龍神様に頼まれて龍使い見習い始めました

縁 遊

文字の大きさ
上 下
10 / 86

10. 領地の謎

しおりを挟む


 分かったかな?そう…八岐大蛇と同じ。何て読むかって?ヤマタノオロチと読むんだ。

 聞いたことはあるよね?俺も山田じゃなくて八岐?変わった名字だなと思っていたくらいで分かっていなかったんだけど、龍達に色々と教えてもらいながら龍使いの勉強をしていくうちにアレ?って気がついた。

 これはきっと龍神様の仕業だと思ったよ。我が家には先祖は龍と交わりがあったと言い伝えられていることを考えても異世界とはいえ繋がりはあるのかもしれないと俺は思っている。

 まあ日本では悪者だったからね。あまり深くは聞かないことにしているんだけどね。

 おっと、話がそれていたね。本題に戻さないと…。

「そちらは…。」

 執事は僕が誰だか気になるみたいだな。それはそうか。子供が一緒に調査に来るなんて事は普通はないよね。

「初めまして、八岐の息子の竜と申します。」

 僕は子供らしく見えるように可愛らしい声を意識しながら挨拶をした。

「失礼しました。御子息だったのですね。しかし…今回はどうしてご一緒に来られたのでしょうか?」

 はい、予定通りの質問がきました。父さん準備してきた通りに頼んだよ!

「実は息子は龍の研究をしていましてね。今回の件でお役に立てるかもしれないからついて行きたいと言って聞かなかったんです。いや~、申し訳ないですが邪魔はさせませんので同席させていただきたいと思うのですが…」

 これは両親と一緒に考えた作戦。名付けて「親バカ作戦」だ。相手を油断させる事ができるだろう、ということで決定したんだけど…上手くいくかな。

 ここはもうひと押しが必要かな。

「僕、大人しくしています!龍と僕は友達なのです!友達が怒っているなら助けたいのです!お願いしますからここに居させて下さい!」

 俺は子供らしく目を潤ませながら執事の前に行き両手を顔の下で組んでお願いポーズをした。

 これでなかなか断れないだろう!

 うん、中身は大人だから許されるが…これが本当の子供なら性格が悪すぎるな。自分でも自覚はしてるから何も言わないで優しく見守ってほしい…。

「そうなのですね。分かりました。」

 よっしゃ~!

 俺は父さんとチラッと目を合わせて笑った。父さんの笑いは時代劇で見た悪代官の悪い顔になってる。ここで俺がセリフを言うなら「おぬしも悪よの~」かな(笑)

 何はともあれ、了解をもらえて良かったよ。これを拒否されるとこの後の調査ができなかったからね。

 俺達は執事に案内されて応接室に通された。やはり思っていた通り領主は帰ってきていないみたいだ。

「申し訳ないですが王都で急用ができこちらには来ることができないとの事で、私に皆さんに協力するようにと言われました。私にできる事でしたら何なりとお申し付け下さい。」

 慣れているよね。いつもこんな感じなんだろうなっていうのが分かる。

 王都で急用?父さんに対してもその理由で通そうとしているのが凄いよね。やはり噂通りの人なのかと想像させるな。

「早速で悪いが聞きたいことが何点かある。まずは川の近くに建っている建物について聞きたい。」

 川に大量の汚れた何かを放出していた建物だね。

「あれは旦那様が進められている領地の事業の1つで、製造工場となります。」

「製造工場?何の?」

「申し訳ありません。何を製造しているのかは私には教えてもらっていないのです。知っているのは旦那様と工場で働いている者だけなのです。」

 執事の中条さんは顔色を変えずに淡々と話している。

 怪しすぎる…。誰も知らない製造工場なんていかにも人に言えない物を製造しています!って感じだよね。

「それではもう1つ、農地を見に行ったのだが…今は農業は行っていないのだろうか?」

 中条さんの目元が少しピクッと動いたのが俺には分かった。

「…そうですね。今日視察に行かれた場所では何も作っていません。」

 やっぱりね。あんなに荒れた土地では何も作れないよね。

「僕からもお聞きしたいことがあるのですが良いですか?」

 どうしても納得が出来ないことがあるんだよ。

「ここの領民は何処に住んでいるのですか?」

 中条さん、今度は口元がヒクヒクしていますよ。

「…大変申し上げにくいのですが、領民は地上には住んでいません。先程申し上げた工場の地下に暮らしています。」

「工場の地下に?!」

 いやいや、身体に悪いだろ。…と言うか工場の為に拘束しているのか?

「領民達は自由に外に出る事はできないのですか?今日ここに来るまで誰一人見なかったので気になっていたのです。」

 中条さんは黙っているけど、まばたきが多くなっている。これは嘘をつく時にでやすいんだよね。

「…そんな事はないと思います。」

 何かは知っていそうだな。実はここに来て初めて龍の姿を確認したんだけど…。それは中条さんについている龍なんだ。

 その龍が俺に話しかけてくるんだ。

『こいつを助けてやってくれ…』ってね。

 中条さんについている龍はかなり弱っている。これは中条さん自身の心と身体が弱っている事と繋がる。

 龍使い(見習い)としては助けないといけないよね。

 さあどうやって助けようかな。








しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

旅の道連れ、さようなら【短編】

キョウキョウ
ファンタジー
突然、パーティーからの除名処分を言い渡された。しかし俺には、その言葉がよく理解できなかった。 いつの間に、俺はパーティーの一員に加えられていたのか。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

いつだって二番目。こんな自分とさよならします!

椿蛍
恋愛
小説『二番目の姫』の中に転生した私。 ヒロインは第二王女として生まれ、いつも脇役の二番目にされてしまう運命にある。 ヒロインは婚約者から嫌われ、両親からは差別され、周囲も冷たい。 嫉妬したヒロインは暴走し、ラストは『お姉様……。私を救ってくれてありがとう』ガクッ……で終わるお話だ。  そんなヒロインはちょっとね……って、私が転生したのは二番目の姫!? 小説どおり、私はいつも『二番目』扱い。 いつも第一王女の姉が優先される日々。 そして、待ち受ける死。 ――この運命、私は変えられるの? ※表紙イラストは作成者様からお借りしてます。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...