龍神様に頼まれて龍使い見習い始めました

縁 遊

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22. 結末は…

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「私を守るのだ!お前ら命がけでやれよ~!」

 領主は声高らかに少し笑いながらいっていたのだが…。

「…………。」

「おい!返事は?!」

 領主は返事が無いことを不思議に思い後ろを振り返った。

「え…?」

 領主が見たのは自分が連れてきた部下達の縛り上げられた姿だった。

 心配いらなかったんだね。

「残念ですな…。大人しくしていただけたら敬意を表して縛らずにお連れしようと思っていたのですが…。誠に残念ですな…。」

 父さん…口で言っている事と顔の表情が合っていませんよ。顔が笑っていて残念に思っていないのがまる分かりです。

 その笑顔のままで領主を縛っています。…知らない人が見たら怖いよ。

 それにしても父さんが連れてきた人達は優秀なんだな。あっという間に沢山の男達を捕まえて縛り上げていた。まるで特殊部隊の様だったよ。

「あ!忘れてた!」

 俺は父さんに報告しないといけないことがあるのをすっかり忘れてしまっていたよ!

「お父様!待ってください!お話があるのです。」

「話し…?改まってどうしたのだ。」

 俺が父さんの仕事中に話を聞いてほしいなんて何かあるって気がついてくれたよね。

「お耳を貸してください。実は…。」

 父さんは俺に合わせてしゃがんでくれた。俺は咲里ちゃんの宝物の話を父さんにした。

「な、何!本当か?!いや…竜を疑うわけではないぞ…。」

 分かってるよ。そりゃ、驚くよね。ダイヤモンドが採れる鉱山なんて宝の山だ。これが分かれば醜い奪い合いがおこるのが目に見えるからね。

「竜…耳を貸せ。」

 今度はとうさんが俺の耳に向かって話を始めた。

「これは皆が知っているのか?」

「いえ、咲里ちゃんは誰にも言わずに秘密にしていたみたいです。だから知っているのは咲里ちゃんと僕とお父様だけです。勿論、これからも誰にも言ってはいけないよ、と咲里ちゃんに言っていますよ。」

「さすがは我が息子だな…。」

 父さんは親バカ発言をした後、暫く難しい顔をして考えていた。

「ここは暫く封鎖される。その間に考えよう。」

 父さんの事だから何か考えがあるんだろう。

「今はこの人達を連れて行かないとな…。」

 父さんは沢山の縛られている大人達の方を見た。

「そうだね…。あっ、お父様村の人達の事…よろしくお願いします。」

「ああ、心配するな。分かっている。」

 村の人達は全員事情聴取されることになっている。その為に大人数が乗れる馬車が何台も用意されている。これで小さい子供も女性も疲れずに危ない目にも合わずに、この領地を抜け出せるだろう。

 俺は計画通りにいってホッとしていた。

 工場の事は後で父さんに聞けば良いか…。



「咲里!」

 縄をほどかれた咲里ちゃんのお母さんが咲里ちゃんに走り寄って来た。

「母さん…。」

「竜くん、ありがとう。咲里を庇ってくれて…。」

 いや…俺は何も出来なかった。口を塞ぐくらいしかしてないし…。

「大丈夫か!?」

 真留さんもそこに加わった。

「本当にありがとうな。おかげで苦労せずにここを出られそうだ。言葉だけでは足りないくらいに感謝している。」

「真留さん…。」

 こんなに感謝されると照れるな…。

「竜くん、ありがとう。」

 咲里ちゃんが俺の側に寄ってきて抱きついて来た。うわぁ!ラッキーだけど…真留さんの前でヤバくないか?

「な!…咲里~!!ダメダメ、まだ早い!竜に感謝はしているがそれとこれは別だ!離れなさい!咲里!」

 真留さんが俺から咲里ちゃんを離そうとしているが咲里ちゃんが離れたがらない。

「もう、最後のお別れなんだかこれくらい良いじゃないの。咲里、ちゃんとお別れしないね。」

 いつも真留さんの奥さんは冷静だよな。

「うん。竜くん…咲里の事忘れないでね。チュッ…。」

「うわあぁーーー!!!!!」

 真留さんの叫び声が地下に響いている。今、咲里ちゃんが俺の頬にキスをしたからだ。

「咲里ー!!それはダメ!絶対にダメ!!それは父さん以外にしてはいけないやつだ!!!」

 真留さん…また泣いてる?いや、俺の父さんも凄い過保護で俺を溺愛している親バカだけど、真留さんの方が上かもね。

「もう、五月蝿いわね。竜くんは良い子なんだから別に良いでしょ。咲里の好きなようにさせてあげなさいよ。」

「しかし…。」

「はあ~、忘れたのかしら?貴方が私に最初に結婚を申し込んだのは咲里と同じ歳の時だったわよ。」

 え…真留さん、11歳の時にプロポーズしたの?

「いや…それはだな…。」

 言い返せてないよ。真留さん、涙は止まったけど今度は変な汗をかいてるね。

「幼馴染みだからと思って16で結婚したけど…やっぱりもっと考えるんだったわ。」

 なるほど2人は幼馴染みだったんだ。

「ほら、咲里行くわよ。じゃあ、竜くん、本当にありがとね。元気でね。」

「バイバイ!竜くん…。」

「おい!ちょっと俺を置いて行くなよ~!」

 3人は賑やかに俺の前から去って行ってしまった。

『ありがとうございました。これからあの者も成長していけると思います。』

 真留さんについている龍と、咲里ちゃんについている龍が俺に挨拶にやって来た。

 龍に感謝されちゃった。俺って確実に龍の使いとしてランクアップしてるんじゃないか?

 



 





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