龍神様に頼まれて龍使い見習い始めました

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21. 咲里ちゃんの宝物

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 咲里ちゃんが隠していた宝物は…。

「咲里ちゃんはこれをどこで見つけたの?」

「これは少し先にある小さな穴にあったよ。」

 咲里ちゃんが指差した方向をみると他とは違う岩肌が見えた。なるほどあそこならおかしくないかも…。

 俺は教えてもらった穴に入って見た。

「うわぁ~!」

 そこにあったのは光輝く世界だった。そう、咲里ちゃんが隠していた宝物はダイヤモンドの原石だったんだ。

 穴が小さくて大人は入ることができなかったから今まで見つからなかったんだな。でも今これが人に知られるのはマズイかもしれない。

「咲里ちゃん、これは2人だけの秘密にしよう。誰にも言ってはいけないよ。」

「分かった。約束するね。」

 本当に素直で可愛いな~。いや、デレている場合ではなかった。

 火事は銀龍様が消してくれたが工場の問題がどうなったのかがまだ分からない。父さん達が帰って来ていないからね。安心はまだできないんだよな。

 しかし…あのダイヤモンドは下手に王妃に知られると益々力をつけて変なことに使うだろうな。どうにかして王妃からこの土地を取り上げる事はできないかな…。

 帰ってきたら父さんに相談してみないとダメだな。

 その時、大勢の大人達の声が聞こえてきた。父さん達なのか…?

「何だ…畑が燃やされているじゃないか!一体どういうことだ!これでは薬が作れないではないか!」

 父さんの声ではないな。聞いたことない声だけど…偉そうな感じが貴族ではないかと想像させる。

 もしかして父さん達がここに来ていることを知らない誰かがタイミング悪くやって来たのか?

「お前達は何をしていたんだ!」

 ヤバい!そういえば咲里ちゃんのお母さん達は畑にいるんだった。大丈夫だろうか。

「コイツらを捕まえて縛っておけ!後でお仕置きをしてやる!」

 やっぱり大丈夫じゃなかったよ!助けに行きたいけど俺一人では何も出来ないな。魔法が使える訳ではないし、武道が強い訳でもない…。こんな事なら梅花姉さんに鍛えてもらっておくんだったよ。

 父さん達早く帰って来ないかな。そんな俺の願いは虚しく…。

「子供…?えらく綺麗な子供がいるではないか。」

 男が俺達に気がついてしまった。

 俺は良いけど咲里ちゃんが目をつけられると危ないよな…。俺は咲里ちゃんの前に庇うように立った。

 偉そうな男は俺達の目の前までやって来た。

 やっぱり近くで見ると間違いなく貴族の男性だと分かる。身に付けているものが高価な物ばかりで庶民の服装ではないからだ。趣味は悪いけどね(笑)

 派手な色と模様のガチャガチャとした服…見ているだけで目がチカチカするよ。

「変な服だね…。」

 咲里ちゃんが素直な感想を口にした。…だけどそれ、今は言ってはいけないやつだよ~!

「え?」

 男は咲里ちゃんの声が聞こえなかったらしくもう一度聞き直そうとしていた。俺は慌てて咲里ちゃんの口を塞いだ。

「…むむむ。」

 咲里ちゃんはナゼ口を塞がれたのが分からず俺を見ている。男も咲里ちゃんの口を塞いだ俺の方を見ている。

「へへッ…。おじさんのお洋服が綺麗だねって言っていたんだよ。」

 俺は武器である最高の笑顔を見せながら咲里ちゃんの代わりに返答した。

「お~!そうか、そうか…この服の良さが分かるのか。お前達は将来有望だな。」

 男は機嫌を良くしたみたいで俺の頭を笑顔で撫でていた。

「…領主様?」

 声のした方を見ると真留さんと父さん達が帰って来ていた。

 え?この人が領主!?

 えええええーーーーー!!!!!!

 信じられない…。

 こんな人が王族の親族一員なのか?

 え?この趣味の悪い服にも相当なお金がかかっているってこと!?もったいないな~!

「ちょうど良い所に…。お会いできて光栄ですよ領主様。」

 父さんの目が笑っていない笑顔…。怖!!

『アイツ…嫌い。』

 突然さっきまで姿を消していた翡翠が現れた。

『嫌い?一応この国の王族の親族だよ。』

『王族とか関係ない。アイツからは欲望と妬み嫉妬心しか感じられない。近くにいるだけで気分が悪くなる…。耐えられないから外にいる。それを言いに来た。じゃあな。』

『え?じゃあな。って、おい!翡翠!』

 翡翠はいきなり現れたと思ったらすぐに消えてしまった。

 どうせなら俺が困っている時に姿を見せてほしかったよ。しかし…龍に嫌われる領主。問題ありそうだよな。

 この土地の人達に龍がついていなかったのも領主が原因の1つなのかも知れない。

「お、お前は何故ここに…ここで何をしているのだ!」

 父さんを見た領主はあからさまに様子がおかしくなった。さっきまであんなに威張っていたのに。

「何って…仕事ですよ。調査に行くとお手紙を出していたかと思いますが?もしかして読まれていませんか?」

「え…あ…そ、そうだったな。いや、うっかり忘れてしまっていた。しかし、ここは調査の必要はないから早く出ていけ!」

 明らかに狼狽えていながら、ここは調べなくても良いなんて…誰が従うんだろうか?怪しすぎると自分から言っているみたいなものだ。

「ほ~、調査の必要はありませんか?残念ながら調査は終了してしまいましたよ。ハハハッ…。」

 父さん…領主を煽ってない?

「な、何~!!終了しただと?!」

「はい。貴方には聞かせていただきたい事が山ほどありますからご同行願います。」

 父さんが領主に近づこうとした時だった。

「お前らコイツらを片づけろー!」

 領主が大声で部下達に命令を出した。

 父さん…大丈夫なのか!?
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