告をして良さそうだな。」
それ、聞きたかったやつ!
「お父様、工場はどんな感じだったのですか?」
「工場か…。あれは幻の薬の製造工場だったよ。工場の中は清潔とは言えない状態で臭いも酷かった。領民の男達はあんな酷い環境で働かされていたんだと思うとゾッとしたよ。」
そんなに酷い環境だったのか。みんな辛抱強い人達だったんだな。これからは幸せに暮らしてほしいよ。
「それは催眠草の他にも薬草とかがあったのですか?」
「…禁止薬物まで見つけたよ。あのバカ領主め!何を企んでいたんだか!」
それってお金儲けだけが目的ではないかも…ということなのかな?
「それって…。僕にも教えていただけますか?」
父さんは悩んでいたが教えてくれた。
「今回はお前の協力があって人を殺める事無く済ませる事ができたから特別だ。しかし、絶対に秘密だぞ!」
「はい。僕は秘密を守れます!」
父さんは笑いながら俺の頭をグシャグシャと撫でた。
「実は…王様に飲ませようとしていたみたいなのだ。王妃が何回も王様に気持ち良くなる薬だと言って渡していたらしい。」
それって…下手したら王様を廃人にして失脚させる。もしくは…暗殺。
「竜は頭が良いからここまで言ったら理解できただろう?」
俺は何も言わずに頭を縦に何回もふった。
「やはり竜は賢いな。さすがは私の息子だ。」
あ、ここでも親バカがはいるんだね。
「今回の事は大事件になる。竜もその覚悟でいなさい。必ず王様と会うことになるだろうからな。」
え…俺が王様と会うの?
「次はアレの話だな。はぁ~、ややこしいよな。何でこのタイミングで見つかるかな~。報告のタイミングも難しいぞ。」
うん、そうだよね。事件がまだ最後まで片付いていないのに「ダイヤモンドが見つかったぞー!」なんて報告したら凄い騒ぎになるよね。
「あの領地は恐らく没収されて新しい領主をたてるか、もしくは王族で管理するかになるだろう…。王族で管理するなら良いのだが…。誰かがあの領地を欲しいと手を上げればやっかいな事になるな。」
そうか…。何か良い方法は…。
そうだ!良い事を思いついたよ。
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