龍神様に頼まれて龍使い見習い始めました

縁 遊

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2. 龍の成長に必要なもの

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『はあ~、人間は本当に我らの事を分かっていないのだな…。』

 残念そうに大きな溜め息をつく龍なんて初めて見ました。俺が"龍使いって何?"って思ったからか。

『その通りじゃ。基本から話さないといけないのかもしれんな。お前は龍がどうやって成長するかを知っているか?』

「いえ、知りません。人間と同じで魚とかを食べるとか?」

 よく龍は大きな川とかに住んでいるっていうのは聞いた事があるんだ。川に住んでいるなら魚を食べていても不思議ではないよな。

『…そんなレベルなのか。』

 またまた残念そうに言われてしまった。いや、俺だけじゃないはずだ。皆に「龍はどうやって成長するのでしょう」って聞いてみても俺と同じ答えが出てくるはずだ…と思う。

『昔は我々が事を見えている者も多かったんじゃが、時代が進むに連れて見えない者が殆どになってしまった。』

 昔の人は見えていたのか?!すげぇ人達が多かったんだな。でも時代が進むに連れて見えなくなったっていうのは少し気になるな。

『それはな…人間が夢を見なくなってきたからじゃ。』

「夢ですか?」

 俺は普通に夜寝ると夢を見てるぞ。可愛い彼女が出来てキスをしようとした所でいつも目が覚めて悔しい思いをするんだよな~。

『馬鹿者!その夢ではない。将来の希望や夢のほうじゃ!』

 空気がビリビリとした感じになって驚いた。凄い怒っているのが分かる。だけど、ちょっとした勘違いなんだから許してほしい。

『龍が成長するのに必要なのは人間のプラスの思いじゃ。例えば夢を叶える為に頑張る人間についた龍は成長するが、夢が叶えば良いなと思っているだけで何も行動に移さない人間についている龍は成長しない。』

「思っているだけでは駄目と言うことですか?」

『その通りじゃ。何でも願えば叶うものなどない。その願いを叶える為にに努力している人間は龍にも神様にも好かれるのじゃ。』

 そうなんだ。俺は今まで神社で願えば何でも叶えてもらえるのかと思ってたよ。

『ワシも切迫した状態でなければお前ではなくもっと我々について知っている者を召還したかったのじゃが力不足の今は叶わなかったのじゃ…。』

 ん?今…気になるワードが幾つか出てきましたよ。俺じゃなくて別の人?召還?とか。

「え!?ちょっと待って下さい。俺は今どういう状態なんですか。普通に神社にお参りに来ただけですよね?神社にお参りに来る人なんて沢山いますよね。」

 なのに召還って言葉を使うのはおかしいよな。嫌な予感がしてきた。

『お前も薄々気がついていたじゃろ。同じ道なのにいつもと雰囲気が違うと感じなかったか?それに参道を通る時に玉砂利の上を歩いて来たはずなのに踏みしめる音はしたか?』

 靄がかかっていて足元まで見ていなかったけど…そう言えば地面を踏みしめる感覚が無かった。何でだ?

『気がついてきた様子じゃな。お前は自宅に帰る途中で後ろから来た車に引かれて亡くなったんじゃよ。疲れていたのもあり死んだことに気がつかないまま自宅に帰ろうとしていたのじゃ。』

 え…。俺は死んだのか。何だよそれ。人生の最後にも気がつかないくらいに疲れていたなんて笑えないな。俺の人生って何の為に生きていたんだ。

『お前は何事にも一生懸命な奴だった。ワシはそんなお前の姿を知っている。だから龍に詳しくなくてもお前にしようと決めたのじゃ。…まあ、時間が無いのもあるがの。』

 何か最後の方の言葉が気になるんですけど。しかもわざと声を小さくしましたよね?

「死んだのなら普通は天国とかに行かせてもらえるんじゃないんですか?」

 死んだのなら会いたい人がいる。

 俺は幼い頃から「楽な道は選ぶな!」と教えられて育ってきた。幼い頃に両親が離婚して父方のじいちゃんに育ててもらっていたのだが、そのじいちゃんが凄い人で柔道、空手、剣道の達人。そのじいちゃんの口癖が「楽な道は選ぶな!」だった。

 武道の達人のじいちゃんは幼かった俺が大人になった時に1人で生きていけるように心を鍛えてくれたんだと今なら分かる。

 そのじいちゃんも俺が高校を卒業するのを見届けると天国に旅立ってしまった。両親には会ったこともないから未練はないが会えるなら死んだじいちゃんに会いたい。

 会って生きている時は言えなかった感謝の言葉を言いたい。「じいちゃん、ありがとう。じいちゃんのおかけで俺は今まで1人でも生きてこれたんだ」って顔を見て言いたいな。

『残念ながらお前は天国には行けない。…がその願いは叶えてやれると思う。』

「本当ですか!じいちゃんに会わせてもらえるんですか。」

 俺は思わず龍神様に詰めよった。

『そんなに喜んでいるのに悪いが…今すぐは無理じゃ。ワシの力が弱まっているのでな…。』

「え…そうなんですね。」

 俺はあからさまにガッカリしてしまった。

『だが、お前が異世界に行って龍達の成長を助けてくれれば、早く願いを叶えられるかもしれん』

 それを聞いて俺は心を決めた。

「やります!俺何でもします!詳しく教えて下さい。お願いします。」

 俺、じいちゃんに会うために頑張ります!
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