龍神様に頼まれて龍使い見習い始めました

縁 遊

文字の大きさ
上 下
8 / 86

8. 例の領地にやって来ました

しおりを挟む


 俺は父さんに頼み込み王妃様の実家の領地まで連れてきてもらった。名目は問題解決の為の調査らしい。

 あの時俺が父さんから聞かされた話はこうだ。

「王妃様の実家の領地にある川の水がどぶ水の様になり、土地も荒れて農作物が育たなくなってしまったらしい。元々は緑豊かで農作物が豊作だったらしいのだが…ここ数年で激変したんだそうだ。その時に占い師に見てもらったら龍の仕業だと言われたそうだ。」

 俺はまず龍の仕業と言った占い師に腹が立ったが、それを信じて退治しようと言い始めた王妃様達には怒りを感じたよ。

 多分あの時に白龍が教えてくれた情報から考えると、全領主から今の当主に代替わりしてから少しずつ土地が荒れていったんだろう。それが顕著に目に見て分かるようになったのがここ数年というだけのことだと思われる。

 何で人間は見えないものに罪を擦り付けようとするのかな?普段は信じない癖に勝手な時だけ信じるんだから本当に勝手だよな。

 …俺も人間だけどね。

「着いたよ。ここが例の川だ…。」

 馬車から降りると…。

「うっ…、凄い臭いですね。」

 降りた途端に悪臭が鼻をつく。川と言われたからそうなのかと分かるが言われなければ大きなドブにしか見えない。

 俺は辺りを見回した。

「どうだ?龍様は居るのか。」

 父さんが心配そうに聞いてくる。

 本来なら大きな川は龍達の休憩場所になるので何体かはいるんだけど…。

「やはり居ませんよ。こんなに汚いと駄目ですね。龍は綺麗な水を好みますから。」

 それに…父さんには言わないけどここは僕には黒い靄(もや)みたいなのがかかっているように見える。これは何の気配なんだろうか?

「次は農地だな。急ごう。」

「はい。」

 俺達は、また馬車に乗り込み農地に向かった。到着するまでこんどは馬車の窓からそとを眺めていた。さっきまでは父さんに龍の話をするのに夢中になりすぎて外を見ていなかったんだよね。へへっ…。

「お父様、あれは何でしょうか?」

 窓の外を見ていると見慣れない建物が川の近くに建っていた。

「どれだ?あれは…何だろうな。以前と言っても5年くらい前になるが、その時にはあんな建物は無かった。」

 川縁に建っている大きな建物から川に向かって大量の何かが流されているのが見える。

 俺は前世の記憶がフラッシュバックしてきた。ニュースで見た工場の汚染水を川に流し込み訴訟になっていたものだ。

「もしかして…。」

 川の汚染の原因は龍のせいではなく、あの建物からの排水のせいではないのか?

「どうした?あの建物が気になるのか。」

「お父様、あの建物について調べて頂けますか?」

「あの建物だな分かった。すぐに調べさせよう。」

 父さんは魔法の通信機で部下の人に連絡をとりすぐに調べて知らせるようにと言ってくれた。

 調べてからでないとハッキリしないがおそらく川の汚染の原因は解決するだろう。そんな予感がする。問題は農地か…。

「お父様、ここ土地の特産は何だったのでしょうか?」

 前領主の時はワサビを育てていたみたいなんだけど、おそらく今の水の汚れた川から考えると何年も前からワサビは育てられなかったはずだ。

 ワサビは綺麗な水でしか育てられないからな。

 俺も事前に調べた時は驚いたよ。この世界にもワサビがあるんだ!ってね。どうやら前世と同じで辛いみたいなんだけど、色がちがうんだよね。前世ではワサビ=緑だったけど、この世界のワサビは何と、赤いんだ。

 実は今日は実物が見られるかもしれないと少し楽しみにしていたんだけど…たぶん無理だな。

 まあ、今日は無理だとしてもいつか口にしてみたいとは思っている。でも俺…まだ8歳だからな辛さに耐性無いだろうな。

「以前はここら辺一体はワサビの産地だったんだが…。最近は市場にも出回っていないな。他に特産物を作っているという噂も耳にしないよ。」

 …ということはここの領民達はどうやって暮らしているんだ?

「ここには人は住んでいないのですか?」

 そうじゃないとおかしいよね。

「いや、王妃様の実家だからそれはないと思うが…」

 父さんも何かに気がついた様子だ。そうなんだよね、さっきから人をみかけていないし、民家も見ていない。

 かなりの広範囲を、馬車で走っているのにだ。

「お父様、どうやらまだ調べて頂かないといけないことができましたね」

「そうだな…。これは国の一大スキャンダルになりそうな臭いがしてきたね」

 父さんの笑顔…目が笑っていません。怒りを堪えているみたいですね。ただでさえブラック企業並の働きをしているのに、また仕事を増やして申し訳なく思いますが、これは父さんの試練でもあるみたいなので頑張って下さい!

 父さんについている白龍が嬉しそうに光っています。これは魂が成長するという前触れだったと思います。見習いなんで断定はできないけど…。

 「着いたよ。この辺一体が…農地…?」

 父さん…最後がハテナになっていますよ。気持ちは分かります。だって…。

「ここが…」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

旅の道連れ、さようなら【短編】

キョウキョウ
ファンタジー
突然、パーティーからの除名処分を言い渡された。しかし俺には、その言葉がよく理解できなかった。 いつの間に、俺はパーティーの一員に加えられていたのか。

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...