龍神様に頼まれて龍使い見習い始めました

縁 遊

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11. 作戦会議中

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『こやつは迷っているのだ。先代の旦那様に恩があるから今の奴を見捨てる事ができないのだ。』

 執事の中条さんについている龍が俺に話しかけてくる。家族の龍以外では初めて会った龍なので是非とも仲良くなりたい。

『そうなんですね。先代に恩とは?』

『こやつの父親が元々はこの屋敷で執事をしていたんだ。だが、不慮の事故で急死してしまい、これからどうしようとなった時、先代にここに居て良いと言われて育ててもらったんだ。成長してからは執事として恩を返す為に働きだしたが今度は先代が病に倒れてしまったのだ。だから返せなかった恩を今の領主に使えることで返そうとしているのだが…。』

 先代の領主は噂通りの良い人だったみたいだね。だけど今の領主はそうではないと言いたい感じかな。

『分かりました。力になれるなら協力します。』

 龍の姿を見る限りだとかなり弱っているからね。手助けしたくてもできないのかもしれない。

 俺達は色々と話をしたものの中々まとまらず結局屋敷に泊めてもらうことになった。

 執事の中条さんに部屋に案内されてそれぞれの部屋に行った後、父さんの部屋に集まった。

 これからの事を話し合う為に…。

「問題はあの工場だと思うのだが…」

 俺もそう思うが執事にも教えていないくらい、人に知られたくないことをしているだろうから警備も凄いだろうということが予想されるよね。

 そうだ!

「お父様、提案なんですが僕が行くっていうのはどうですか?」

「竜が?それは危険だから認められないな」

「でも、僕が一番適任かと…。子供なので迷子になった感じで潜入できると思いますけど、どうしますか?」

 父さんはかなり難しい顔をして考えている。すると部下の空下さんが発言した。

「心配だとは思いますが、私もそれが一番良い案かと思いますね」

 空下さん、ありがとう!後押しをしてくれるんですね。

「しかし…。いくら竜が大人びているとは言えまだ子供だ。」

 それでも父さんは迷っている。もうひと押しかな。

「大人が近づいても入ることはできないと思いますよ。子供だから入れるのです。今から人を集めて入るとなると相手に何か対策をたてられてしまう可能性がありますしね。お父様、僕は大丈夫です。」

 「私も協力しますので、決断して下さい。」

 俺と空下さんで父さんに攻め寄る。

「…う、分かった。絶対に危険を感じたら逃げるんだぞ!」

 父さん…少し涙目になってない?

「分かっています。お父様にご迷惑はかけません。」

 心配しなくても俺には協力してくれる仲間がいるし、大丈夫だよ。

「そうと決まれば作戦をたてましょう!」

 空下さんが地図をテーブルに広げて話し出した。

「領民の皆さんが地下で暮らしているという事は、何処かに地下に続く入り口があるはずです。まずはそれを探しましょう。」

「そうだな…。」

 父さんは渋々計画に賛成している感じだね。どんなに俺を可愛がってくれているのかを感じることができるよ。前世ではなかったな…。

 前世では実の両親の愛情なんて覚えていない。覚えているのはじいちゃんとの事だけだ。だから余計に今の両親の愛情を有り難く思ってしまう。

 だからこそ、父さんを悲しませる様な事は絶対にしないのに…。

「父さん、僕はまだ身体が小さく何処にでも潜り込めますし、隠れる事もできると思います。だから、心配いりません!」

 俺は父さんを安心をさせる為に、子供らしく元気な声で言った。

 父さんは俺の頭をポンポンと軽く叩きながら笑った。

「そうか…。頼んだぞ。」

「では、御子息様には地下に続く道が見つかったらそこから潜入していただくと言うことで宜しいですか。」

 空下さんが父さんに承諾を求める。

「…分かった。」

「そして地下に住む領民達に会えたら話を聞いてもらえれば良いかと思います。」

「分かってる。僕は迷子になった振りをして「ここは何処ですか?皆さんはここで何をしているのですか?」って聞けば良いのですよね?」

 父さんと空下さんが目を見開いて俺を見ている。しまった、何か間違っていたのか?

「その通りです…。いや~、賢い御子息だと聞いてはいましたが、ここまでとは…」

 空下さんが父さんに俺の事を話しているが、父さんは今までと顔つきが違いニヤニヤとしている。父さん…俺の事を職場の人に自慢していたのか?

 いや、親バカもホドホドにしないと部下に嫌われるからね。

「ゴホンッ。息子は少し大人びた所があってな。聡い子なのだ。」

 はい、親バカです。目尻が下がってるよ。今は緊迫している状況のはずなんだけど?こんな感じで大丈夫なのか?

 取り敢えず、作戦は決まった。明日に備えて僕達は部屋で休む事になった。決行は明朝の日の出前に決まった。

 部屋のベッドで横になっていると不思議な空気を感じて目を開けた。そこにいたのは…。

「あなたは…」



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